第2話 頭が良いボッチって、周りから疎まれるよな
「ねえねえ、テストの結果見に行こうよ。」
「そだね、行こう🎵」
「そういえばなんだけどさ、遥輝くんって噂によると頭良いんだって」
「マジ?」
「マジマジ」
「あのルックスの良さで運動神経抜群で勉強も出来るなんてヤバくない?」
「ヤバいヤバい」
「だよね~」
この高校に入学して最初の学期末テストが終わり、一週間がたとうとしていた。
この学校では、テストの成績上位者10人を五教科と全教科(五教科に加えて実技教科)のそれぞれ各学年の階段をのぼって直ぐのギャラリーに貼り出すらしい。
このクラスに限らず、多くの生徒が結果を見に貼り場所へ集まっていく。
たまにどこかの塾が同じようなことをして、載らなかった人の士気をあげようとしているというのを聞いたことがある。多分おおよその目的は同じだろう。
「拓人!今度こそどっちが点数が高いか勝負だ!負けた方は10円ガムおごれよ!」
「いや負けた方のペナルティ軽すぎね?」
「良いんだよ、あんまり高くすると俺が困るから。」
「お前もう負けるつもりじゃん」
「フッ、俺の今までのお前に対する勝率は……聞いて驚け!マイナス100パーセントだ!」
「知ってるし、普通に0って言えよ」
とまあ、オールタイムでハイテンションの遥輝と一緒に結果が発表されている所まで行く。
「では、運命の………結果はっぴょ~う!!」
「あ、俺の勝ちだ。じゃあ、ガムおごれよ。」
「ああ~!また負けた~~!!俺の10円が……」
まあ、俺の勝ちはもう決まったようなものだから、あまり不安はなかった。
遥輝の反応も、この数年で見慣れたものになっている。
「ねえ……五教科と全教科の1位の名前見て……」
「『桜庭拓人』って、うちのクラスの窓際にいる、あのボッチだよね」
「うん………」
そう、何を隠そう、どちらのテストも1位はこの俺である。
自慢じゃないが、中学の時、外部テストで県トップになったこともある。
俺の横で悔しがっているいつでもハイテンションな遥輝も県トップ20には基本的に入っている。
頭が良いイケメンって周りからしたら、羨ましい以外の何ものでもない。
「といっても、お前と俺、20点は点差ないだろ」
「は~?お前、五教科の方は満点で全教科で7点しか落としてねえじゃねぇかよ」
「それを言うなら、お前五教科は俺と8点差で、全教科は10点差だろ。見ろ、お前の下の順位の点数を。20点以上差があるだろ。十分お前も凄いよ。」
「そうだな、負けたのは悔しいがこれ以上は他の奴のプライドを傷つけるか。次は負けないぞ」
「ああ、こっちもまた勝ってやる」
タッタッタッ……
「遥輝くん!」
「うん?あ、同じクラスの子か」
遥輝に話しかけてきた女子は、確か、図書委員をしていた……気がする。
雰囲気は少し、大人しい感じで、遥輝みたいな素直な男子は守りたくなるような女子だ。
「うん!……あのさ、遥輝くんって運動出来るだけじゃなく、頭も良いんだね!」
「ありがとう。でもな、コイツもかなり運動できるぞ。何せ、中学の時、コイツ野球部でさ、ホームラン何本も公式戦でバンバン打ってやがんの。勉強に関しても俺は勝てたこと無いし。それにコイツ、生徒会ちょ……」
「遥輝」
「あ、すまんすまん」
「?」
「あ、ごめんね。何でもないよ。また話そうね」
「は、はい!」
タッタッタッ………
突然来た女子はまたどこかに走り去っていった。
「なあなあ、何か今の女子俺に好意なかったか?」
「あったな」
「だよな!!でもなんか、庇護欲そそられないか?」
「言ってる事は少し気持ち悪いが、言いたいことは分かる。まあ、悪そうな女子ではないと思うから、付き合うことになっても、問題はないと思うぞ」
「そうか、じゃあ、仲良くして問題は無いな」
「あんまり俺の言うことをあてにするなよ」
「何を言うか、俺は何回お前に助けられたと思ってんだ。」
「いつだよ」
「言うわけないだろ」
「何でだよ」
「だって、そんな事男子同士で話すの少し恥ずかしいじゃんか」
「それもそうか」
「それでさ、拓人はどう思う?」
「ん~、俺は………」
テストの結果発表から数週間、特に変わらない日々が続き、夏休みも近づいてきた。
すこしだけ変わった事がある。それは、
「頭が良いだけのボッチが何で遥輝くんと仲良いのよ」
「マジでそれ」
「しかも、テストで1位だったのをいいことに、いつもポーカーフェイスで周りをバカにして」
そう、俺を疎ましく思う生徒が出て来たのだ。中学の時も同じようなことを面と向かって言われたことがあったが、その時は遥輝が鎮めてくれたが。
疎ましく思われるのには慣れている。
でも、既に遥輝はそんな生徒には俺の風評被害を間違えていると必死で触れ回っているのを俺は知っている。
でも、俺は少し思う。何故イケメンは同じような環境に陥っても、そんな事を言われる事はほぼない。
所詮は外面でものを考える奴が多いのだ。どこに言ってもそれは変わらない。
遥輝がそんな奴でないことを知っているから、俺と遥輝は、親友という関係が成り立っている。
そもそも、遥輝みたいな素直な奴はそんな事は出来ないのだ。
単純だから。
「何か失礼なこと考えなかったか」
「いや」
全く、こういうときだけ勘が鋭い奴だ。
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