第3話 ウソ告白って人の気持ちもてあそんでるよな


「じゃあ、最後のこの問題誰か黒板の前に来て解いてみろ」


「はい」


「またお前か桜庭」


(またガリ勉ボッチの桜庭かよ)


(頭が良いアピールすんなよ)


(ウザいんだけど)


 とまあ、ほとんどの授業で毎回手を挙げてればこんな感じの反応がある。

 不思議に思うのだが、テストの結果が貼り出される前まではこんな反応は無かったというのに、何故1位が俺だと分かった瞬間にこんな反感を買うんだ?

 何も高校に限った話ではなく、中学の時も、小学校の時も同じだった。基本的に、人はいつまで経っても本質が変わらないものである。

 俺は、中学の時にそれに気づいてから、余計なことは何も喋らないようにしているが、周りの反応は大して変わらなかった。

 自分から話しても話さなくても反応が同じなら、労力がより少ない後者の方が得である。

 しかし、周りから疎まれてきた俺には、三人だけ味方がいた。その内二人は幼馴染みで、片方が遥輝である。

 アイツは、俺の周りからの評価がどんなに悪かろうと、同じ付き合いをしてくれた。

 もう片方の幼馴染みは、中学の最後に俺たちに何も伝えず県外に引っ越していった。

 最後の一人だが、それは俺の妹である。名前は桜庭美久(さくらばみく)中学三年で、今微妙な時期だが、兄である俺のことは慕ってくれている。兄として、とても可愛い妹だ。

 今でも、帰宅する時は俺が美久の中学校まで行き、一緒に帰っている。たまに手も繋いでいる。

 けけけ、決して俺が可愛い妹と一緒に帰りたい訳ではない!(早口)

 コホン、少し本音が混じったが、美久は以前、三歳年上の男性からストーカー行為を受けたことがあり、俺や遥輝を除く男性に対して恐怖心を抱くようになってしまった。

 手を握るのも、美久の精神を通常の状態に保つためである。

 ストーカー行為をする可能性のある周りの男子に見せつけることで、ある程度の抑止をするためでもある。


「はい、出来ました」


「正解だ。過程も丁寧で、分かりやすいな」


「ありがとうございます。」


「皆も見習うように」


「「………はい」」


 俺たちの担任は、角川京香という女性の教師で、ざっくばらんな性格をしている。

 配布されたプリントの説明の時も、


「えーと、これどういうシステムだっけな。忘れたな。まあ、いいか」


みたいな感じで、適当に流すタイプである。年齢はまだ二十代の半ば辺りだ。


「おい、凄いな。また正解かよ。しかもお前、ノートに解いてないから頭の中でやったのかよ」


「お前もだろ太陽光電池付きイケメン」


「まあな。」


 因みに、俺の席は窓側から二列目の前から三番目である。遥輝は俺の左斜め後ろの席である。

 遥輝が隣の席の女子と楽しげに話しているのに対して、


「隣の席になる桜庭拓人です。よろしく」


「………よろしくお願いします」


席替えの時に挨拶をしてこれである。どう考えても温度差が激しい。俺ももう少し遥輝の「よろしくな!!」の様にラフな感じでしたほうがいいのだろかうか。でも、俺は癖で、そんな話し方をしたくてもしたときに違和感しかしないので、諦めている。

 何せ、中学の時に一度してみたら、


「キモいよ」


と、ただ一言、顔も見られずに言われた。ポーカーフェイスを気取っていた俺でも一回で精神のHPバーが残り10%を切って赤く点滅し始めた。


「……今日はここまでだ。挨拶」


「起立。ありがとうございました。」


「「ありがとうございました~」」


 授業が終われば、毎回ものの一分足らずでクラスから人がいなくなる。今は昼食の時間だから、なおさらだ。

 既におおよそのグループが出来上がっている以上、教室に残るのは、俺と遥輝の二人と、いつかの図書委員の女子である。

 挨拶をした瞬間に本を読み始めるので、その時の動きだけはとても俊敏だ。


「静ちゃんは何の本読んでんのかな~」


 誘われるようにして図書委員女子こと、川端静の席へ歩いていく遥輝。


「さて、俺は屋上で購買のパンでも食うか」











 

「うん、やっぱり購買で売ってるパンってあんまし美味くないな。」


 こんな美味いのか不味いのか微妙なパンが何故、二次元の世界ではあんなにも人気なのか皆目検討がつかない。

 俺がこのパンを買った時は、二つ三つほどしか減っていなかった。


「よし、食べ終わった。教室に戻るか」


その時だった。


「ねえねえ、あのさ」


「な~に、佳歩?」


 それは、同じクラスのこれまた学年カース上位層に位置する春川陽菜と、その女子友達の瀬川佳歩だった。


「あのガリ勉ボッチの桜庭たくま?だっけ?そいつにさウソ告白してさ、キョドるとこ動画で残そうよ」


「たくま?」じゃねえよ、拓人だよ!


「いいね!弱み握ってパシりにしよ!ところでさ、誰がアイツにウソ告白すんの?」


「ん」


「私!?」


「あ~れ~?もしかして覚えてないのかな?前の王様ゲームの罰ゲーム?」


「ウソでしょ!?」


「マ~ジ」


「え~」


「そういうことだから、今日から二日以内にアイツにウソ告白してね」


「二日!?」


「うん、二日。だって長引かせると、忘れちゃいそうじゃん」


「う~………もう、分かった!するよ!!すれば良いんでしょ!」


「じゃあ、いつする?」


「今日の放課後!」


「思いきったね~」


「演技美味く出来るか分からないけど、上手く撮ってね!あ、私は写さないで!」


「分かってるよ」


キーンコーンカーンコーン………


「チャイム鳴ったから教室に戻るよ」


「はーい」









「なあ遥輝、俺、女子から告白される!」


「マジで!?うぇッ、ゴホッ」


「落ち着いて食え。ていうか食うの遅すぎ」


「ちょっと御手洗いでな、自分と格闘してた」


「聞きたくなかったわ」


「それで?その様子だと誰からか分かってるみたいだな」


「相手は春川だ」


「良かったな!可愛い女の子で!」


「いや」


「ん?」


「ただの告白じゃなく、ウソ告白だ」


「マジかよ……」


「ああ。でも俺はわざとそれにひっかかるよ」


「そりゃまたなぜだ?」


「ウソ告白なんて、人の気持ちをもてあそんでるだろ。された奴の気持ちも考えないでそれを嘲笑うなんてもっての他だ」


「そうだな」


「だから俺は、わざとその告白をOKして、ある程度噂が広まったら、他の生徒の目の前で振る」


「苛烈だな」


「まあな。それで俺がどう批判されるかは問題じゃない。アイツらが懲りるには丁度良いだろ」


「…………お前はそれで良いんだな」


「ああ。お前はあまり関わるなよ。お前まで被害喰らうからな」


「………ああ、分かった」


 さて、覚悟は決まってる。

 いつだって、悪役になるのは俺だけでいい。悪を滅するのに悪が必要なら、俺がそれになればいい。

 見てろよ、春川、瀬川。













━━━━━━━━━━━━━━━━━

 いや~、拓人くん、盛大にフラグ立ててますね。

 つい先日、本作でおすすめが初めてされました!

 フォローされるのも、おすすめされるのも、とても本作を書いていく良いモチベーションになりますので、これからもどうぞ、本作をお楽しみください。

 感想も出来るだけ多く頂けたら幸いです。


P.S

 私は、『薫る花は凛と咲く』という漫画が好きです。もう、神作!

 どうぞ、読んでみて下さい。

 

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