第51話
(誰かユメクイに手を出した連中がいるようですね。私たちを追ってきた連中か…もしくは、Aランクの魔物が付近にいると話を聞いて討伐に来た冒険者か。どちらにせよ、見つからない方が良いでしょう)
沙希の〈ミラージュ〉で姿を定期的に変えてるし、前者の可能性は低いと思うけど。
ゼロではない。
幻術系とかを見破ることに特化したスキルとかあるかもしれないし。
後者の確率の方が高いとは思うけど。
それだとそれで、態々夜中に戦闘を始めた意味が分からないんだよね。
明るい時間帯に戦うはずだよね。普通の冒険者なら。
(夜に強化されるスキルも存在しますので、態々、夜に戦闘を始めた事が怪しいかと言われると、絶対とは言えません)
そう言ったスキルも存在するのか。
「俺としては、久しぶりに同族を見つけたから話しかけようと思っただけなんだがな。ユメクイを勝ったのはついで」
沙希が躊躇無く声のした方に魔法を撃ち込む。
その間に俺は、魔法で光源をいくつも作り出して、辺りを照らす。
「マジで躊躇ないな。さっきも言っただろう。同族がいたから話しかけに来ただけだ」
当然の様に話しかけてきた男は無傷だ。
まぁ、ユメクイを瞬殺してここまで来たと考えると。あの程度でダメージを受ける訳が無いか。
それにしても、あれはヒューマンスライムで良いんだよな?
(恐らく、アビス・ヒューマンスライムですね。闇属性系の最終進化がアビス・ヒューマンスライムです。弱いわけ無いので、これ以上敵対せずに穏便に話を済ませてください)
思ったよりヤバそうな人来ちゃったな。
さてとどうしようか……本当にただ話に来ただけだとしても。
警戒はさせてもらおうかな。
神代ルーン魔法を使って聖なる光を放つ、光源を作り出す。
神代ルーン魔法と言っても、俺では結局、1文字しか使えないので。
威力は神代ルーン魔法にしては可愛いものだけど。
だからこそ、体が半分と程々の生命力を消費する程度で済んでるんだけどね。
(あれでそこそこ?とんでもなく格上のはずの相手が今にも死にそうなレベルでもがき苦しんでるんですが……)
闇属性系なら神聖属性が効くかなって思ったけど。想像以上に効いてるね。
相手が必要以上にこっちに近づいてくるのを防げればいいかなって思ってたんだけど。
(あっさり言いましたけど。この世界で、神聖属性と言うのは神のみが、使うことができる属性ですよ?)
神が作り出した文字を使ってるからね。
現代ルーン魔法では神聖属性を使うことはできないよ。
「だから言ったじゃん笑。シャドウは怪しいんだから。そうやって突然現れるの止めなって毎回言ってるのに。えーっと。敵じゃないのはホントだからさ。取り敢えず。その光を消してくれるかな?シャドウが驚かせたお詫びに、ユメクイからドロップしたカード2枚あげるから」
(新しく現れたのは、テンペスト・ヒューマンスライムです。風属性ヒューマンスライムの最終進化です)
大人しく聖光を放つ光源を消す。
「マジで、死ぬかと思った……まだ、一回も進化していないヒューマンスライムなんだよな?一体何もんなんだよ……」
「ティリス教から、聖人認定されてたり。まぁ、普通のヒューマンスライムでは無いです」
「63年振りに聖人に認定された人物が現れたと、かなり話題になっているが、まさかヒューマンスライムだったとはな……」
「うーん。これは完全にいらないお節介だったね」
お節介?
「私たち、同族たちの保護や強くなる手助けをしてるのよ。自分で言うのもなんだけど、私たち強いから。信託により、6大教全てが動いたことにより。ヒューマンスライム狩りが少なくなった事は確かだけど。ゼロになってないからね」
成程ね。俺も保護対象ってことか。
因みに6大教って何?
火、水、風、地、闇、光。6大神を崇める教会をまとめて表すときに使われる呼び方ですね。
「成程。お二人の活動に賛同はしますけど。自分が助けが必要かと言われるとNOと答えますね」
「だよね。だからお節介って言ったの。まぁ、迷惑かけたお詫びにユメクイからドロップしたカードは全部上げるから、1つお願いをしてもいいかな?」
「お願いの程度によります」
「保護や助けが必要なヒューマンスライムがいたら手を差し伸べてあげて欲しいんだ」
「そのぐらいだったら。と言っても、お2人が初めて遭遇したヒューマンスライムですし。この先、同族と遭遇することがあるか分かりませんけど」
「まぁ、珍しいからね私たちの種族。もし会うことがあったらでいいから」
「分かりました。引き受けましょう」
「助かるよ〜。じゃあこれ、依頼料代わりね。後、私の名前はエアリエル。で、こっちがシャドウ。よろしくね」
「俺は勝吾。で、身長低いのが沙希。エルフがアレーネって言います」
「自己紹介有難う。それじゃ、勝吾君たちまたね〜」
突然強風が吹き荒れて、目を瞑ってしまう。
風が納まって前を見るとエアリエルとシャドウはいなくなっていた。
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