第38話

「勝吾考え事に集中するのは良いけど、ダンジョンボスも倒し終わっちゃったよ?」


沙希に言われて辺りをキョロキョロしてみると、なんか全く知らない場所にいた。

このダンジョンの大部屋は今まで全部正方形だったのに、今いる部屋は円形だ。


つまり、拳銃が再現できないか魔導知能と考えている間に、10階層に到着。沙希がダンジョンマスターを討伐したと?

いやまぁ、そう説明されたんだからそうなんだろう。

と言うかよく見たら楕円形状の分体の上に乗せられてるし。

俺が動き出すまで待つのも面倒だったら強制的に移動させられてた感じだったようだ。


「大変ご迷惑をお掛けしました」


「素直で結構。ダンジョンから脱出するから自分で歩いて」


今は一秒でも早く宿に帰って、魔導知能と拳銃を作りたい気持ちでいっぱいなので歩きどころか駆け足で、部屋の中央に存在する魔法陣の上にのった。


「いきなりどうしたんですか?勝吾さん」


「こうなるだろうなって思ってたけど。

作りたい物が出来るとほんとに周りが見えなくなるんだから。アレーネ、ああなったら物作りが終わるまで、止まらないから放置しておこう」


沙希が呆れたような声でなんか言ってる気がするけど。

気のせいだ気のせい。



「良し。魔力物質化の刻印が書き終わった」


初級ダンジョンでドロップしたフレイムボアの革に魔力物質化の刻印を書き込んで、お手軽弾丸工場の完成。

と言うか。土とスライムゼリーを混ぜたなんちゃって乾燥煉瓦とか木の枝を削って串を作ったりとか、魔力物質化を使えば、全部必要なかったよね?


0,01mmレベルのズレも許されないような、弾丸の形に魔力を物質化させるみたいな感じじゃなければ、見本なしで魔力を物質化させることもできるし。


あの時は魔力物質化のこと、全然思い出せなかったな。


取り敢えず、正常に動作するか実験として、コップの形で魔力を物質化させてみよう。


300mlぐらい入るガラスのコップをイメージしながら。魔力物質化の効果を付与したフレイムボアの革に魔力を流し込む。


魔力を流し込み続けて一分ぐらいで、半透明な紫色をしたコップが完成した。


「沙希。お茶頂戴」


沙希とアレーネが二人でお煎餅食べながらお茶を飲んでいるのが見えたので、コップが水漏れしないか試すためにお茶を注いでもらう。


水漏れはしないけど。取っ手もないし厚みもないコップなのに熱いお茶を入れてもらったのは失敗だった。手が熱い。


沙希からのそろそろ一旦休憩しろって忠告でもあるので、大人しく作業を中断する。


魔力を大量に流し込んでおいて、魔力が無くなるまで、自動で緑鉄で作られた見本の弾丸

と全く同じ形で魔力を物質化させ続けるようにしたから、俺がやらなきゃ行けない作業も終わったし。


後は魔導知能が本体を完成させるのを待つだけだ。


魔導知能は自身の演算能力をフル活用して、どのサイズが最適か何度もシュミレーションしているみたいだからな。


魔導知能がいなかったら、どんなに頑張っても火縄銃みたいな前装式の銃しか作れなかっただろう。

前装式の銃がダメだとは言わないけど、装填に時間がかかるから。メイン武器としては使いにくかっただろう。


「拳銃を作るなんて、一気に現代化させすぎじゃない?流通したら国同士の戦争を煽りかねない」


お煎餅を貰うために沙希達の方に行くと沙希にそう言われる。


「刻印術ありきで使用出来る構造になる予定だし。構造を他人に教えるつもりは無いし。見た目は小さい弾が飛んでいくだけだからあんなの使うなら魔法使いを雇った方が良いってこっちの人達は考えそうじゃない?」


魔法の方が派手だしね。派手な方が攻撃力がありそうって判断する人もいるだろうし。


「まぁ、もし広まるような事が有れば責任を持って潰すことにするよ」


銃の恐ろしいところは素人でも引き金を引くだけで人を殺せてしまうことだ。


と言っても、この世界にはHPって言うゼロになるまでダメージを肩代わりしてくれるシステムがあるし、拳銃撃ってるだけで人が殺せるか微妙なところでは有るけど。


ある程度レベルを上げてる人には無意味だろうな。今の拳銃だと。

マシンガンとかミニガンを再現して弾丸の雨を降らせれば、分からないけど。


まぁ、俺が使う場合は爆発する弾丸とか、放電する弾丸とか、敵を氷結させる弾丸とか、敵を麻痺させる弾丸とか。

特殊な弾丸を弾丸に刻印術を使うことで、作って使うから。

ある程度の火力は確保出来ると思う。


「まぁ、勝吾以外にも銃火器を作ろうとするクラスメイトがいるかもしれないし。自分の戦力アップの方が先決か……」


「そんなに危ないもの作ってるんですか?」


アレーネからしたらどうな武器なのか想像出来ないので、そういう反応になるのも当然だな。


「どうだろうね?案外大したことないかも知れないし。凄い武器になるかもしれない」


結局。この世界で、どれだけ通用するのか。

使ってみないと分からないからな。


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読んでいただきありがとうございます。

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