第9話
(まだ、隠し球が有るんですか?)
隠し球と言うほどでは無いけど。まぁ、手札は持ってるよ。
と言っても魔力が通りやすい素材をインク代わりにしてルーン文字を書く必要があるから、今すぐ実行するのは難しいよ。
一応、刻印術って技術ね。
(成程、刻印術ですか。なら、ご自身のスライムゼリーを使うのはどうでしょう。魔力の通りも悪く無いですし。粘度の調整も出来るはずなので、書くためのインクとして使えるはずです)
スライムゼリーって俺が半透明な水色になった時のあれか。
地球にいる時は、刻印術に使うインクに使用出来る素材はどんなに粗悪品でも数百万したから刻印術は、魔力だけで効果を発揮出来るルーン魔法に比べて使いずらかったけど。
ヒューマンスライムになった今ならインクがタダで用意し放題…
これは、俺の時代きたかもしれない。
事前に準備する必要はあるけど。刻印術使い放題なら、今より大幅な戦力アップだ。
(マスター割と自分の評価低いのに、刻印術には自信が有るんですね)
まぁ、魔力量以外に唯一誇れるものだったしね。
お金を気にせず質のいい素材を使えば、何もせず突っ立ったままで、ミサイルの直撃を無傷で耐えられる防具作れるし。
流石に今ある素材で、それに匹敵するものを作るのは無理だけど。
それなりの物は作れるだろう。
(私には地球の兵器の火力を正しく判断する事が出来ませんが、相当な隠し球を持っていたのは理解しました)
別に隠してた訳では無いんだけどな。
刻印術のインクに使えそうな素材が手に入ったら話すつもりだったし。
(とにかく最低限ですが食料も手に入りました。次は、野宿できる場所に移動しましょう)
本当に最低限の食料だけどね。カードでドロップする魔物の肉は、基本100グラム前後の量だって言ってたし。
夜ご飯が肉100グラムオンリーと言うのは、ちょっと量が少ないかなって感じだ。
かと言って肉だけを沢山食べたいかと言われると、それも違うけど。
(塩すら調味料がない現状、量を食べても満足出来ないかと)
確かに調味料、何も持ってないもんな。
美味しい食材でも、調味料がなければ美味しさ半減か……
今の服とか魔鹿の角から作られたナイフに刻印術を施す時間も欲しいし。
食事は肉だけで我慢して早く野宿する場所を探すか。
と言っても無闇矢鱈と歩き回る必要はない。
一番近い村はクソだったけど。
ここから一番近い街がある方向に向かって歩きつつ、魔導知能が操作している分体が野宿にいい場所を見つけるのを待てばいいだけだ。
それにしても、まだ沙希と合流出来ないのか?
紙の鳥に返事を書いて飛ばしてからかなり時間がたってるはずだけど。
(既にここから1200km程離れていますが、まだ合流できる様子は無いです)
移動手段が歩きしかないのに、1200km以上離れているのは確定か。
数日で合流ってのは難しそうだな。
流石の沙希も、魔法だけで飛んだり転移したりは出来ないからな。
(道具による補助があれば可能だと言うことですか?)
転移に関しては理論上出来るってだけで、実際試したことは無いって言ってたけどね。
話をしながら、戦闘を避けつつ進んで、
魔導知能が見つけた、木が少なくて地面が出来るだけ平らな場所にたどり着く。
魔導知能には分体を使って、焚き火をする為の木の枝とか肉を焼くのに使えそうな石を探しに行ってもらってる。
「さてと。俺は、刻印術を使って装備の強化をしますか」
右手をスライムゼリーに変化させて人差し指の先をペン先のような形に変形させる。
そして、ペン先から粘度の低いスライムゼリーが出てくるようにする。
これで、綺麗にルーン文字を書けるだろう。
先ずは、魔鹿の角から作られたナイフに硬質化を付与する。
装備の上から、ただインクで書くだけだと、擦れて付与した効果がダメになっちゃうことが多い。なので、ルーン文字の形に彫ってそこにインクを流して乾燥させたり。
糸にインクを染み込ませてルーン文字の刺繍を作ったりするんだけど。
流石にそこまでする余裕は無い。道具もないしな。
硬質化を発動させるルーン文字の組み合わせを書き終えたら、ルーン文字に魔力を込める。
この時の込める魔力の量で、どれだけ効果が強くなるかが決まる。
と言っても、ルーン文字を書くのに使ったインクと刻印術を付与する物の質によって上限値は変わるので、初期装備を最強装備にすることは出来ない。
魔力はいっぱいあるので、上限値いっぱいまで、ルーン文字に魔力を込める。
これで、魔鹿の角ナイフへの効果の付与は完了だ。
後は服一式に防御力上昇と衝撃吸収の効果を付与すれば、今回の刻印術は終了だ。
(硬質化と防御力上昇はどう違うんですか?)
硬質化は文字通り硬くする。硬くなるんだから当然防御力や耐久度が上がるけど。
服とかに付与しちゃうと、鉄みたいにカチカチな服になって服として使えなくなっちゃう。
防御力上昇は硬さは変えずに防御力と耐久度を上げてくれるから、服とか硬さを変えたくないけど。防御力や耐久度を上げたい時に使う。
硬質化より、強化率が低くなるって欠点もあるけど。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んで頂きありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます