第12話

俺は別に善人では無いからな。面倒事に巻き込まれたせいで、沙希との合流が遅れるのはごめんだ。


(貴族に恩を売れば色々とやりやすくなりますよ。貴族の権力は便利です)


その権力を此方に向けられると面倒なんだろうけどな。


そういう時にも貴族に恩を売っておけばどうにかなるかも知れないか…


(因みに狙われているのは、年端もいかない少女のようですよ。騎士におんぶされて逃げています)


それを先に言いなさい、それを。

流石に少女を見捨てるほど俺も人でなしじゃない。


(それでは直ぐに案内を始めます)


りょーかい。後、分体を使って先に援護しといて。


(承知致しました)


これで、駆けつけたけど間に合わなかったって事も無くなるだろう。


身体強化を発動して貴族がいると言うところに駆け出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「アレッタ様もう少し堪えて下さい」


簡単な護衛任務だったはずなのにこんな事になるとは……


それにしても、今回の敵。盗賊っぽい服装はしているが。

盗賊に偽装した傭兵か貴族の私兵だろう。


アレッタ様を殺すのではなく、誘拐しようとしていることを考えると、アレッタ様を捕まえて、ご領主様を脅すつもりか……

とは言え貴族の騎士として何としてもアレッタ様をお守りしなければ。


「ターナー避けて!」


いつの間にか剣を構えた人が!

このままではアレッタ様ごと斬られてしまう。

私はHPでどうにかなるだろうが、アレッタ様はまだレベルも低くHPも低い。

斬られてしまったら致命傷になりかねない。

だが、今からでは避けきれないっ

そう思った瞬間。

剣をこちらに振り下ろしてきていた奴が吹き飛んで行った。


「なんだあれは」


吹き飛んで行ったやつがさっきまでいたところには、スライムゼリーで出来た体を持つ謎の小鳥が飛んでいた。


新種の魔物か?この状況で敵対する存在が増えるのは厄介だ。


そう思ったが。運良く謎の小鳥は盗賊モドキに攻撃を開始した。


このタイミングにここからの退避を...


「ヨシヨシ。ちゃんと間に合ったみたいだ」


声がした方を見ると。

服自体は平民が着る一般的なものなのだが。

森の中にいるにしては、汚れひとつないと言ういかにも怪しい少年が立っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


貴族の少女を守る。騎士にすっごい不審者を見るような目でこちらを見ている気がするけど。


この状況でいきなり現れた存在とか怪しさMAXだろうし、仕方ないか。


「それにしても、こいつら盗賊じゃないな」


盗賊の振りはしてるけど、こいつら盗賊じゃないだろ。

凄い練度だし。


それともこの世界の盗賊ってこんな練度高いの?


(ご想像通り、盗賊に偽装した貴族の私兵という確率がいちばん高いかと)


そうか。取り敢えず排除するか。


と言っても相手はレベルを上げた貴族の私兵。

簡単に倒すのは無理だろうな。


ヒューマンスライムである事を隠して戦うのは危険か...


魔導知能、お前何体までなら分体を十全に動かせる?


(100体までは余裕です)


なら、分体を100体作り出すから、それを操作して敵を倒せ。魔力は自由に使ってくれて構わない。


分体全員が魔力消費度外視で身体強化すれば、身体能力で負けていてもなんとかなるだろう。

やられたとしても、俺がいれば幾らでも補充可能だし。


(承知致しました)


さてと、俺は助けた人達に話に行くか。



「大丈夫ですか?私はヒューマンスライムの勝吾と申します。ただ事では無いと思い、助太刀させて頂きました」


目の前で思いっきり分体を作り出してしまった以上、ヒューマンスライムであることを隠すのは無理だし、隠さないで口止めする方が合理的だろう。


「助けて頂きありがとうございます。

私はアレッタ・エルガルド。この先の街エルガルドの領主の一人娘です。こちらは私の護衛ターナーです」


「救援感謝します」


目的地である街の領主の娘か。

助けておいて良かったな。


「取り敢えず。このままのんびりしていれば、ケリはつくと思うからちょっと休憩していてください」


俺はここから援護するか。


俺のルーン魔法でも相手の連携を乱すぐらいはできるか…あれ?


もう終わったの?

振り返って分体と盗賊もどきの戦闘を援護しようとしたら既に戦闘が終わっていた。


(魔力消費度外視の身体強化を使えば、中級冒険者レベルまで身体能力をあげることが出来ます。中級冒険者100人で殴りかかれば、格上でも圧倒できます。それに分体ですからダメージを食らうことを躊躇う必要無かったですから)


なるほど。ある程度の質と数の暴力でボコしたと。


(一応、気絶させるに留めていますが、どうしましょうか?)


襲われた貴族からしたら情報源は欲しいだろうしナイス魔導知能。


(お褒めに預かり光栄です)


「ってな訳で、想像以上に早く終わったんですけど。移動します?後、敵は全員気絶させてあるんですけど。どうします?」


なんか凄い間抜けな感じになっちゃったな。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る