第18話

「お待たせしました。肉のカードが2枚もドロップしましたよ!」


カードを2枚、見せながら馬車に戻る。


「大丈夫だったんでしたか!?正直、マーダーグリズリーがこっちに来る前に1人で逃げちゃおうかと…」


正直だな。まぁ、そう考えちゃうのもしょうがない気がする。


「まぁ、あれぐらいだったら問題ないですよ。じゃあ、グラフェンまでお願いしますよ」


魔物が現れたら魔導知能が教えてくれるだろうし。御者席に座って、昼寝を始めた。


(マスター起きてください。今日はここで野宿する事になるようですよ)


魔導知能の念話で目を覚ます。

今日、野宿する場所は近くに川が流れていて、木が少なく開けた場所だ。


「移動中いくら話しかけても起きなかったのに、野宿する場所に着いた途端起きるなんて。実は話を無視してただけで、起きてました?」


「馬車が止まったから起きただけですよ。取り敢えず。火起こしは俺がやっておくので、アレーネさんは少し休んでいてください。馬車の操縦で疲れたでしょう?」


荷物が一切積まれてないからって馬車をかなり飛ばしてたし。


「そうですか?それじゃ、私は川に魚を捕まえに行ってきますね」


そう言って川の方に走っていった。

まぁ、最低限戦う手段は持っているようだし。放置でいいか。


(エルフは精霊と契約して、戦ってもらうことが出来ますからね)


ヒューマンスライムが分体を作り出せるみたいに。スキル関係なしの種族特性ってやつか。


縄を切ったのも、精霊にお願いしたのか。


それにしても、精霊と契約できるか。

羨ましいな。


(お前が言うなって言われると思いますよ)


正直、分体の操作をしてくれる魔導知能、スライムゼリーをインクとして使える刻印術。

この二つがあるから、種族特性が強く思えるけど。

両方使えなかったら、正直どうなの?この種族特性ってなってそうだけど。


(分からなくもないですけどね)


魔導知能と刻印術があるから、ヒューマンスライムで良かったと思ってるけど。

もう三回目だし、火起こしもかなりスムーズになった。

フェザーステックも想像以上に火がつきやすくなるし。


ひと手間入れるだけで、あんなに変わるんだね。


追加の薪集めとか、刻印術の土台用の小石集めは、魔導知能に分体を操作させればいいんだろうけど。


アレーネさんに分体を見られると厄介だし。


後、やること無くて暇。


(どうやら、そんなこと言っている場合ではなさそうです。マスターの指示で、元盗賊のアジトの崩落した洞窟後から一人男が這い出て来ました。ダメージを負っているようですけど。HPはある程度回復してしまっているでしょうし。馬の足跡と馬車の轍で私たちがどこにいるのかバレバレです)


生きてるやつがいたか…

もしかしたらとは思ってたけど。

怪我は治ってないだろうし。HPも全快してはないだろう。


殺るなら今のうちか。

と言っても身体強化して走ってどれぐらいで接敵できる?


(マスター落ち着いてください。私が分体を操作して、数の暴力で倒せば良いだけです。マスターはここでのんびりしていてください)


そっか。あの爆発と洞窟の崩落から生き残った相手と戦わないといけないと思ってちょっと焦ってた。


と言うかスキルがあってレベルも存在する世界だと、数じゃなくて個が勝利することもあるよね?

今回大丈夫?


(今回の敵は数で押せば普通に倒せる強さですので、安心してください)


と言うか、俺が何もしなくていいなら、なんでそんな焦った感じだったの?


(マスターに分体を作ってもらわないと何もできませんから)


それもそうか。野宿予定の場所から少し離れて分体をどんどん作り出していく。

折角なら、ちゃんと制御できる限界数を把握しておきたいと言うので、100を超えても分体を作り出し続ける。


それにしても、全然魔力が減ってる気がしない。


亜神級の魔力量は伊達じゃないってことだね。


(精密に操作するなら同時に150が限界ですね。大雑把でもいいなら300ぐらいは行けそうです)


因みにこれは人型の同時に操作できる数で、形によって多少変わるらしい。


じゃあ、後は魔導知能任せた。


(お任せ下さい。ついでにアジトを漁ってきますよ。無事なものが有れば持って帰ってきます)


ボスを倒すならそれもありだよね。

でも、崩落した洞窟跡地の探索なんて大変じゃない?


(スライムなんですから、狭いスキマも余裕で入れますよ)


そっか、スライムなんだから液体状になって狭い隙間を進むこともできるか。


(後々、調査が入ってもバレないようにだけ注意します)


確かにね。崩落させたとはいえ、賞金がかかってる盗賊のアジトとなると、調査が入るだろう。

その時にバレないように注意するって事だね。

バレたとしても、盗賊を倒したのは俺たちなんだし、文句は言われないだろうけど。

そこから、ヒューマンスライムってバレる事も有るだろうし。バレないに越したことは無い。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る