第17話


「冒険者じゃなくても、鍛える事は出来るでしょ?」


「それもそうですね」


(マスター。前方からゴブリンです)


話の途中だけど。中断して、ゴブリンを倒す為に御者席から降りてゴブリンの方に走って行く。


ゴブリンなら何体いても問題ないと思っていたが。

一体だけ、ローブのようなものを羽織って、木の杖を持ったゴブリンがいる。


ただのコスプレじゃないよな?

となると、魔法を使うゴブリンか。


油断するのは危ないだろうな。

距離を詰めるのを止め様子を伺うと。杖の先端が光って、ピンポン玉サイズの火球が飛んできた。


そんなに速度も無いし。飛んできてると分かって入れば、避けるのは簡単だな。

と言っても、今回は避けると後ろの馬車に当たってしまう。なので避けないで、どうにかする必要がある。


取り敢えず。ゴブリンの棍棒でガードするか。

ゴブリンの棍棒に火球が当たるとゴブリンの棍棒が勢い良く燃え始める。


このまま捨てるのも勿体ないので、ゴブリンに投げつけてやる。


時間をかけるのは良くなさそうだし。もう、倒しちゃうか。


耐久的には普通のゴブリンと変わらなかったので直ぐに方がついた。


「ゴブリンマジシャンの両手木杖か。これを持って魔法を使ったら威力上がったりするのかな?」


と言っても効果が有るのは、この世界の魔法だけだろうし。

所詮はゴブリンの装備、威力が上がったとしても、ホントに気持ち程度の上昇だろう。


カードの状態のまま巾着袋にしまった。


そう言えば、今日の晩御飯は昨日まで以上に用意しなきゃダメだよね?


一人増えちゃった訳だし。

魔導知能、肉をドロップする魔物を探してこっちに連れてきてくれ。麻痺に耐性を持っていないなら少しランクが高い魔物でもいいから。


(承知致しました)


麻痺が効くなら、格上でも倒せるだろうし。

と言っても、耐性持ってなくても麻痺が効いている時間が短くなりそうだし、油断は禁物だろうけど。


取り敢えず、馬車に戻ろう。


「勝吾さんホントに強いですね」


「ゴブリン倒した程度で、強いって言われても困ります」


武器さえ持っていれば、一般人でも倒せる魔物だし。


「確かに、それもそうですね。でも、動きも早かったですし。ゴブリンを全部一撃でしたし」


雇った新人冒険者達はゴブリンを数回攻撃しないと倒せてなかったらしい。


まぁ、魔力消費を気にせず身体強化をしてれば、中級冒険者よりちょっと上ぐらいの身体能力まで強化できるみたいだしね。


魔鹿を倒した時に中級冒険者複数人で倒すのが普通みたいなことを魔導知能が言ってたから間違いないだろう。


「まぁ、婚約者に負けないように鍛えてますからね」


「へ〜勝吾さんって婚約者の方がいるんですね…」


「訳あって今は別行動中なんだけどね。凄腕の魔法使いだよ。だから、前衛として一緒に戦えるように鍛えてるんです」


それっぽい言い訳できたかな?


(態々、婚約者の話をする必要ありました?)


だって、アレーネさん俺の事、狙ってる感じが凄いするんだもん。

早いうちに俺は婚約者がいますよってアピールしておいた方が良いなと思って。


「そうなんですね〜。…はぁ、宛が外れたな〜」


「なんか言いました?」


バッチリ聞こえてたけど、聞こえてなかったフリをしておく。


「なんでもないですよ?」


ちょっと気まずい感じになっちゃったな。

と言っても、早めに言っておかなかったせいで、本気にさせちゃったら、それはそれで問題だし。


(マスター。今、マーダーグリズリーと言う魔物をそっちに連れて行ってるので、早く戦う準備をしてください)


人食いクマ?それかなり強そうじゃない?

アレーネさんに俺がヒューマンスライムってバレずに倒せる相手なの?


(物騒な名前をしていますが。ランクDの魔物です。魔鹿より弱いので、問題なく倒せます)


物騒な名前をしてるのに魔鹿より弱いのか。



「アレーネさん。マーダーグリズリーが近づいてきてます。迎撃するんで馬車を止めてください」


「マママ、マーダーグリズリー!ランクDの魔物じゃないですか!なんでそんなに冷静なんですか!?」


「それはまぁ、勝てない相手じゃないし。じゃ、行ってきますね」


御者席から降りて、マーダーグリズリーが来るという方向に向かって走り出す。


「迫力は魔鹿の何倍も有るけど…ホントに魔鹿より弱いの?」


四足歩行で、小鳥の姿の分体を追いかけていたマーダーグリズリーがこちらに気づいて立ち上がり、前足を上げて威嚇してくる。


迫力的には、どう考えても魔鹿より上だ。

と言っても今から逃げるなんて出来ないし。

魔導知能が嘘つく必要が無いし。

初手から麻痺の効果を付与した石を投げる。


避けたり、迎撃する必要なんて無いだろうと判断したマーダーグリズリーは石がぶつかった瞬間。麻痺して地面に倒れる。


後は煮るなり焼くなり、こっちの自由だな。


それにしても、なんと言うか一方的過ぎてどうなんだろうね?


ドロップは毛皮、肉×2だった。

肉が多く手に入ったのは良かったな。


(麻痺で完封できるのはランクDが精々です。全ての戦闘をこんな楽に終わらせることは出来ませんよ)


まぁ、取り敢えず。アレーネさんのところに帰るか。

あんまり待たせると、心配だろうし。


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読んで頂きありがとうございます。





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