第4話 そういえば俺、誰かと付き合ったこと無かったわ


「……とだから、各自、保護者に授業参観があることを伝えておくように」


「「はーい」」


 さて、屋上で春川達の企みを聞いてから数時間。

 最終的に春川の事をフると決めた俺だが、その結果までの過程を全く考えていなかった。

 そこで気づいたのが、俺は誰とも付き合ったことがない、ということである。

 おかげで、下校直前の今の今までずっとスマホを使う羽目になり、検索履歴には『恋人とのつきあい方』や『初めてのデート』など、事情を知っている遥輝にからかわれること間違いなしの恥ずかしいワードが並んでいる。

 だが、最も怖いのは美久に見つかることである。ストーカーから助けて以来、俺に対する親愛度がメーターを振り切っており、ヤンデレ気味でなのである。俺が美久以外の女子の写真でも見て二ヤついていたらどんな目に遭うか予想できない。

 それでも俺の事を慕ってくれる美久は可愛いが。(ニヤケ)


「あのさ」


「ん?」


「ちょっと時間、良いかな?」


 ついにこの時が来たようである。

 結局、彼女いない歴=年齢の俺ではいくら調べてもよく分からなかった。

 私服に関しても、休日は美久と一緒に家でゴロゴロしていることがほとんどなため、俺の服のセンスはおそらく壊滅的だろう。

 









「それで、用事は何?」


「単刀直入にいうけど、私と付き合ってくれない?」


「はあ」


 さっきから俺たちの他に人の気配を感じる。おそらくあの春川の女子友達の瀬川佳歩だろう。

 動画でもとってるのだろう。


「もう一度言うよ?私と付き合ってくれない?」


「因みに、その理由をお聞きしても?」


「えっ…えっと、貴方がす、き…だから……です……」


「どこが?」


「………あ、頭が良いところ、です…」


「ふーん」


 他の女子友達と違っておどおどしてるな。何か違和感がする。何でアイツらと一緒にいるんだ?


「……………」


「……………」


「……あ、あの、返事は……」


「あ、すまん。考え事してた」


「告白されてる最中に考え事なんて可笑しいんじゃない?」


「失礼な。告白の返事を真剣に考えてたんだよ」


 別の事を考えていたのである。


「あ、そう……」


「う~ん………よし、じゃあ、付き合おうか」


「軽っ!何か、思ってたより話しやすい人だね」


「そうか?」


 もはや、告白どうこうの雰囲気ではなかった。やっぱりコイツ、何で瀬川なんかとつるんでるんだ?


「じゃあ、お互いの呼び方決めるか。俺は春川の事を陽菜と呼ぶから、春川は俺の事を拓人と呼んでくれ」


「な、なんか手慣れてない?」


「まさか。誰かと付き合う事はこれが初めてだ」


「そ、そうなんだ……」


「これからよろしく」


「こちらこそ、よろしく……」


 初めての演技にしては、上手い方じゃないか?

 春川には悪いが、もう覚悟は決めているから、今更後ろへは引かない。後戻りは、しない。

 同じ過ちを起こさせないためにも。







「そろそろ帰ろうか、陽菜」


「は、はい!」


 


ガチャンッ


二人が帰った後。


「ああもう!! 何で陽菜はあんなおどおどしてるのよ!ボッチも何であんな淡々と告白をOKすんのよ!でも良いわ、この動画を編集しまくって、全校に流してやるわ!」


「そんなのして何が楽しいのかな~瀬川さん」


 振り替えれば、そこに立っていたのは、自分が先ほど脅しの材料として動画に映っていた男子の友人で、自分よりもカーストの上位にいる男子。

 すなわち、


「ッ!」


「人の友達を脅そうとするのはちょっと看過出来ないな~」


「あ、あれどうしたのかな?遥輝くん?」


「一部始終見てたから、ウソつかなくていいよ。その動画を目の前でしっかり消してくれればいいから。ねっ?」


 どうやら腹立たしいことに、全て見られてたらしい。


「チッ、何でそんな事しなきゃいけないの?」


「いいから」


「だからっ!」


「いいから、早く、消・し・て・ね?」


 同じことしか言ってこない相手に言い返そうとすると、普段の自由奔放な彼の様子からは想像出来ない程、その顔は不気味な感情しか宿していなかった。

 それを見て、何故かはハッキリとは分からないが、彼に従うべきだと悟った。

 言われたとおり、彼の目の前で動画を削除した。


「もうしないでね~あと、この事は、

春川さんにも内緒ね。今、チャンスかもしれないんだからさ」


 何の、とは聞かなかった。聞いたところで、決して彼は教えはしないと確信していたからだ。

 彼は、一瞬、憂いを帯びた顔を出してはすぐに普段の明るい顔に戻った。しかし、その顔も何故か不気味に見える。


「じゃあね~」


 しばらくの間、そこを動けなかった。







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 いや~、少しずつ始まってきましたね!

 少しだけ闇の遥輝くんも出てきて、シリアス感が出てしまったかも知れませんが、この後はしばらくはそういうのは少なめだと思います。


 では、謝辞を。

 本作品をフォローしてくださり、また、呼んでくださり、ありがとうございます。

 特に、以前、感想が欲しいと述べた後に、感想を書いて下さった方、ありがとうございます!とても嬉しかったです!

 pvも三桁を突破しました!わずか三、四日でここまで読んで下さった方がおり、感無量です!

 これからもよろしくお願いします!

 感想、おすすめ評価(星)、アドバイス、待ってます!

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