第7話ㅤお兄ちゃん
ㅤ腹を括ろう。
ㅤこうやって黙っていても仕方がないし、いつ未希が戻ってくるかもわからない。中学生相手で話しづらいとは言え、セツナも逃げ帰ってはいられない。そもそも逃げ帰れないんだけども。
「なあ、映里さんはアンケートボードになんて書いたんだ?」
「…………」
「中学生って聞いたけど、どうやって来たの?車とか?」
「…………」
「……好きな食べ物ある?」
「…………」
ㅤ人生において、年下相手にこうも口を聞いてもらえない日が他にあっただろうか。
ㅤいや、もしかしたら聞こえなかった可能性もある。未希が行った後に体を掴まれ、部屋の隅に雑に置かれてしまい、物理的な距離も心の距離も遠くなってしまったから。
ㅤああ、弟に最近中学校で流行っているものは何か聞いておくべきだった──。
「読書の邪魔です」
ㅤやっと話を振ってもらえて一瞬喜んだものの、映里は毒を吐くと再び手元の絵本に目線を下ろしてしまった。床に散らばった数冊の絵本を何度も読み返しているようだけど、今映里が手にしているのは──、
「……不思議の国のアリスか。ちゃんと読んだことはないけど、大まかなあらすじはわかるよ。アリスが好きなの?」
ㅤ大きな黒いリボンを付けている、白と水色が基調のエプロンドレス姿の女の子。遠くから見てもわかるその特徴を一目見て、セツナは再び話を振った。目を細めれば、表紙には『Alis in Wonderland』と小さく書いてある。
「こんな状況下でよくもまあそんな呑気な話ができますね」
「うぐ……」
ㅤ映里は此方に視線のひとつすら向けないまま、折角セツナが呈した話題を颯爽と片付けて会話を締め括る。体は動かないし、部屋の奥に座る中学生には辛辣に当たられるし、心が折れそうだ。
ㅤでも、上映前に同じようなことを言い捨てていたキノコ頭の少年と似たものを感じるし、ここは大目に見よう。キノコは嫌いじゃないし。
ㅤセツナは更なる話題を探すためにできる限り視界に映るもの全てを見回す。すると、ある異変に気付いた。
「……ここは、実在する場所ではないみたいだな」
「!」
ㅤページを捲っていた映里の手が止まる。
ㅤ映里が今読んでいるページに映っているのは、時計を首からぶら下げた兎が四足歩行で走るシーンだ。確か、原作のアリスだと二足歩行だったはず──。
「そこに落ちてるぬいぐるみは縫い目がないし、その絵本は有名童話にしては表紙の文字が間違ってる。それに、ここに来るまでに人影ひとつ見なかった」
ㅤ表紙の綴り字は『Alis in Wonderland』ではなく『Alice in Wonderland』だろうと、最初に見た時からセツナは気付いていた。中学生の〝想像〟なら、『ce』が『s』に変わっていてもおかしくないけど。
「『映画』の中の風景や小物は、持ち主の経験か想像に左右される。持ち主が行った事のない場所や見た事のないものは、実物よりはどこか違ってみえる。そうだろ?」
ㅤ恐らく映里は絵本やぬいぐるみを間近で見たことがない。だからこの映画も、所々の造りが甘いんだ。
──でも、女の子が絵本やぬいぐるみを見たことがないなんて有り得るのか?
「……どうしてまだ〝初回〟のアナタがそれを知っているんですか?」
「うーん。ちょっとまだ名前が思い出せないんだけど、女の子に教えてもらった気がする……あと、」
ㅤ星が見える教室であの子が教えてくれたのを覚えている。その後どうしたのかは、いまいち思い出せないけど。
「俺にも中学生くらいの弟がいるからさ。それ、弟が持ってる絵本に見た目は似てるけど、文字が違ったから」
ㅤ弟は多趣味だから、勿論読書も嗜んでいる。好みの範囲も幅広く、童話絵本や歴史小説、果てには使い道がわからないビジネス書まで買っていたのが印象深くてよく覚えていた。
「……」
ㅤ何か異論を示したかったのか、そうではないのか。
ㅤ映里は手元の絵本に手を翳すと深く目を閉じて、
「わ、凄い!どうやってやったんだ!?」
ㅤ再び瞼を開けた時には、表紙の綴り字が正しいものへと移り変わっていた。床に散らばるぬいぐるみにも縫い目が現れて、突然目の前に広がる世界の現実味が増していく。
ㅤそして、驚きと共にどこか嬉しそうに声を上げたセツナのことが気に入らないのか、映里は立ち上がってセツナの元に足を進める。そのまま小さな両手にセツナの体を抱き抱えると、
「アナタが言う通り、ただの想像です。私が私の映画の中で想像すれば、」
ㅤ映里は無表情のまま、右手に持った〝それ〟をセツナの首に突き立てた。
「──アナタの身体を切り刻む道具だって作れます」
「……!」
ㅤさっきまで無かった筈の鋭利な鋏が、今にもセツナの首から綿を吹き出しかねない近距離にある。
ㅤ動けない状態で良かったとこれ程思ったことは無い。もし自由に動ける状態であったなら、今頃驚きの余り体が跳ねて、首から鮮血が吹き出していた。この場合なら綿が。
ㅤセツナは動揺してぬいぐるみの瞼を三度瞬きさせてから、宥めるように映里を見つめる。変わらずずっと無表情のままの映里は、今までにこの映画館で出会った誰より真意が掴めない。
「ごめん、何か気に障ったなら謝るよ。刃を向けないで、落ち着いて話そう。君に嫌われたくてここにいる訳じゃないんだ」
「じゃあ、何が目的ですか?ここは私の理想郷です。喋るぬいぐるみなんか要らない」
「目的か……」
ㅤ刃を向けながら聞いた映里の質問に、セツナの脳裏には未希の言葉が思い浮かぶ。
『この子の本当の〝将来の夢〟を判明させてくれたら、あんたの意識を肉体に戻すことを約束するよ』
ㅤここで恐れ怯み何もしないことは、自身の肉体を諦めることと同義だ。
「どうせぬいぐるみから元に戻るためでしょう?それか、未希兄さんに私への詮索でも頼まれましたか?」
「う。まあ、そのどっちも理由のひとつではあるけどさ……」
ㅤいつになったら鋏を下ろしてくれるんだ。
ㅤオレをこんな姿にしたのが誰かはわからないけど、冷や汗が流れない体にしてくれて良かったと思う。死が真横にある恐怖というものは、どれだけ虚勢を張っても逃れられない。
「未希兄さんってことは、未希くんは君のお兄さんなのか?」
「違います」
ㅤ違うんかい。
「私がそう呼びたいから呼んでいるだけです。私は一人っ子だから、ここにいる人達が好きに呼ばせてくれるのが嬉しいんです」
「!じゃあ、俺のことも──」
「まあ、ぬいぐるみ如きにそう呼ぶ筋合いはありませんけど」
「そ、そう……」
ㅤ未希とオレだったら、傍から見てもオレの方が真面目そうに見えるはずなのに、どうしてこうも態度に差があるのか。やっぱり、未希の顔面偏差値が高いからか。
ㅤ映里の瞳は揺るがない。
ㅤ見た目こそ幼いのに、所業や口調が年相応でない気がしてくる。でも、だからといって、それは全てを諦めていい理由にはならない。
「──さっき君が言った理由もそうだけど、俺は君のことを知りたいって気持ちもあるんだ。ここにいちゃ駄目かな」
「駄目です」
「やっぱり!?」
ㅤセツナの対応を見て馬鹿らしくなったのか、映里は言い切るとセツナの体を宙に投げた。地べたにべしゃりと投げ捨てられたセツナが「いてっ」と声を上げるも、映里は目を逸らして定位置に戻る。
「早く出ていって下さい。私の理想郷作りの邪魔をしないで」
「理想郷作り──?」
ㅤ聞き慣れない言葉に、思わず聞き返してしまった。
「……喋りすぎました。次話しかけたら、今度こそ切り刻みます」
ㅤ映里は先程座っていた位置に再び腰を下ろすと、本の続きを読み始めた。横向きに投げ捨てられて、視界が傾いたまま放置されているからか、映里が今どこのシーンを読んでいるのかはわからない。
「……じゃあ、君の読書が終わって暇になったら話しかけてくれよ。読書の邪魔はしないから」
「…………」
ㅤ返事は無かった。
ㅤでも、それでいい。
ㅤいくら元の姿に戻るためとはいえ、無理強いは良くない。誰だって人と話したくない時くらいある。
ㅤそうして、未希が戻ってこないまま、数分が経過した。
ㅤ壁掛け時計の針は動いている。
ㅤ退屈だ。
ㅤもしこのまま時間だけが過ぎて、未希が戻ってきたら、オレはどうなるんだろう。一生このままなのかな。
ㅤ話題の映画館から帰ってきた兄がぬいぐるみの姿だったら、弟は笑いを通り越して心配するだろうな。そもそも、信じてくれるのかな。
ㅤ考えてもしょうもないことを考えていると、やがて、映里は手を止めて此方に顔を向けた。
「……私が話しかけるまで、ずっとここにいるつもりですか?」
「俺、一人じゃ歩けないもん」
「……はあ」
ㅤため息と共に、静寂が訪れる。
ㅤセツナは再び顔を逸らしてしまった映里を見ながら、先程映里が口走った『理想郷作り』という言葉を思い返す。
ㅤ三回も来てまで同じ映画を鑑賞している彼女の夢って?
ㅤまだ中学生なのに、作りものの理想に縋らないといけないのか?
ㅤ今のオレに出来ることはなんだ?
「……なあ」
「…………」
ㅤ返事は無い。想定内だ。
ㅤセツナは深く目を閉じて、一度深呼吸をしてから、落ち着いた口調で語り始めた。全ての顛末と、いつかの理想を。
「……俺、さっき未希くんと自分の映画を観てきたんだ。ていっても、この姿だから体感はできなくて、過去の自分を見守ってただけなんだけど」
ㅤ思い出したくもないと思っていた光景も、いざああやって客観的に見てみれば、少し気が楽になった。それに、未希には言わなかったけど、忘れていた思い出も思い起こせた。
「見てきたシーンが、今は疎遠の幼馴染と喧嘩してるシーンでさ……そのシーンを観てる内に、思い出したんだ。俺がこの映画館に来ることになったきっかけを」
「──?」
ㅤ一瞬だけ、映里の視線が此方に向いた気がした。
ㅤ瞼だけじゃなくて口も思うように動けば、笑い返してやれるのに。
「昔、幼馴染とよく夜に遊びに行ってて……小学生の頃だけど、どっちの親も放任主義だったから怒られなかったんだ」
ㅤ今もセツナの親は放任主義で、夜中に弟やセツナが外出しても気に留めることはない。だから、千望セツナは今こうして映里と話せている。
ㅤ幼稚園の窓から見える空は真昼の晴れ模様だ。
ㅤでもきっと、映画の外の世界には、今日も何の変哲もない星空が広がっている。
「それで、近所の公園で星空を見ながら『一緒に警察官になりたい』って願ったんだけどさ、全然叶いそうにないんだよなあ。願ったおかげで、チケットが手に入ったんだろうけど」
「……それが何ですか」
「中々上手くいかないもんだな〜って話」
「雑談としてはつまらなすぎますね」
「ごめん……」
ㅤセツナには友達がいないから、雑談スキルを求められたって困る。
「あ、あとさ」
ㅤ映里はセツナの言葉を一蹴した後に読書に戻ろうとしたが、それは叶わなかった。
「これは今思い出した話なんだけど」
「なんでそんなに話しかけてくるんですか。煩いです」
ㅤ此方を見据える映里の瞳が、先程までよりも厳しさを増している。映里の手元に落ちている鋏も、日光に照らされて刃の光沢感が増しているし、今ここで映里が決断を下せばセツナの身体は簡単に八つ裂きになってしまう。
ㅤけど、それを怖がっていたら何も出来ない。
「……ごめん。君がなんとなく弟に似てたから、放っとけなくて」
ㅤセツナが申し訳なさそうに謝ると、映里は不思議そうに口を開いて本を閉じた。
「弟?」
「うん。サツキって言うんだけど、画家志望でさ。やたら人脈広くて明るい割に、遊びだけじゃなくて勉強もちゃんとしてる良い奴だよ。同い年くらいじゃないかな」
ㅤ弟自慢となると、セツナはつい口が軽くなってしまう。
ㅤ先程とは違う明るい声でセツナが自慢し終えると、映里の表情は先程とは違って見えた。
「サツキ……」
「?」
ㅤどうしたんだろうか。
ㅤ映里は口元に手を当てて、視線を右に泳がせている。その瞳は先程のような鬱屈としたものではなく、何か楽しいことを思い出したように輝いていた。
「もしかしたら、私のクラスメイトかもしれません。よく話しかけてくるうざい所、兄弟でそっくりですね!」
ㅤ急に晴れ晴れとした笑顔を向けてくる映里にセツナは驚き、もし人間の姿だったら口をぽかんと開けているところだった。弟は確かに人脈が広く誰とでも仲良くなれる人けど、まさか映里とも繋がりがあったなんて思いもしなかった。
「あ、あはは……サツキは学校で上手くやれてる?」
「上手くも何も、クラスの中心ですよ。私みたいな転校してきたばかりの人にも気さくに話しかけてくれますし、笑顔が可愛いですし、絵がお上手ですし」
「お、おう。そっかそっか」
ㅤなんだなんだ。なんでこんなに声も表情も明るいんだ。
ㅤ無表情だった少女が突然頬を赤らめて惚気だして、セツナは呆気に取られた。でも、殺意のような気配はもう感じないし、これはこれで結果オーライなのかも。脳裏で全力で弟に感謝の言葉を述べながら、セツナは安心しきったように息をつく。
「サツキが自分の学校にも入場チケットを手に入れた子がいるって言ってたのは、君のことだったんだな」
「……ええ、そうですね。サツキさん、家で私の話をしてくれてるんですね。嬉しいです」
「あ、うん……」
ㅤ兄と弟に対する態度の差がえげつないな。弟は一体何をして映里の好意をここまで募らせたのか、兄であるセツナでも皆目見当もつかなかった。
「転校してきたばかりで、一人っ子だったら、そりゃ寂しいよな。ここは君の理想郷ってことは、将来の夢は保育士さんか?」
「違います」
「違うの!?」
ㅤセツナの弟に関する話も終わり、酔いが覚めたように映里は再び表情を殺してしまった。そのまま映里は此方に向けて歩くと、セツナの身体を抱き抱えて目線を絡ませる。
「……中学生にもなって、確固たる夢が決まっていないのはおかしいですか?」
ㅤその瞳には、幼少期からの寂しさが映っているようだった。
「私の家は共働きで、普段私がいる時間帯には両親のどちらとも家にいないことが多いんです。転校してきたばかりで、お友達もいませんし」
ㅤ血の気の宿らない落ち着いた口調のまま、優しく頬を撫でられる。その対応は本物のぬいぐるみに話しかけている少女のようにも思えて、目を離したら壊れてしまいそうな危うさがあった。
「……きっと、私もアナタと同じで、いつかのお願いがチケットとなって枕元に落ちていたんでしょうね。私も、アナタみたいに思い出せたらいいのに。思い出したいとアンケートボードに書いたって、叶いやしない」
「──」
ㅤ今晩を含め、今までに三回も入場している映里の〝夢〟は、きっと幼少期のセツナの夢より意思が固いものだった筈だ。そんな願いすら忘れてしまうなら、彼女の孤独感も一塩だろう。
「さて、満足しましたか?満足したなら、出ていって下さい」
──ここで食い下がる訳にはいかない。
「一緒に行こう」
「……?」
ㅤ心做しか、映里の手のひらに当たった自分の腕に、微かな力が籠った気がした。映里もそのことに気付いたのか、目を疑うように熊のぬいぐるみの姿を見下ろしている。
ㅤきっと今のは気の所為だけど、映里の注意を最も引けているのは、今この瞬間だけな気がした。セツナは目を細めて、瞳だけでも笑いかけてみせる。
「夢って、すぐ見つければいいって訳じゃないしさ。俺も、昔の夢を今日まで見て見ぬふりしてきたから、君の気持ちはわかるよ」
ㅤ警察官になりたかった。
ㅤでも、脚本家にならないといけない。
ㅤ警察官になりたいなんて言ったら、皆から馬鹿にされる。
ㅤそんな無意味な葛藤ばかり抱えて、今日までなんの努力もせずに生きてきた。けど、そんな日々すら、今なら受け入れられる気がしている。
ㅤ何を受け入れて、何を受け入れられないのか。
ㅤ今度は怒鳴ったりせずに、落ち着いて『あの子』と話がしたい──。
「ここにいても、君の正体不明の夢は叶わない。いつか夢を見つけるために、一緒にチルドレンシアターを出よう」
ㅤ映里が答えなくてもいい。映里の心情がわかった今なら、もしまた無視をされても、今度はめげずにいられる。
「今は体が動かないけど……動くようになったら、夢探しくらいいつでも手伝うから。サツキにも手伝わせるよ、友達なんだろ?」
「友達……」
ㅤセツナを抱いたままの映里の両手に、ぎゅっと力が込められた。その声色は、何かに怯えているようにも、何かを期待しているようにも聴こえた。
「サツキさんは、私と友達になってくれますかね」
「友達になってって言ったとして、ならない奴ではないと思うよ」
「……そう、ですか」
ㅤ一言一言に数秒の間が置かれながらも、映里は最後にそう返すと深く俯いた。そして数刻が経てば、何かを決心したかのように顔を上げる。
「友達のいない学校に行くのも、誰もいない家に帰るのも億劫でしたが……一度だけ、アナタの言葉を信じます。今日の映画は終わりにしましょう」
映里は笑ってくれた。
「……!」
ㅤ初めて弟ではなく自分の言葉に笑ってくれた気がして、セツナは心の底から安堵した。目の前の少女が自分の言葉を少しでも信じてくれたなら、理不尽にぬいぐるみにされたのも災難ではなかったとすら思えてくる。
「よかった。じゃあ幼稚園内のどこかに未希がいるはずだし、探しに──、」
──あ。
ㅤ何かを思い出したかのように言葉を紡ぐのをやめると、幼稚園の出口に向かおうとしていた映里も足を止める。
「……そういえば、未希ってなんで他の人の映画を行き来できるんだ?認識阻害のマントは羽織ってないし、アンケートボードにも自分の夢を書いてたのに」
「断片的な情報は知っているのに、それは知らなかったんですね。まあ、初回ですし仕方ないんでしょうか?」
ㅤ再び足を進めだした映里の動向を見ると、まるで未希ならそれが出来て当たり前だとでも言っているみたいだ。最初は夢に迷っていたセツナでさえマントが無ければ他の人の映画には入り込めなかったのだから、つくづく不思議で仕方がない。
「未希兄さんは──、」
ㅤそうして、映里がその質問に対する答えをセツナに投げかけようとした時だ。
ばりっ。
「──なんだ、今の音?」
ㅤ異質な音がすると同時に、二人の視界は黒い闇に包まれた。
※ㅤ※ㅤ※
──同時刻
ㅤトイは寝たふりに気付いていたはずだった。
ㅤでも、置いていかれてしまった。
ㅤ今晩はずっと一緒にいられるという言葉は、一時の慰めに過ぎなかった。
「……結局、トイもどこかに行っちゃった」
ㅤトイにとって、わたしが『子供』の一人に過ぎないのは、大分前からわかっていた。トイはわたしが観客席に座っていてもわたしにだけ話しかけたりはしないし、最前列に座る幼稚園児ばかりにいつも目を向けていたから。
ㅤ大勢いる内の観客の一人。
ㅤ特別扱いはされないし、しない。
ㅤわたしが言わないことは何もしてくれないし、わたしが言ったことはなんでもする。でもそれはわたしが観客であるからで、わたしだからって訳じゃない。
ㅤわかってるつもりだったのに、また我儘を言っちゃった。
「…………」
ㅤ今日は色々あったから早く眠りたかったけど、なんだか目が冴えてきた。トイが隣にいてくれたら、最初は寝たふりでも、後から落ちついて寝られるような気がしてたんだけど。
「……一旦、わたしの映画に帰ろうかな」
ㅤ好きな映画の寄せ集めみたいなわたしの
ㅤその中にある夕暮れの海辺に行ったら、少しは落ち着いて眠れるかな。
──あれ、海が出てくる映画なんて、いつ観たっけ。
「うっ、!!」
ㅤ突然針で刺されるような頭痛がして、ベッドから落ちた。床に這い蹲るみたいに寝そべっても、起きる気力が湧いてこない。
痛い。
「頭、いた……」
ㅤどうしてこんなに痛いの?
ㅤどうして起き上がれないの?
ㅤどうして手足が動かないの?
痛い。怖い。苦しい。息ができない。
「……トイ、たすけて……」
ㅤいつもだったらわたしが呼んだら一目散に駆けつけてくれるトイは、もう来てくれなかった。もう、わたしに甘えさせてはくれなかった。
痛い。
痛い。
痛い。
ㅤ頭が割れそう。
ㅤ今にも、ばりばりって音が──、
「──?」
どうして頭じゃなくて、足元から聞こえてくるの?
※ㅤ※ㅤ※
『ひ、人殺し──?』
ㅤ目の前の男が何を言っているのか、最初は理解が及ばなかった。明日真の手にナイフを握らせて、軽快なステップを踏んで窓際に出向く男。
ㅤその仕草の全てが、人の姿でありながらも恐ろしい化け物であるかのように思える。
ㅤ副管理人を名乗る男は部屋のカーテンを開けると、赤い双眸で月を見上げた。そしてそのまま此方に振り向くと、男の姿が月光に照らされる。まるで、神聖なものを照らしだしているようだった。
『ええ。もう一度言いましょうか?』
ㅤふるふると首を横に振る。『あは、その必要はなさそうですね』と笑う男の声すら怖くて、膝に置いた拳を固く握り締めることしかできない。
──今、なんて言った?人殺しになれって、言ったのか?
ㅤ言葉の重みに肩を震わせていた明日真に近寄ると、男は明日真の髪で手遊ぶように指を絡めた。その表情は愉しげで、妖しくて、人間味が無い。
『貴方には殺してほしい女がいる。無論、ただ殺し屋になれと言っている訳ではございませんよ?貴方には、貴方にしか得られないメリットがある』
『めりっ、と?』
ㅤされるがままに髪で弄ばれていると、男は明日真の前髪を掻き分けて目を合わせた。目も鼻も口も、全ての造形が神の創造物かの如く整った麗しい悪魔が、にこりと微笑む。
『──貴方のお兄さんの遺書に、〝リョウカ〟という名前の女性宛のものが紛れていたでしょう?』
ㅤ恐い。
『なんで、それを』
ㅤ遺書の話は一切していない。アンケートボードにも書いてない。それなのに、どうして──。
『さて、何故でしょう。これでも副管理人ですので、貴方が辿った過去は知っているのかも?』
ㅤどこまで知られているかすらわからない底知れぬ恐怖。意思や目的が読み取れない恐怖。根源的な恐怖が、男の全てを見るに堪えない恐ろしいものへと昇華していく。
『でも、残念ながら──チルドレンシアターにはリョウカという名前のお客様は本日いらっしゃいません。なにせ、リョウカというのは偽名ですから』
ㅤ兄に関わる真実を次々暴露していくその言葉に、明日真の思考はついていけなかった。兄の遺書に書いてあった名前の主は、兄に偽名を名乗っていたのか?一体、何のために──?
ㅤ動揺に胸が脈打つのを感じながら明日真が顔を歪ませると、男はその絶望を味わうように頬に触れた。体温の無い無機質な手が頬に触れると、最早異論を呈する気力すら失せていく。
『お兄さんの遺書に書かれていた名前のは、カタカナでしたか?平仮名でしたか?それとも漢字?』
『……カタカナ……』
『でしょうね。なにせ彼女は、名前の漢字はそのままで、読みだけを偽っていますから。初対面で相手の名前の漢字を聞く方なんていませんし、例えアンケートボードの内容を見られても、フリガナを書く欄がなければ読み方なんて偽り放題だ』
〝リョウカ〟というのは偽名で、本名は別の読みの同じ名前だった。一度聞くだけではピンとこない真実を突きつけられるも、段々と思考が冷静になっていき、自分の中で〝リョウカ〟に対する敵愾心が高まっていることを理解した。
『恐らく、貴方のお兄さんは漢字までは聞かなかったのでしょう。だから、名前の読みだけを書いた。そして、名前の読みだけを頼りに彼女が入院している病院を訪れた貴方は、当然彼女に会えなかった』
『…………!!』
『さて、偽名を使ってまで彼女がしでかした原罪は何か、わかりますか?』
『……わからない……』
『あは。では教えてあげましょう』
ㅤ男は蛇のようにするすると明日真の頬から手を離すと、マントの中からひとつの林檎を取り出した。
ㅤ真っ赤に実った禁断の果実をくるくると手のひらの上で転がして、一気に天へと放り投げる。その挙動に驚いた明日真がガタッと音を立てて席から立てば、
『──彼女は、貴方の兄、湊真人の心を殺した』
ㅤ赤い果実は明日真の持つナイフに突き刺さり、惨めったらしく貫通した。
『心、を──?』
『ええ。彼女は貴方の兄の心を誑かし、挙句の果てに突き放し、心を病ませた。かといってそれだけでは飽き足らず、今も別の男とみだらな行為に及んでいる』
『…………、』
ㅤ普段の兄の言動を思い出すと、すぐには信じ難い。兄は家族のためなら無理が出来る性格だけど、もし何か悩みがあるなら、両親にこっそりと相談ができていた。その上、どんなに生活が貧しくても、両親は兄の力になってくれていた。
──でも、待てよ。
ㅤチルドレンシアターに行ったっきり、人が変わったように賢くなった真人。先の展開を知っているかのような振る舞いで幸運な展開を次々呼び起こし、学力向上の圧倒的速度にテレビ出演のオファーがかかり、瞬く間に海外に留学出来る程の頭脳と金銭を手に入れた男。そんな息子がいたら、どんな親だって期待するはずじゃないか。
ㅤ親にすら期待され、誰にも本心を打ち明けれなくなっていたのだとしたら?
ㅤチルドレンシアターの話なんて誰も信じてくれないと諦めて、真実を告げずに飛び降りたのだとしたら?
〝俺が一番悪いんです。〟
〝ごめんなさい。お母さん、体に気を付けてください。お父さん、期待に添えずごめんなさい。明日真、明日香、俺の分も生きてください。〟
〝俺は大人になれません。〟
ㅤあの文章に、全ての辻褄が合ってしまう──。
『彼女は一度自殺未遂を冒していますから、彼女に魅せられたお兄さんも同じ方法を取ったのでしょう』
ㅤ戦慄する明日真の腕から林檎だけを器用に抜き取ると、男は今度は両手でそれを抱えた。果汁滴る真っ赤な林檎を男の白い肌が包み込むと、
『病院の屋上から飛び降り、落下し──』
『──ぐちゃっ、とね』
手の中の林檎は、そのまま握り潰された。
『──ッッ!!』
ㅤ男の人間離れした握力にも驚いたが、それ以上に明日真の息を失わせたのは、突如フラッシュバックした兄の凄惨な死体だった。呼吸の仕方を忘れて膝から崩れ落ちるも、慰めの声はかからない。ただ己を慰めてくれるのは、床に落ちたナイフが物語る復讐心だ。
これを握ってしまったら、もう後には引けない。
例えこの場所に戻っても、何も知らぬまま笑えることはない。
──怖い。
ㅤ訳もわからずに、涙がぼろぼろと零れた。
ㅤ床に落ちた涙がナイフにも一滴二滴と滴り、刃先が水に濡れる。これを握ったら終わりだという自制心が、男が甘い言葉を口にするだけで薄れてしまいそうだった。
ㅤ兄を誑かし、幸福な家庭から長男を奪った阿婆擦女に対する復讐心。
ㅤそれだけが、炎のように燃えたぎっていた。
『貴方が貴方の兄を殺した女を殺すだけで、貴方が観たい未来の全てが手に入る。これ程貴方にとって上手い話が、他にありますか?』
『…………』
ㅤ返答は出来なかった。否定もできなかった。
ㅤこれを握ったら、罪悪感と安息が手に入る。
ㅤこれを握らなかったら、復讐心と後悔が募る。
なら、僕は──。
『──〝T4D10〟に座る
ㅤリョウカではなくスズカと読む名前なのかと、冷たくなっていく思考の中酷く納得した。涼夏、涼花、鈴香、鈴佳──色々と名前の候補は浮かぶけど、今更なんだって構わない。どうでもいい。
『怨恨を込めて、全身を刺しつくしても構いませんよ。チルドレンシアターは特殊な造りなので、貴方の罪が世に露呈することもありません』
ㅤ今度は男の助力無くして、明日真は自分の意思でナイフを握った。涙も枯れ切って、無表情のまま刃先を見つめる明日真を見ると、男はぱあっと朗らかな笑顔を見せる。
『よかった……断られてしまったら、どうしようかと!嬉しい!』
ㅤ自分とは大分体格差のある男に勢いよく抱き締められて、明日真の身体は大きく揺れる。そのまま明日真が床に倒れると、身体を起こした男のフードが捲れて、男の顔面が顕になった。
ㅤ明日真が手に持っていたナイフが胸に突き刺さっているのに、血の一滴すら流さない男が、蛇が、恍惚に微笑んでいる。綺麗に揃えられた白髪も、蛇の目のような瞳孔を持つ赤眼も、舌を突き出した蛇の形をしている金色のピアスも、全てが浮世離れした美しさを放っていた。
ㅤ白蛇のような男は自身の胸からナイフを抜き取ると、差し伸べるように明日真に手渡した。
『──貴方の夢は叶います。強引に、純真に、至極真っ当に』
化け物みたいに笑う男だ。
けど、普通の人からしたら、兄弟のために今から人を殺そうとしている僕も、化け物と大差ないんだろうな。
最後に一滴だけ、小さな涙が零れた。
────。
──。
「──……」
ㅤ追想を追え、明日真は周囲を囲む光景を見渡した。
ㅤシアター内の全ての観客席が子供で埋まっており、自分のように席から立っている人は誰もいない。みんな眠ったように瞼を閉じていて、死んだように動かなかった。
──このまま全員死ねばいいのに。
ㅤ今頃コイツらは、こっちの気も知らないで幸せな映画を観ているんだろうな。そう考えると、嫉妬が収まらなかった。つい噛んでしまった唇に血が滲んでしまいそうな程、とうの昔に理性は枷から外れていた。
ㅤブツっと音がして、背後のスクリーンが点滅する。
ㅤ無表情のまま振り返れば、管理人であるトイと、副管理人である蛇のような男が映っていた。男の手には何枚ものチケットが握られており、トイはそれを奪い返そうと焦っている。
「蛇、何をしている?まだ上映中だ!」
「管理人様、ご到着何よりです。ですが少々遅すぎましたね」
ㅤ咎めるように叫ぶトイに、男は挨拶代わりの微笑みを返す。そして、
「なっ──!?」
ㅤ男のマントの中から顔を出した無数の白蛇が、トイの身体を縛るように巻きついた。瞬く間に身動きが取れなくなったトイが男を睨むも、男は飄々と笑っている。
「今面白いところなんですよ。邪魔立てはおやめ下さい」
ㅤ男と目が合えば、応援の意なのか軽いウインクを飛ばされた。明日真が嫌悪を示すように眉間に皺を寄せるも、男は何が嬉しいのか頬を赤らめてきゃいきゃいと笑っている。
ㅤ気を取り直して、明日真は目の前の椅子に座る少女に目を向けた。黒いセーラー服に、見栄えしない髪色のボブカット。在り来りでどこにでもいそうな容貌だし、胸も大きい訳じゃない。強いて挙げるなら、顔の形が整っているくらいしか長所が無いように思えた。
ㅤこんな女に、兄貴は──。
ㅤ明日真は映画の中で受け取ったものと全く同じナイフを手に固く握り締め、決意を顕にする。
「──やめろ!そんなことしても何も変わらない!!」
ㅤスクリーンに映るだけで何も出来ない外野のくせに、騒がしい。何も変わらないって言うなら、何か変えてくれよ。
「僕は……同じ映画を観ていたいんだ。それ以外は、観たくない」
「──
ㅤああ、やっぱり、お前はスズカなんだな。
ㅤ兄貴に嘘をついたんだ。
ㅤ死ね。
ㅤ瞼を閉じて、一思いに突き刺した。
ㅤ何かに突き刺さる感覚があって、ほんの一瞬だけ、達成感に満たされた。自分は兄のために出来ることを成し遂げたんだと、嬉しさすら込み上げてくるようだった。
──だけど、一瞬で『異変』に気付いたから、その感情は潰れて消えた。
「……、……?」
ㅤ至近距離で刺したはずだ。深く突き刺した感覚もあった。
ㅤなのに、返り血を浴びた感覚が無い。
ㅤ浴びたとしても、たった数滴が手に付着する感覚があっただけだ。胸を刺せば大量の返り血が吹き出すはずなのに、そんなことって有り得るのか?
なんで?
なんで?
なんで?
わからない。
仕留め損ねたのか?
ㅤ恐る恐る薄目を開けて、目の前に広がる惨状を目にする。どんなにグロテスクでも怯まない覚悟はあった。
「お前は……」
──明日真が手にしたナイフは、目の前の少年が持つ林檎に突き刺さっていた。
ㅤ少年はにやりと悪戯っぽく笑い、ナイフごと林檎を奪う。
ㅤすると、林檎になんて目もくれずに遠い座席へとそれを放り投げた。声を失ったまま少女の方を見れば、少年が林檎を身代わりにさせたおかげで、衣服に果汁が数滴滴るだけで済んでいる。赤い血液なんてどこにも流れていない。
ㅤ湊明日真は、人殺しになれなかった。
「──よう。救世主サマのお目覚めにはまだもう少しかかるみたいだから、先にお兄ちゃんの登場だ」
ㅤ上映前に明日真を弱虫呼ばわりしてきた少年──椎名未希が、スクリーンに向かってがっと口を開けたまま笑う。極悪党にも英傑のようにも見えるその登場に、明日真は腰を抜かして後ろ向きに倒れ込んだ。
「あーあ、もう少しだったのに……」
ㅤ残念がるような声がしてスクリーンを見れば、副管理人を名乗る男がしくしくとわざとらしく嘘泣きしている。一方で、画面越しに対峙する未希は、怯えのひとつすらその眼に映していなかった。
「まあ、いいでしょう。湊明日真くん、スクリーンに注目して下さい。貴方は私との約束を破った」
「今すぐそのチケットを僕に渡せ。……これは管理人命令だ」
「あはは。私、蛇なので都合の悪い命令は聞こえません」
ㅤ隣からかかるトイの警告に、男は聞く耳ひとつ持たない。この期に及んでも尚、ただ楽しげに笑みを携えたその男は、
「ここにあるのは、皆様の夢と希望です。これがないと生きていけない怠惰な皆様に報いを、愚か者に復讐を!」
ㅤ今晩の上映に関わる全ての観客の入場チケットを手に持った。今『映画』を観ている子供の夢を、希望を、全て破壊しようとしている。
──でも、なんでだろう。
ㅤ明日真の心に渦巻いていた先程までの恐怖は、未希の登場により消失していた。隣にいるだけで無条件で安心させてくれる彼の立ち振る舞いはどこか兄の面影があって、涙が溢れそうになる。
ㅤ未希は明日真の方を向かずに、ただスクリーンだけを見据えたまま指を鳴らす。すると、瞬く間に彼の容貌が変わっていった。
「──!」
ㅤベージュブラウンの髪色が淡いブルーグレーに変わり、何処から現れたのか彼の首元を白のマントが覆う。返り血を浴びたかのように薄汚れたマントだったけど、今の明日真には、それすらも格好良く見えた。
「オレは未希──改め、チルドレンシアターの副管理人だ。ついでに、そこに座ってる涼夏のお兄ちゃん!」
ㅤよく見れば涼夏のものに似ている目元を、未希は狐が笑うように細めて微笑む。一瞬此方に振り返ってくれたその英傑は、スクリーンの逆光に照らされていた。
「椅子の裏に隠れて伏せてろ、弱虫。泣くなよ」
ㅤ
『泣くなよ、お前はお兄ちゃんなんだから』
「……兄貴ぃ…………」
ㅤ安心しきった涙が流れそうになるのを、明日真は必死に両手で拭った。ここで泣いたらいけない気がして、鼻を啜りながら堪えきった。
ㅤスクリーンに映る毒蛇と、シアターに立つ本当の副管理人の視線が交わった。その光景は映画のラストシーン手前を彩るワンシーンのように華々しい緊張感を与えて、明日真の瞳に鮮明に映る。
「──大人の邪魔をした罰を与えましょう。死ね」
「──そろそろ、エンドロールを流させてもらおうか!」
蛇が嗤えば、全てのチケットは破り捨てられる。
視界は黒に染まり、足元はぐらりと揺れる。
ばりばりとガラスが割れるような音がして、誰も彼もが意識を失う。
でも、意識を失う直前に、副管理人の笑みが見えたから。
真人に似ている少年が笑ってくれたから。
明日真は未来を信じられた。
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