第49話

「で、どうする?明日、直ぐに出発することも可能なんでしょ?」


沙希とアレーネが帰ってきて一通りお説教をされた後。

これからどうするかの話を始める。

馬車の用意自体は終わってるから、明日すぐに出発することも出来る。


だけど、オークみたいな貴族がどうなるのか確認してから出発するって案も悪くは無い。


確認してどうなるの?って気もするけど。


「私は勝吾の体調が問題ないなら、早めに移動を始めた方がいいと思う。ティリス教がオーク顔の家の不正の調査をすることで、複数の貴族家がお取り潰しになったり色々荒れることになると思う。そうなると。その原因になった勝吾は逆恨みされる可能性が高い。だから、未発見で危険度の低いダンジョンに一旦籠って、ほとぼりが覚めるのを待った方がいい。魔物を倒して力をつけることもできるし」


確かにね。目的地が最初の頃から2転3転してしまっているけど。

今は、人に知られてない場所で大人しく力をつけることに集中した方がいいか。


「確実に報復があると思うので、私も賛成です」


(ここから西に向かうと、海が有るのですが。沖に浮かぶ島に未発見の下級ダンジョンがある様です。海を渡る手段が有れば、そこに向かうのが1番安全かと)


「数十kmぐらいだったら問題ないかな。あんまり離れてるようだと危険な方法だけど。何なら今から出発する?」


こう言うのは出来るだけ早い方が良いだろう。と言うか。早く出発しないと、また目的地が変わる気がする。


「夜で真っ暗だけど。明かりは魔法で、どうとでもなるし」


馬車があるから寝ながら移動もできるしね。

魔導知能がいるからこそだけど。


「それじゃ、今すぐ出発。門はもう閉まっているから、馬車を異空間収納に仕舞って、土の壁を飛び越えて、コッソリ村を出る」


「私、壁を飛び越えられる気がしないんですけど……内側からなら門番にお金を払えば夜でも開けてくれると思いますよ?」


「それだと、私たちが村から出たことが、すぐに伝わってしまうから却下。勝吾におんぶしてもらえば良い」


流石に宿の人に伝えずに出て行くのは、迷惑をかけることになるので、軽く挨拶しておく。


そうして慌ただしく、グラフェンを後にした。



「これ、普通の馬車ですよね?振動が来ないんですけど?馬車が揺れてないって訳じゃないのに……」


そうなんだよね。衝撃吸収じゃ、揺れまで完全に無くすことは出来ないんだよね。


そこら辺の改良はしっかりした馬車を手に入れてからって思ってたけど。

何か考えておくか。刻印術以外にもいい方法も有りそうだし。


「まぁ、海までは、港町に続く道が整備されてるって言うし。これだけでも充分楽になると思うけど」


沙希のミラージュを使って馬の姿をした分体を含め全員の姿を変えているので、堂々と整備された道を使っても、俺らだとバレることもない。


魔力をかなり使うみたいだけど。

単一電池のような形をした魔力バッテリーに俺が魔力を補充しておけば、何時でも魔力を回復させることができるので、問題にならない。


「それにしてもケレンは大丈夫かな?」


俺に逆恨みしている連中が、俺の足取りが掴めないとなると、俺の知り合いに危害を加える可能性がある。


「それに関しては問題ない。グラフェンはカラスに監視させてるから。彼らの本分は情報収集だけど。戦えない訳じゃない。もし、襲われたとしても問題なく処理してくれる 」


「カラス…ですか?」


「オーディンからのプレゼント?勝吾を起こしたのはロキじゃなかったの?」


「ロキだったんだけど。これを渡してっておつかい頼まれてたんだった。テヘッって言って渡してきた」


「カラスと言っても、神と関係の深いカラスだから心配ないよ。何なら今の俺たちより安全かも」


「取り敢えず。ケレンが危険な目にあうことは無いということは、わかりました」


そのぐらいの認識で充分だよ。


(マスター。ナイトウルフです)


魔導知能が魔物の接近を知らせてくれる。


ナイトウルフは夜に活発に活動する。全身黒い毛に覆われたオオカミ型の魔物。

因みにランクはD

単体ではなく、群れで行動する魔物だ。

Dランクってだけでも、今の俺だと瞬殺はできないのに、群れてるとか。油断はできない。

負けるとは思わないけど。スバしっこそうだし、戦い方を間違えると時間がかかりそうだ。

時間をかけたくないので、麻痺の効果を付与した小石をナイトウルフの群れに向かってばらまく。

1個じゃ範囲外に逃げらると思ったので、持ったぶらず大盤振る舞いだ。

あんまり派手な攻撃を使うと怪しまれちゃうからね。

麻痺している間に何とかナイトウルフを倒し切る。

やっぱり、沙希の現代ルーン魔法以外は、まだまだ火力不足だな。

現時点では、沙希以外が足止めや牽制をして、沙希がトドメをさすってのが、いちばん安定しそうだな。


レベルアップに必要な経験値は、魔物を倒した人にしか入らないから。ずっとその戦法で戦う訳にはいかないけど。


ナイトウルフのドロップ品をまとめて回収して、直ぐにその場から離脱する。

俺たちが村からいなくなった、とバレる前に出来るだけ離れておきたいからね。



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読んで頂きありがとうございます。

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