第46話

「ほぅ中々いい女を連れてるじゃないか。

その女とスライムを献上するなら。特別に死罪だけは許してやるぞ?」


はぁ?何言ってんだ?あのオーク。

今、そんなこと言ったら。

さっき俺が言ったスライムを盗もうとしたって言葉の信ぴょう性が増すだけだぞ?


それ以前に……


「沙希に手を出そうとする輩を許すわけないよな?」


それこそ、神にだって噛み付いた男だぞ?

貴族程度で、俺がビビるとでも?


「魔導知能、いい機会だ。ルーン文字について少し教えてあげよう」


本当は、声に出す必要はないんだけど。

それだと、何黙ってるのこの男?って周りに思われそうだし。声に出して説明しよう。


「俺と沙希が普段使っているルーン文字は正確には現代ルーン文字と言うものでね。神々が地上から消えた後、人々の手によって作り出されたルーン文字だ。そして神々が地上にいた頃に使われていたルーン文字のことを神代ルーン文字と言う。この神代ルーン文字ってのは、人が作ったのではなく神々が作り人に広めたもの。でもって、神々が地上から消えた時に消失してしまった」



ここまでは大丈夫?


(正直、オークたちを拘束するために生えてきた、最早、木の幹ですか?ってレベルのぶっとい蔦と突然マスターの半身がはじけ飛んで。そんな場合じゃないと言いたいところなんですが……)


ネタバレすると、俺の半身が爆散したのは、神代ルーン文字でルーン魔法を使った反動だから。気にしないで、それに爆散した半身も再生してるし。

体がスライムゼリーで、できてるって便利だね本当。

神代ルーン文字を使うデメリットを無効化してくれたし。


「で、神代ルーン文字ってのはホントに強力な文字なんだよ。もう、現代ルーン文字が可哀想になるぐらい。だからこそ、自分たちがいない地上で、この文字が使えるのは危険って言って、神々が神代ルーン文字を失伝させたんだけど」


まぁ、人を生き返らせたり、できちゃったみたいだし。

神々の判断は間違ってなかったと思う。

と言ってもそこまでの効果を発揮するには神々が神力を使って神代ルーン文字を使いルーン魔法を使った時のみらしいから。

人間には、そこまでのことはできなかったらしいけど。


(では、何故。マスターが神代ルーン文字を使うことができるのですか?)


「沙希を戦士としてヴァルハラに向い入れようとする神様がいてね。俺からしたら当然、そんなこと許せるわけが無い。結局、その神と殺し合いになってね。その時に俺の事を味方してくれた神様に教えてもらった」


『彼奴の敵になるのが、僕の仕事だからね。

それに愛する人の為に神に戦いを挑むだなんて。正に物語の主人公!

久しぶりに退屈しない日々を送れそうだ!』


てな感じで。

で、その神様の力を借りて、沙希を攫おうとする神とガチンコバトルして、最終的にはその神にも認められて。

神代ルーン文字について更に教えて貰えたし。

沙希が生きてる間はヴァルハラに連れていかないって約束してくれたし。

流石に死後まで、俺が文句言うことは出来ないし。

それに関しては当人同士で話し合ってくださいって事になった。


(取りえず。マスターが想像以上にヤバいやつだったってのはわかりました。で、この場はどうするんです?)


神代ルーン文字の実験かな?

地球にいる時は、普通の現代人である俺が神代ルーン文字を使って、ルーン魔法を使うと死んじゃうから。結局、使えなかったし。


刻印術なら、そう言う反動はなかったんだけど。神代ルーン文字の力に耐えられる素材が地球上には存在しなくて、神代ルーン文字を使って刻印術を使うことも出来なかった。


ロキが用意してくれた、フェンリルの毛を糸に加工して作った服と、神鉄とか言う神が創り出した金属で作られた剣と盾だけだったな。


あれは、戦闘が終わった後。さすがにこれが地上に存在するのは不味いからって没収されちゃったんだよね。


結局、神代ルーン文字について知識があったとしても。使うことは出来ないって言う残念な感じにだた訳だけど。


こっちなら使い放題!もしかしたら、神代ルーン文字の力に耐えられる素材も見つかるかも知れないし。


「今回はこの程度で矛を収めていただけないでしょうか?もちろん今回の件はしっかり断罪するので」


「フレンさん……では無いですね。フレンさんの体を借りてティリス様が喋っている感じですか」


声がした方を見ると、ティリス教の人間であるフレンさんが立っていた。

しかも自分の体を依代にして、神降ろしをした状態で。


「ティリス様がそう仰るなら。その通りに」


神と敵対していい事なんて、ひとつも無いし。


「有難うございます。聖騎士達よ。拘束されてるものたちを連行しなさい」


ティリス様の命令で全身、真っ白でティリス教のマークが胸の辺りにデカデカと刻まれている全身鎧を装備した騎士たちが、オークたちを拘束する為に動き出した。


あのままだと、連行できないと思うので、拘束するために生やした蔦を魔法を解除して消滅させる。

もし、あの蔦を素材として使えたら凄そうなんだけど。

解除しなくても6時間で自動的に消滅しちゃうからな。

非常に残念なことに素材として使うことは出来ない。


取り敢えず。これ以上酷いことになることはないかな 。

神が介入してくる以上にやばい事なんて起きないだろうし。



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読んで頂きありがとうございます。

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