第16話

「それにしても、良くここまで来れましたね。この盗賊のボスは元貴族の私兵だって言われてて、結構強いのに」


うん、ソイツと遭遇したらかなり面倒そうだ。確実に分体を使って戦う必要があるだろうし。見つかる前に早くここから離脱しよう。


せっかく拘束しといたけど、そのボスに見つかったら面倒だし。連れていくのも大変なので、倒した盗賊にトドメをさす。


「いやーここまで来れたのは運が良かったみたいです。ていう訳で、バレる前に急いで逃げますよ」


「盗賊に捕まったと証明する為にも、頭だけでも、持っていくべきです」


生首持ち歩くとか嫌なので、首を切り落として、捕まっていた人に持たせる。


刻印術を使って効果を付与した石を放って行きながら出口を目指す。


「ふぅ、何とかバレなかった…」


「私が運んでいた。度数の高い酒を呑みまくってましたからね。泥酔中なんじゃないですか?そのおかげで、私が酷い目に遭わなくて済んだんですけど」


なるほど、だからエルフの女性なのに、そう言う被害に合わなくて済んだわけだ。


「気づかれて追ってこられると面倒だし。

最後に仕上げっと」


そう言って爆発の効果を付与した石を洞窟に投げ入れて爆発させる。


すると、昨日の実験の比じゃない大爆発が起きて洞窟が崩落して埋まっていく。


(洞窟から逃げる時に捨てるように放っていた、石に付与された効果に秘密が?)


まぁね。完全な外だと使いにくいんだけど。水素を発生させる効果の刻印をした石を使って、洞窟内に水素を充満させて、爆発の威力をアップさせたの。


(確かに完全に外だと、水素も気体なので、ここまでの威力アップは期待できないですけど。洞窟や室内みたいな場所ならこうなると…)


そういうわけだね。もしかしたら、盗賊の中で生きているやつがいるかもしれないから。

早く離脱しようか。


「で、馬車は大丈夫そうですか?」


「中は空っぽですけど。馬車と馬は無事でした。それで…」


「行き先がグラフェンなら、護衛としてついて行ってあげる」


「ならグラフェンにします。強い魔物は出ないし、街道を行くなら新米冒険者でも良いかと護衛代ケチった結果がこれなので…」


その冒険者がどうなったかなんて聞く必要ないか…


冒険者達は運がなかった。エルフの商人は運が良かったって訳か。


(そうとも言えないですよ。今回この方は商品が全部だめになって大赤字。見た目が綺麗なエルフの女性ですし。死んでた方が良かったって言う結末になる可能性も充分有り得ます)


それはなんか可哀想だな。と言うかせっかく助けた相手が、バットエンドってのは目覚めが悪い。


と言っても俺もお金もってないけどね。


「それじゃ、グラフェンまでは護衛しますよ。護衛なんてしたことないんですけど。馬車に並行して歩けば良いんですか?」


馬車に乗せてもらう方が楽だけど。護衛としては馬車に乗っていたら、襲われた時に戦闘を始めるのにワンテンポ遅れてしまう。


「イヤイヤ。命の恩人にそこまでしっかり護衛しろなんて言えないですよ。御者席に座ってもらえれば、襲われても直ぐに対応出来ますし」


それじゃ、そうさせて貰います。


馬に馬車を繋ぎ、御者席に座るエルフさんの隣に座らせてもらう。


「それじゃ、出発しますね」


エルフさんが手網を引くと馬が歩き出す。


魔導知能索敵よろしく。


(承知致しました。恐らく、馬狙いでゴブリンが何体も襲ってくると思うので、そのつもりでお願いします)


人も二人しかいないし。ゴブリンからしてもカモに見えるわけだ。


戦う度に馬車から降りるの面倒臭いな。

遠距離攻撃手段が少ないのが、やっぱり俺の弱点だな。


無いわけじゃないけど、残弾数あるし。

刻印術に使うインクも土台も、もっと品質の高いものがあれば、残弾数を気にしなくてもいい遠距離武器を作れるんだけど。


それが作れるようになるのは、もう少し後になるだろう。

取り敢えず。今は、いっぱい用意しておくしかないか。


「滅茶苦茶おしり痛い」


整備されてない、森の中を走っているっていうのも有るだろうけど。


すっごいガタガタしてケツが痛い。

馬車に衝撃吸収の効果を付与したい。

エルフさんに説明しなきゃ行けないから我慢してるけど。


「街道に出れば、少しはマシになるんでもう少し我慢してください。そういえば自己紹介がまだでしたね。私はアレーネって言いいます。行商人をしてて、いつか自分のお店を持つことが夢です。…今回でお店どころか行商人を続けられるかも怪しいですけど…」


「自分は勝吾。冒険者になろうと思って、グラフェンに向かって歩いているところでした。少しでもお金になれば良いなと思って森に入って魔物を倒しながら進んでたら盗賊のアジトを見つけて侵入したらアレーネさんが捕まっていた感じです」


「冒険者じゃ無かったんですか!?てっきりアイアンランクぐらいの冒険者なのかと…」


アイアンランク?ランクって言ってるし。

冒険者のランクのことか。


この世界はローマ数字じゃなくて、鉱石とかでランクをつける感じなのか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る