第54話

「取り尽くさないように、気をつけたはずなんだけど。いっぱい取れたな」

この世界では食用品と認識されてないので、採集されないからか。ピンクウニ自体の繁殖力が高いのか。取り尽くさない程度に加減して集めたはずなのに大量のピンクウニを手に入れることが出来た。

辺りにピンクウニの食料になるであろう海藻も生えてないし。身が詰まっているか少し心配になってきた。

今回集めたピンクウニは全部冷凍してからマジックバッグに仕舞っちゃったけど。

身が少なかったら。生きたまま捕まえてキャベツを食べさせて少し育ててみたりしようかな。


ウニは美味しいけど。個人的にはウニはお腹いっぱいになるまで食べるものじゃないので、他の食べれるものを引き続き探す。

岩に張り付くアワビやサザエを岩から引き剥がそうと格闘していると、空が明るくなってくる。


今回の採集は明るくなるまでの暇つぶしなので、採集を切り上げて馬車に戻る。


沙希とアレーネは既に帰ってきていた。


「それじゃ早速島目指して海を渡りますか」


全員で、馬車に乗って車軸に付与した回転と車輪に付与した氷結を発動させる。

車軸が自動で回転することによって、馬車が自動で動き出した。

真っ直ぐ前進か後退しか出来ないけどね。


更に車輪に付与した氷結の効果で、車輪が接している地面が凍る。

海水を凍らせながらその上を走って移動しようという作戦だ。

正直もっといい方法が絶対に有るんだけど。

沙希の結界もあるし、この方法でも何とかなるだろうという割と穴だらけの作戦だ。


波とかあるし、車輪の下だけ凍らせて進むとか危険でしかない。


(そこまでわかってるのに、どうしてこの方法にしたんですか?)


一度やって見たかったから。

本当は自転車でやりたかったけど。自転車ないし。

なんなら馬車でも良いかなと。


ー1時間後ー



「なんで、お2人はそんなに冷静なんですか!?絶対転覆しますって!!」


最初の方は波も殆どなくて、俺が思っていた以上に上手くいっていたんだけど。

陸からある程度離れるとどんどん波が高くなっていき。

馬車がかなり揺れるようになってきた。


沙希のおかげで転覆こそ、まだしていないけど。時間の問題かな?


(マスター海中から魔物の反応です)


遊びもここまでだな。


「沙希。後はよろしく」


そう言って、馬車に付与した、もう1つ効果反発を発動させる。


その瞬間、馬車が勢いよく空中に浮かぶ。


本来は地面から30cmぐらい浮かばせる効果なんだけど。

俺がちょっと刻印を改造して、魔力の消費はバカ高いけど。地面から100mぐらい浮かぶようになっている。


魔力量なら亜神級と言われていて、今まで魔力を消費しても、魔力が減った気がしなかったのに、ゴリゴリ減っていると、しっかり認識できるレベルで魔力を消費してるので。

かなりの欠陥品だ。

それに、この改造した反発を発動させてる間は、それ以外のことが全く出来なくなってしまう。


そのせいで、折角浮かび上がっても、一人では横に移動するための魔法を使ったりとかが出来ないので、まじで欠陥品だ。

もっとダイレクトに浮遊の効果を付与できる刻印を作り出そうと頑張った時期もあったけど。結局出来なかったんだよね。

まぁ、浮遊は何百年も前から研究されてる内容だし。すぐに完成するとは思ってないけど。


(海中から現れた魔物はギガロドンでしたね)


メガロドンより、一回り大きいサメで良いのかな?

下を見る余裕がないので、確認することが出来ない。



「方向はこのまま真っ直ぐで良いの?」


そこんところどうなの?魔導知能。


(真っ直ぐで大丈夫です。ズレた場合はその都度、報告させていただきます)


馬車に乗っている3人全員に伝わるように念話使って、魔導知能がそう返事をする。


「分かった。それじゃ、アレーネしっかり何処かに捕まってて」


「えっ?」


アレーネが、何故そんな事を言われたのか理解するより先に、馬車が前に進み始める。


一気に時速100kmぐらいまで加速したので、もの凄いロケットスタートだ。

アレーネは……分体に取り込まれて保護されていた。

俺が浮かせて、沙希が魔法で馬車の後方から、吐き出すような感じで突風を吹かせて前に進む。当然、結界で馬車を保護してもらうことも忘れてはいけない。

かなり速度はでるけど。

乗り心地は最悪なんだよね……



「予定よりだいぶ早く、島につくことは出来たね」


あの後、さらに加速して移動したおかげで、数時間程で、目的の無人島に到着した。


慣れてないアレーネはかなりグロッキーになってるけど。


「で、まぁ。ここからが一番怖いところなんだけど……アレーネ覚悟はいい?」


「ここからが!?待ってください。もう目的地についたのにこれから!?」


魔導知能。分体でのアレーネの保護お願いね?


(承知致しました)


「じゃ、反発解除するよ」


「了解。こっちも準備はできてる」


この反発のいちばん酷いところは、徐々に高度を下げると言うことができない事だ。


反発を解除した瞬間。上空100mから馬車が自由落下を開始する。


地面まで後5mと言うところで、沙希が地面に向かって思いっきり風を吹かせる。


結果、馬車の落下速度が緩やかになって安全にとは行かないけど。

無事に着陸することが出来た。


改造していない反発を付与出来れば、使い分けることで、安全に着陸することも出来たかもしれないけど。

残念なことに、同じ物に両方付与するのは無理なんだよね。


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読んで頂きありがとうございます。



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