第68話

「お風呂は片手間で、どうにでもなるから気が向いた時に作るとして。少し休憩したら、ここの周辺を少し探索してみない?」


お風呂は帰ったら沙希に作ってもらうとして、トラップ地帯で魔物を待ち構えるだけじゃなく、周辺だったら探索するのもありじゃない?と提案する。

周辺にBランクの魔物がいたら既に戦闘になってるだろうし。

万が一、遭遇してもここまで逃げてくる事ができる距離なら問題ないだろう。


「森で採集をすることも出来ますし。私は賛成です。戦闘では、あんまり役に立ちませんけど。森で採集できるものについての知識には自信が有りますよ。エルフですので」


エルフって、そう言うイメージあるよね。

今までは、戦闘に余裕がなくて、採集をする暇なんてなかったけど。

武器が新しくなったおかげで、戦闘にも結構余裕が出てきたし。

その特技を生かす事も出来るようになるだろう。


実際グラフェンの森で採集したキノコ美味しかったからね。


「ここから離れすぎないなら、私も賛成」


それは沙希の言う通りだな。奥に進みすぎると強い魔物と遭遇することになりかねないし。


しっかりと休憩をしてから森の中の探索を始めた。



「このドングリ。炒めるだけで、ほんのり甘くておやつに良いんですよ」


そう言いながら、アレーネがどんぐりを拾っていく。

どんぐりクッキーとか、よく聞くけど。

食べたこと無かったな。


俺と沙希は次々と襲いかかってくる魔物を倒しているから、採集を手伝うことは出来ないけど。


小腹がすいた時に軽く食べられる物って欲しいなって丁度思ってたから頑張って集めて欲しい。


お煎餅ばっかで、ちょっと飽きてきたし。


「人がいないから採集できるものが沢山あると思ったけど。思ったより少ない」


確かに、イメージ的にはもうちょっと採集できるような植物があると思っていたけど、そこまでだな。

なんならグラフェンの周辺の森の方が採集物が多かった気がする。


「そうですね。その代わり、ちょっと珍しい物も採集できましたけどね。ちょっと問題も発生しましたけど」


問題?


「何が問題なの?」


「このキノコ。ドラゴンマッシュルームって言う名前なんですけど。竜種が生息している周辺にしか生えないキノコなんですよ」


確かにそれは問題だな。つまりこの無人島竜種がいるってことでしょ?


(竜種は最低でもSランクの魔物です。そんな魔物がいるなら、すぐに気づける筈なんですが……ですが、証拠もありますし。この島に竜種がいるという事は間違いないかと)


そんなの今戦闘することになったら絶対やばいじゃん。

そう思った瞬間。空から凄まじいオーラを感じる。


思わず空を見上げると、赤色の西洋竜が島をグルグル飛び回っていた。


「お出かけ中だった訳だ……」


アレは今戦うことになったとしたら絶対に勝てないぞ……

空を飛ぶ竜に目を付けられないよう、自然と息を潜める。

俺たちだけじゃない。周りにいる魔物たちもだ。

それだけ圧倒的なオーラを竜が発している。


竜は俺たちがいる場所とは別の場所に数発火球ブレスを数発ぶち込んで、またどこかに飛んで行ってしまった。



と言っても、竜のオーラは感じるので、島のどこかにはいるみたいだ。


さて…どうしたものか……

また新しい場所を探さないといけない感じ?


「竜となると。余っ程大あばれしなきゃ態々襲って来ないとは思いますけど」


目をつけられたらおしまいだけど。


かと言って今すぐ島を出るには船がない。

竜がいるのに、来た時みたいに馬車を浮遊させて移動なんてしたら確実に竜との戦闘になるだろうし。

急いで脱出手段を用意しておく必要があるか。

ご近所さんが竜と言う中々にデンジャラスな警戒してると逆に目を付けられる可能性も有るからな。


出来るだけいつも通り生活を続けることにしよう。

逃げれるように準備は進めるけど。


「竜はいったん置いといて、ドラゴンマッシュルームって美味しいの?」


レアなのは確かなんだろうけど。美味しくない可能性もあるし。


「かなり美味しいみたいですよ。食べた事はないですけど。それに、一時的に魔力の最大量をアップしたりするみたいですよ」


一時的でも魔力量を増やしてくれるのは凄いな。

味も気になるけど、必要な時に食べるようにしなきゃいけないか……


「それにしても、魔物が一気に大人しくなったな」


竜の機嫌を損ねないように、魔物たちは気配を消して、大人しくなってしまった。


「今のうちにダンジョンの中に入っちゃうか」


魔物たちが竜にビビって大人しくなってるなら、ダンジョンまで安全に行けるだろうし。

ダンジョンの中まで竜が入ってくることはないだろう。


「テントを放置するのは勿体ないし。テントを回収して、ダンジョンに入っちゃうか。ダンジョンの中までは竜も入ってこないだろうし」


「ダンジョンに数ヶ月籠るって事?」


「テントが有れば何とかならないかな?」


確かにダンジョンっていう閉鎖空間の中に長い期間籠るのは精神的な問題が発生する可能性もあるか……


(ここのダンジョンは、平原が広がるフィールドダンジョンのようですから。まだマシだと思います)


それなら何とかなるかも。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る