第11話
「まだ、夜か」
目が覚めると辺りはまだ真っ暗、明かりは焚き火のみだ。
(おはようございます。まだ、日の出までは数時間有りますよ)
完全に目が覚めちゃってるし。今から2度寝って気分じゃないな。
そう言えば、なんちゃって乾燥レンガどうなった?
(しっかり乾燥してますよ)
焚き火の傍に移動してなんちゃって乾燥レンガを手に持ってみると、かなり軽い。
プラスチックみたいな感じ?
取り敢えず思ったより使い物になりそうだ。
火耐性がどれぐらいあるのか、強度はどれぐらいか、確認しないといけない事は色々有るけどね。
とにかく1度も使わず、ここに置いて行くのは勿体ない気がするな。
と言うか俺が思っている以上にスライムゼリーが便利だ。
そう言えば。何かしら袋見たいのを持っていた方が、街に行った時に怪しまれないよね?
袋を作れば、なんちゃってレンガも持って行けるし。
(確かに、何かしら袋を持っていた方が、怪しまれないですが…布は魔鹿の毛皮があるとして、針や糸の用意が出来ませんよ)
いや、布さえ有れば巾着袋を作れる。
スライムゼリーの粘度を上げれば、接着剤として使えるって分かったしな。
マジでスライムゼリー無双だな。
今のところ、ヒューマンスライムになって1番嬉しいのが、スライムゼリーを使い放題なことだ。
後は魔鹿の毛皮が鞣して有れば巾着袋を作れるな。
(カードでドロップする魔物の毛皮は、基本鞣した状態でです。因みにこの世界では、毛をそのままに鞣したものを毛皮、毛を除去して舐めしたものを革と呼んでいます)
成程。じゃあ今回は毛がそのままって事ね。
毛を除去してあった方が楽に加工できたと思うけど。贅沢は言ってられないか。
早速、魔鹿の毛皮をカードの状態から元に戻して、巾着袋作りを始めた。
ー1時間後ー
「まぁまぁの出来かな」
なんちゃって乾燥レンガの時より使ったスライムゼリーが少なかったことで、乾くまでそこまで時間がかからなかった事もあり、1時間で完成させることが出来た。
と言っても、このままではただも巾着袋だ。
折角だし、刻印術を使ってこの巾着袋も強化しないと。
巾着袋をひっくり返して、ルーン文字を書き込んでいく。
本当は糸にスライムゼリーを染み込ませて刺繍したいんだけど。糸がないし。
ルーン文字を書き始めて空が明るくなり始めた頃。
ようやく刻印術が完成する。
刻印術は魔力の通りがいいインクを使ってルーン文字を書けば、効果が発動するわけじゃない。
文字の形、文字と文字の間隔をミリ単位で正確に書く必要がある。
しかも同じ文字でも発動させたい効果によってそれが変わる。
なので、文字を書くだけと言ってもかなりの時間がかかってしまう。
沙希からは魔力量より、機械以上に精密に文字を書けるのが一番の才能だと思うって言われたな。
(それで、どんな効果を付与したのですか?)
空間拡張と重量軽減。
(まさか!マジックバッグを作ったという事ですか)
サイズ以上に量が入るバッグの事をマジックバッグと言うならそうだね。
と言っても、これは容量倍、重量は2分の1程度の大したことないマジックバッグだよ。
(まず、自作できるって言うのがこの世界の常識的に可笑しいんですよ。沙希様がやり過ぎないようにって言ってた意味が分かりました。マジックバッグが自作できるとバレたら大変な事になりますよ)
じゃあ、どうやってマジックバッグを手に入れるの?
(ダンジョンの宝箱からです。因みにそのマジックバッグの性能ぐらいなら、初級ダンジョンのボスから低確率でドロップします)
それなら。俺が持ってても、まだいいわけができるね。
(初級ダンジョンとは言え、レベル1の人間が1人で攻略したなんて誰も信じませんよ。親から選別として貰ったと言う方が、まだ信じて貰えます)
それもそうか。
じゃあ、それで行こう。
早速、マジックバッグになんちゃって乾燥レンガや薪として使わなかった木の枝を仕舞って街に向かって移動を始める。
途中遭遇する、ゴブリンで刻印術で強化した魔鹿角ナイフの切れ味を試しながら移動する。ゴブリンからドロップするものに、価値のあるものは無いけど。多少戦う練習になったかな。
後はこの世界はHPが尽きるまで、本体に大きなダメージを与えられないので。
まずは、相手のHPが尽きるまで手数でちまちま攻撃するのが主流だとか色々、この世界の戦い方を教えてもらった。
HPを盾にノーガードで攻撃してくることもあるので、注意をした方がいいとも。
HPって便利だよね。その分、厄介に感じることも多そうだけど。
攻撃力が上がればその分、一撃で削れるHPの量も増えるから、一撃で削りきってそのまま倒すことも出来なくはない。
ゴブリンを含めGランクの魔物はHPがあってないようなものだから、特にレベルを上げなくても一撃で倒せるみたいだけどね。
実際、ゴブリンは一撃で倒せたし。
それに比べて魔鹿は結構攻撃しないとHPを削りきって本体にダメージを与えることできなかったし。
(マスターもう1時間程歩けば、森を抜け目的の街に辿り着けるのですが。少々気になるものを発見しました)
気になるものって?
(恐らく貴族と思われる人物が敵に追われて森の中を逃げ回っているようです)
それは厄介事だな。
主人公なら悩んだりせず。助けに行くんだろうけど、どうしようか……
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