第13話

「情報を吐かせても知らぬ存ぜぬで逃げられるはずだ。どうせ、仲介人を何度も挟んで黒幕まで辿り着けないだろう。ここで処分してくれ」


それもそうか。

じゃあ、俺が殺るか。この世界で人を殺すのは初めてだし、経験しとくべきだろう。


(分かりました。でも、この世界でって事は殺したこと自体は有るんでしょう?今更必要ですか?)


まぁ、この魔力量のせいで地球にいる時に何度も命を狙われたから殺した経験自体は有るよ。但し、遠距離攻撃でだから殺したって実感が薄い。

今回は近接武器で殺ろうかなと。

戦闘スタイル的にこれから近接武器で殺す事が増えるだろうし。


気絶している人の首に魔鹿角ナイフを突き立ててトドメを刺していく。


特に気持ち悪くなったりはしないか。


戦利品として装備してるものは根こそぎ貰って行こう。

追求は出来ないとしても、証拠として欲しがるかな?

絶対に欲しいって訳じゃないし、欲しがったら普通に渡せば良いか。


(剣は確実に手に入れた方がいいと思います)


その心は?


(あの賊モドキが使っている武器は鉄をメッキして隠蔽していますが、ミスリルロングソードです。ヒューマンスライムは進化先が沢山有るのですが、ミスリルを大量に吸収する事でミスリルヒューマンスライムに進化する事が出来ます。ミスリルヒューマンスライムのスライムゼリーはミスリルの性質、耐久性を引き継いでいて、実質液体ミスリルです)


液体ミスリルを作り放題…それは凄いな。

武器は確実に手に入れよう。


と言うか、ミスリルヒューマンスライムに進化すれば、いつもミスリルのフルプレートメイルを着ているような状態になるって事?


(ヒューマンスライムの体はスライムゼリーで出来ていますから、そういう事になります。人と変わらない肌の色をしている時もヒューマンスライムの特性で擬態しているだけで、半透明の水色の状態の時にだけ、体の構成物質がスライムゼリーに変わっている訳では無いので)


強くなるのにレベル上げるのと、どっちが楽か分からないけど。

ミスリルヒューマンスライムは目指した方が良さそうだ。ミスリルを手に入れられる機会が有れば積極的に手に入れるようにしよう。


「すいません。戦利品として追い剥ぎしちゃいましたけど。不味かったですかね?」


「奴らは盗賊だ。追い剥ぎしてもなんにも問題ない。ただ、一応身元を確認するものが無いかだけ、後で確認させて欲しい」


どうせ黒幕まで辿り着けないんだから違うと分かっていいても盗賊として処理するって事ね。

まぁ、貰えるんだったらそれで良いや。


そもそも、相手は貴族と貴族の護衛な訳で断って敵対したら嫌だし。


と言うか何となく、この女の子の父親が領主をしている街にこのままノコノコ行ったら面倒な事になる気がする。


ちょっと怪しまれても、このまま離脱するべきか…いや、街の入口までついて行ってその後離脱って言うのが良いかも。

魔導知能。良い感じの言い訳ない?


(そうですね。ダンジョンに挑戦するためにグラフェンに向かう途中で、と言うのはどうでしょう。グラフェンは冒険者がダンジョンに挑みやすいように作られた村なので。村にしては施設が充実していますし)


それで行くか。結局、貴族から逃げる事はできないけど、時間稼いで色々準備しておきたい。


「あ〜。それなら、追い剥ぎした戦利品は全部置いていきます。自分の目的地はエルガルドでは無くグラフェンなので。正直に言うとヒューマンスライムと言う種族である以上貴族って信用出来ないので。勿論、信頼出来る方がいるのも理解はしていますが。出来るだけリスクは避ける性格でして」


ここはもう本音でぶっちゃけるか。これで騎士が逆上してくるようなら、貴族の女の子事殺す。


「そうか…確かに一時期は薬効の高いポーションを作ったり。金属の精錬をやらせたりするために。捕まえて奴隷にしようとする貴族も一定数いたからな。余りに酷いので、教会も介入してきて、そう言う連中は軒並み粛清されたが。ヒューマンスライムたち本人からしたらだからと言って近づきたいものでは無いだろう。但し、ショウゴ殿の事を報告する事にはなってしまうが…」


ヒューマンスライムはレアな種族だって聞いたからよく狙われてるんだろうなとは思って適当言ったけど。

思ったより狙われてた。薬効の高いポーションに金属の精錬か…

そんな事も出来るんだね。機会があったら試して見るか。


「それはしょうがないでしょう。こんな事があって、報告しない訳には行かない。それでは、本体である私はこれで失礼します。と言っても、助けておいて中途半端に投げ出すのもあれですので、エルガルドの近くまで分体に護衛させましょう」


と言う訳で、人型5人ぐらいでこの人達の護衛宜しく。

護衛が終わった後は、分体としての制御を切ってただのスライムゼリーになったように見せかけて、小型の生き物の姿になって街の中に侵入。

領主がどんな人なのか探って欲しい。


情報も無しに俺が直接行くのが危険な訳で、事前に調べて。

安全そうと判断出来たら、大事な一人娘さんを助けた報酬を受け取りに行っても良いし。



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読んで頂きありがとうございます。





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