ナツ視点 1 シンと出会って 2

 次のデートの時、私が電車から降りるとすぐに手をつないでくれた。


「ナツさん。あのね、ナツさんって言うのもええと思うけどナツって呼びたいと思うんだけどどうやろか?」 


「もちろんいいですよ」


「ほんまに!ナツって呼ぶよ?」 


「ハイ。いいですよ」


「ありがとう」


「シンさんは?」


「俺はシンしかないな」


「じゃあシンにするよ」


「うん」


「ナツ」


「シン、へへへ」


「よろしく」


「うん。こちらこそ」


この日から彼は運転中でも車を降りても私の手を握るようになった。


あまり強く握りかえしたらあかんでと言われながら。


 私も彼も一緒に歩くときは自然とお互いの手を探していたし、

彼の腕に自分の腕を絡めるのが好きだった。


いつもどこかつながっている事で安心していた。


 そうすることがとてもうれしかった。


そのうち彼は手を動かすよって言わなくなった。


 私も以前よりはビクッてする反応が鈍くなってきている。


手を動かすよって言わなくなったのは私を驚かせようとしていたみたいだった。


 手をつないでいるときも繋いでいないときも彼はわざと右腕を動かした。


その時も私はビクッとして彼の方を見ると頭をかく真似をしたり鼻を触ったり。


 「なあなあ」って言うから彼の方を見たら指がほっぺに刺さって、


「もう!」って私は怒った。 


関西の人は話しかけるときに(なあなあ)とか、(なーなー)とか枕詞が付く。


 私たちには自然な言葉だ。


あとはちょっと人差し指貸してと彼に指をつかまれた。


 そのあと彼は「でぇへへへ」っといやらしい笑い声をだして、なんだろうと思ったら彼の鼻の穴に入れられそうになった。


 私はそのとき「イヤーッ」と言いながら逃れようとするのだけれどシンは「ええやないかええやないか」と、いやらしいおじさん風の物まねをしながら言うのでなんだか面白いコントみたいになっていた。


彼は結構いたずら好きだった。


 そういうことが続くとビクッとする回数が明らかに減って行った。


そしていつの間にか消えていた。


 でもビクッてしてたのは今から思えば何だったんだろう。


やはり人が怖かったのだろうか。


 私は中学を卒業すると全寮制の看護の高校に入学した。


 小学生のころからの友達が高校で離れ離れになり、見知らぬ同級生の中で結構おどおどしていた。


 慣れてくると大丈夫なんだけど最初は怖かったのかなと思う。


今の職場でも最初は結構おどおどしていたと思う。


 そんな私が彼のところに一人でやってきてお付き合いを始めた。


私とシンとの物語が始まった気がする。


 彼とのデートは彼の車で移動することが多かった。


彼は私のためにゴリラのぬいぐるみを買ってくれていた。


 私は彼の車に乗るたびにそれを抱きしめて助手席に座っていた。


 私へのプレゼントだと思っていたのだけれど彼が田舎に帰ったとき

親戚の女の子が欲しがったのであげたと聞いて私は少しがっかりしたことを覚えている。


 彼との電話の中でセールスの電話が結構あるという話があった。


もちろん私のところにも時々かかって来ていた。


 どこで調べるのだろうと不思議だった。


 一度行ってみようかという時があってシンに相談すると、どんないい話でも絶対に行ってはダメだと言われた。


 断るときは彼に話したら叱られたのでとか俺のせいにしたらいいよと。


次に電話があった時に断ったのだが少し惜しい気もしていた。


 相手の人もいいお話なのにすごく残念ですと言っていた。


でも彼の言っていることが正しいと思うことにした。


 彼にも彼の先輩にもそういう電話が時々かかってくるらしい。


 基本的にはあなたが選ばれましたとか、プレゼントが当選しましたとかで

つきましてはお会いしてお話させていただきたいという。 


 でものこのこ出ていくと結局は英会話のセールスであるとか普段必要のない高額な商品を今ならこれが特別価格であなたにお譲りできるとかなんとか。


何か買わされるらしい。それが目的。


 相手はそれを売るプロなのだから、いらないものでも買わされてしまう。


しかも高額なローンとかを勧められたりする。


 あとから人が出てくることもある。


そうなるといらないとは言いづらくなるし逃げられなくなる。


 そして押し切られてしまう事も多い。だから最初から会わない方がいい。


話もできるだけ早く切り上げたほうがいい。


 電話をかけてきた相手も断られることがある程度前提としてあるから断ることは全然相手に悪い事ではない。


 話しをするだけ無駄だし絶対に必要のないものだからって言われた。


でもそれだけじゃなくてナンパされることもあるらしい。


 金づるとしか思っていない男もいるから付き合うことで体を許し、貯金から何からいろんなものを買わせた後でハイさよならとかもあると聞いた。


 着物を売るのに付き合って売りつけるというデート商法と呼ばれるやり方もあるそうだ。


 結構いろんな方法や出来事があるのだなと思った。


 彼の先輩の場合は電話をかけてくるのが女性が多かったらしいのだけれどわざわざ会いに行ってそのセールスの人をナンパしていたらしい。 


男性には女性を。女性には男性をというパターン。


 しかも何度か成功したとのこと。


本当なのかどうかわからないがへぇーって話を聞いていた。


 シンはそういうことをしてはいけませんよ!


会う予定の無い休みの日は彼とのことを色々と考えていた。


 よくニヤニヤしていたと思う。ある日夢で見たこと。


二人で駅から出たときシンの姿が見えなくなった。


 横断歩道の人混みの中で私は泣き出しそうになっていたけれど

シンが見つけてくれて私にそっと口づけした。「大丈夫だよ」って。 


 目が覚めるとシンはいなかったけれど私はうれしかったことを覚えている。


まだ一度もキスをしていないときの夢。


 現実の世界でも私が迷ったらキスして助けてくれるのかな。


 夜、彼から電話があって同期の女の子、上川が呼びに来た時、「あんたなんや、

ニヤニヤして気持ち悪いな」って言われて慌てて取り繕ったことを思い出した。


 私は準看護婦で正看護婦になりたいという夢を持っている。


同じように働いているのにお給料が全然違う。


 当然正看護婦の資格を取りたいと思っていた。


彼にもその夢の話をしたことがある。 


 そのために学校に通う必要があることも。


 彼とは何度か会ってデートを重ねて付き合うことになったものの、

まだキスすらしたことが無かったのに彼と一緒にいたいと思い始めた。


 彼の街にある学校に通うつもりで看護学校を受験しようと思った。


彼の住む街で彼とお付き合いしながら学校に通う。


 そして彼との愛を育むって当時の私は本気で思っていた。


かなり大胆な計画だ。


 シンに受験の日を伝えて泊る所を探してもらえるようにお願いした。


 今まで短い間の付き合いだけど彼と一緒にいると守ってくれているという安心感があった。


 私は精神的に少し弱いというか人に対しておびえる部分があったので彼と一緒に過ごすことでそういった弱い部分が少しずつ消えていったと思う。


 彼は頼ってもいい人だった。


その受験の前日にシンの住む街に着いた私は指示された公園で彼を待っていた。


 シンは仕事を終えてから迎えに来てくれる。


早く来ないかなと待っていると彼が私を見つけてこちらに早足に歩いてきた。


 うれしくて手を振った。


彼は時間に正確だ。私も同じなのでよかった。


 私はホッとして彼のもとに駆け寄った。なんだかすごく安心している。


シンと手をつないだ。そして空いた手で旅行鞄を持ってくれた。 


 荷物を一旦車に置いた後、駐車場につながる地下街で夕ご飯を食べてドライブに出かけた。


 特に目的地を決めている訳でもなくただ車であちらこちらを気の向くままに

走る感じだ。


 市内の中心地は大きな駅のある区域と、繁華街近くの大きな公園のある区域のどちらになるのかはわからないが彼はその周辺をぐるぐる周った。 


 いろんなお店がある。 いろんな車が走っている。 いろんな人が行きかう。


彼の車の助手席から街の風景を眺めていた。


 彼はよく話すときもあるし何か考え事をしているのか静かな時もある。


無言で二人でいることも苦痛ではないことに気が付いていた。


 黙っていても二人でいることでうれしい気持ちが維持されている。


お付き合いをすることになったもののまだシンからはキスを求められていない。 


 もしかしたらすごく奥手なのかしら。


そういう私も今の今まで経験もないし奥手であることは間違いないのだけれど。


でもいい。こういうのは焦らずに自然にそんな時が来ると思う。


 シンとゆっくりと先に進めればいいと思っている。


ビルとビルの間を走り抜けるときにふと思った。


 シンの住む街も都会と呼ばれるところなので職場の人や友達と繁華街に繰り出すことはあるのだろう。


 そこでいろんな人と出会って別れて。


女の子をナンパしたりもするのかな。


それは少し嫉妬してしまうなと思った。


私だけを見てね。


シンの横顔を見ながらそう思った。


彼の車の音楽はほぼ浜田省吾さんだ。


彼が高校生の時に知ったロックシンガーとの事。


ハードな曲からバラードまでこの人の作る歌はすごいと言っていた。


 特にお気に入りなのがMONEYという曲でよくこんな詩が書けるのだなとびっくりしたことを話していた。


 それ以外にも私が聞いていても切なくなる恋の歌や愛の歌がある。


シンは結構ロマンチックな人なのかもしれないと思った。


 なんだかずっと一緒に居たい、今日会った瞬間からそんな気持ちになっている。


ずっとシンと手を繋いでいる。


 つかの間のドライブの後、彼が予約してくれた旅館の前に車を停めた。


 出会ってからそんなに時間は経っていないけど彼のやさしさと私に対する思いやりが温かい気持ちにさせてくれる。


 このまま一緒にいたいのにって思ったら切ない気持ちになっていた。


車が停められ少し時間が流れた。


 でも私は降りることができなかった。


シンと見つめあっていたから。


 視線を外すことができなかった。


でも私は目を閉じた。


シンの顔が近づいてくるのがわかる。


ほんの少しの時間の後、シンの唇が私の唇に触れた。


 ファーストキスだった。


彼の顔が離れたあと私たちは見つめ合った。


 シンの事が好き。私は微笑んだ。恥ずかしかった。


 車から降りて荷物をおろすと私は助手席の窓からシンに向かって

「シン、ありがとう。気を付けて帰ってね」と声をかけた。


「明日がんばって」 彼はそう言って寮に帰って行った。


 私は旅館の部屋に入ると妄想タイムに突入していた。


シンとキスした。うふふ。


 このあとはどんな展開になるのだろう。


シンに抱きしめられている姿を想像した。 


 その時の受験は正直あまり勉強が出来ていなくて合格は厳しいと思っていた。


それにそれどころではない。


 恋が加速し始めている。


翌日、受験が終わるといったん旅館に帰った。


 荷物を保管してくれていたのと事情を話すと迎えに来るまでいてもいいですよと言ってくれた。


夕方シンが迎えに来てくれた。


シンの笑顔がうれしい。そして私も自然と笑顔になってしまう。


そして「お疲れさま」と言ってくれた。


車に乗り込み繁華街近くの駐車場に車を停めた。


「新幹線に乗るまでにまだ時間があるね。ご飯一緒に食べようか」「うん」


手をつないで歩きながら食事ができるところを探した。


ご飯を食べたあと少し散歩した。


彼と手をつないで歩いた。ずっと一緒に居たい。


駅に送ってもらった時また車の中でキスをした。


唇が離れたあと私たちは微笑み合った。


そしてもう一度。 


今度は肩を抱き寄せられて上半身だけ抱きあうような形になった。


離れた後、私も彼もなんだか照れていた。


二人で手をつないで駅のホームに立った。


もじもじしながら私は彼を見つめて彼も私を見つめて。


別れが切なかった。私は電車に乗り込んだ。


「ナツ、ずっと一緒に居たいね」彼はそういうと電車の扉から離れた。 


「遅くなってもいいから着いたら電話して」


「うん」


 私は電車の窓から彼に手を振った。


少しうるっとしてしまった。 さみしくなったから。




 ある日の休日、朝起きると私はシンに会いたくなった。


電話をかけてシンを呼び出してもらった。


かなり長い時間待たされたがシンが電話に出てくれた。


「シン、ハァハァ言ってる」


「ごめん近くの公園で遊んでたんや。ナツからの電話って聞いて走ってきた。ハァハァ。どうしたの?」


「今日の予定は?」


「今日は休みやで」


「だったら今から行く」って言ったら彼はびっくりしていた。


「ほんとに?」


「うん。シンに会いたいの」


「うれしい。じゃあ駅に迎えに行くよ」って言ってくれた。


 私は意外と思い立った時の準備は早い。お化粧をして髪を整えて


服を着て今日はタクシーに飛び乗った。


「駅までお願いします。 急いでください」とお願いした。


約二時間半後に彼の住む街の駅のホームに降り立った。


 彼がホームで待っていてくれた。


シンの姿を見つけると顔がほころんでしまう。


 もううれしい。


シンと手をつなぎ車に向かった。


そして車に乗り込んだ後


「ねえシン」


「ナツ、どうしたの?」


「会いたかったの」私はそう言った。


「シンが好きなの」そういうと長いキスをした。


「ナツ、今日は急に来るって言われてびっくりした。 でもうれしかったよ」って言ってくれた。


彼は車を走らせた。


彼は友達と遊んでいたけれどごめんと謝って抜け出してきたらしい。


とりあえず彼が抜けだしてきた公園に向かった。


 二人きりが良かったのだけれど彼の友達を置いてきていたので一度行ってみようということになった。


もしこの時までに肉体関係があったならすぐにホテルに入っているのだろうと思う。


 私も結構エッチなことを想像してしまう。


でもただ抱き合っているだけのシーンだ。


 彼らはまだそこで遊んでいた。


そこでシンの友達に紹介された。


 とても明るくてノリがいい人たちだった。以前電話で話した人もいた。


そしてそこで初めて彼とのツーショット写真を撮ってもらったのだ。


 モノクロでどこか懐かしい感じのするフォトグラフィー。


でもそこにいるみんなとそれぞれツーショットを撮った。


 みんなそれぞれに「俺もツーショットが欲しい」と言われて。


「ナツ。良いのかな?」 シンに聞かれたけれど断りようがない。


 私は頷いた。


彼は仕方がないと許可した。


 今でこそスマホでいつでもどこでも撮れるけど、その当時はフイルムカメラしかなくてうまく写っているかどうかは現像してみないとわからなかった。 


写真を見ると彼はにこやかに、私は少し憂い顔になっていた。


 彼以外と撮る時は少しイヤだなと思っていて、そんなに笑っていなくて彼の時だけにっこりという訳にはいかなかった。


本当はうれしかったんだけどみんなに遠慮してしまった。


 後日シンがその写真を見ながら私に話してくれた。


「ナツ、俺の時はくっついている側の肩が反対の肩と平行になっているけど

他の人と写っている写真はくっついている側の肩がすんごい上がってる。

くっつきたくないというのがはっきりわかるな。笑

 ナツは他の人の時は嫌がっているけど俺の時は受け入れてくれてるってはっきりわかるから、なんだかうれしい」と言っていた。


 意識したつもりは無かったけど自然にそうしていた自分に満足した。


 しばらくシンの友人たちと遊んだ後、私たちはまた車に乗ってドライブに出かけた。


 鶴舞公園という大きな公園で二人で散歩した。


シンは割と散歩が好きなようだ。


 少し肌寒い時期だったが歩くことでポカポカしている。


シンと手をつないで歩いているから温かいのかもしれない。


 そのあとシンがたまに来るという大須というところにやってきた。


ここは私の住む神戸で言うと高架下みたいな感じだった。


 いろいろなお店がありいろんなものが売られていた。


 所々に路駐の車があるのだけれどそのうちの一台を通り過ぎようとしたとき

シンが「ゲェ」っと言ったので、「どうしたの?」と聞いたら、「この車、助手席に日本刀を置いてるわ。やばい人なんやろう」と言いながら通り過ぎた。


 シンが私と出会う前に夜中にドライブをしているとちょうどこのあたりで一台のクラウンに絡まれたと言っていた。


その時他の車に絡んでいたのでさっさと抜いていったのが気に入らなかったようだ。


「世の中には本当にわけのわからん奴がおるわ。何がしたいのかさっぱりわからん」


 とりあえず信号が赤になったので車を停めたら、なんとその車が右折車線からシンの車の前まで来たとのこと。


 窓を開けてなんやかんや言っているが何を言っているのかわからんかったと言っていた。相手にしたらアカンかった。


 最後は何とか話が出来たらもうごめんごめんと言って謝ったら去って行ったらしい。  


 この車のナンバーは登録されてないから警察に言うても無駄やと言い残して。


何がしたかったのかさっぱりわからなかったと言っていた。


 私といるときにそんなのと出会ったらシンはどうするのだろう。


一応聞いてみた。 こちらが行動を起こさなければ大丈夫やと思う。


もし絡んできたら逃げる。ナツがいるときに何かあったらイヤやから。


おとなしくしてやり過ごすと言う。 私もそれでいいと思うと答えた。


夕方駅に向かったものの彼に離れたくないと言ってしまった。


「ナツは明日仕事やね」


「うん」


「俺も仕事。だから泊まることはできない。急に休むと職場の人に迷惑をかけることになる。お互いにね」


 彼はしばらく考えた後「よし。ナツの寮まで走ろう。それまで一緒にいてあげられる」って言ってくれた。


高速で片道三時間もかかる。


私は彼に無理を言った。


でもうれしかった。


何か特別話したいことがあるわけでもない。


ただ一緒に居たかったから。


途中のサービスエリアで彼がトイレは大丈夫?って聞かれた。


 私は大丈夫だったので彼だけトイレに行った。


彼は顔を洗ってきた。目が充血していた。


 彼に悪いことを言ってしまった。シンちゃんごめん。


ちょっと待ってと言って彼のほっぺを両手で挟み、私は彼にキスをした。


「おおっー。力がみなぎるわ。がんばります」って言ってくれた。


門限少し前に寮の近くに到着した。


まだ離れたくないけれど。


 私たちはまたキスをして別れを惜しんだ。


私の住む寮まで彼に送ってもらえるなんて思ってもみなかった。


 こんなわがままはあまり言わないようにしようと思ったけれど言ってしまうような気がする。


 彼は私が降りたあと、私の寮の玄関が開いたことを確認して車を走らせた。


と思ったらすぐに停まって。


 「好きだ!おやすみ」って叫んでから車を走らせた。


私は手を大きく振った。車のホーンが三回鳴った。


 ドラマのワンシーンみたいだ。


あとから彼に聞いて知ったのだけれど私は彼の車に財布を忘れていた。


寮でバッグの中から財布を出そうとしたときにないことに気が付いた。


どこで落としたのだろうと気にしていた。


 彼は高速の料金を払うとき自分の財布が見当たらず非常にあせったとのこと。


申し訳ないけどお金を借りたって電話があった。


 無事に帰れたかどうか心配していたので安心した。


その後彼の財布も無事に見つかり送ってもらった。


 他愛もない話しだけどどれも大切な彼との出来事。


 会うたびに私たちのきずなは深まっていったと思う。


 いろんな話をして笑い合って、時には静かに見つめあって、手を握りあってとても楽しい時間を過ごした。


 彼も私と同じように好き好きビームを送ってくれていたと思う。


私のは好きじゃなくて大好き大好きビームだけれどね!


 彼の会社の近くの公園で、そこは河口の近くだったのでとても見晴らしがよく彼と並んで座りながらいろんな話をしていた。 


 すると遠くに見えていたおじさんがだんだん近づいてきてここは自然が豊かだねって話を始めた。


 彼がこんなの自然と違うでしょうと言っていた。


 人工的な物やんと言っていた。おじさんもなんだかんだかみ合わない話をしていたが最後にたばこ一本くれないかと言われ、彼が渡してた。なんだったのだろう。


 デートの後、帰りたくないのって言ったら彼は優しく私を見つめて俺も帰したくないって言ってくれた。


 その夜、時間は遅かったけど彼がホテルを予約してくれて泊まることになった。


私たちはその日初めて抱き合った。


 付き合うようになって初めて二人きりでホテルに泊まる。


服を着たままでもキスをしたし、そして今日はホテルの浴衣を着て抱き合った。


 ドキドキしていた。シンと一緒にベッドに入ったもののその後の展開が私には怖かった。


 シンは私の気持ちを知ってか知らずか優しくキスをした。


それが首筋に降りてゆく。


 多分私の反応はぎこちなかったと思う。


シンがまた私の唇に戻ってきた。


 そして彼の舌が私の唇をこじ開けようとしている。


びっくりしたけれど私はそれを受け入れた。


 最初はぎこちなく。 だんだんと舌が絡んでゆく。 


シンと一つになったような気がする。


 このまま時が止まればいいと思った。


 翌朝、駅に向かう途中、話をしていたのだけれど彼に「この間の休みは何してたの?」 と聞かれたのでこの間の休みは同僚と遊びに行った話をした。 


 私と同僚と同僚の彼氏とそのお友達と四人で遊んだ話しをした。


 彼が「えっ!? なんで?」と聞いたので「何が?」と答えたら、

「何でそんなデートみたいなことをするの」って聞かれて、私は

「えっ!? ダメだった?」と彼に聞き返した。


 「そりゃダメでしょう。俺と付き合っているのにそんなことされたら気分が悪い」と言われた。


 私はその時に気が付いた。これは話したらダメな話だったって。


でも彼はどんどん質問してくる。


 何度か四人で遊んだ後そのお友達に誘われて一度二人で遊びに行ったところまで白状させられた。


 シンは怒った。 「俺いらんやん。俺いなくても何の問題もなさそう。

好きに遊んだらええやん。 俺そんな女いらんから」って。


心に刃が刺さる。(グサッ)


 「もう今すぐ別れるか?」 この言葉もグサッと来た。


ホテルを出てからついさっきまでラブラブだったのにシンを怒らせてしまった。


 完全に私が悪い。


私はシンに「ごめんなさい」と謝った。 「私が好きなのはシンなの」って。


 成り行きで仕方なく行っただけだからって必死で説明した。


シンは言った。「腹立つんはやな、俺が聞かなかったら黙ってたやろ。

 それがムカつくねん。 これ俺が知らなかったらどこまで進んでたの?

今、俺が知ったことでもう次は無いと思うけれどあかんやん。

 俺が他の女の子と二人きりで遊びに行ってもナツは大丈夫なわけ?」


「いやだ」


「自分に置き換えて考えてみてほしい。それとな、成り行きはわかる。一人足りないから来てほしいというのは。でもな二人で遊びに行くのは全然次元の違う話やで?」


「はい」


「それデートやん」 「・・・はい」


「行ってしまったら、何が起こっても不思議ではないと思うよ。どれだけ嫌だと首を振っても、どれだけ嫌だと言葉に出しても襲われる時は襲われる。男と二人きりになると言うのはそれを含んでいると思う。そういう話も聞いたことがあるから」


「はい」


「何もなかったのだったらよかったと思うことや」


「はい」


「それとナツの言う成り行きの意味が分からん。相手の言うがままってこと? 相手がデートしたいって言ったらハイと答えキスしたいと言ったらハイと答えやりたいと言われたらハイと答えるのが成り行きなんか?」


「シンちゃん以外にはそんなこと言わない」


「昨日帰りたくないと言ったのも成り行きか」と責められた。


私は辛くなって涙ぐんでしまった。


「シンちゃんごめん。本当にそんなつもりじゃなかったから」


 シンも私が涙ぐんだことで追及をやめてくれた。


そして「今度からこんなことは本当にやめてほしい。俺はナツの事が好きだからとても心配している。いつか誰かにとられるんじゃないかって思ったりもする。 ほんとうに頼みます。俺はナツが好きだから。 離れたくないって思っているから。ナツの行動は誤解どころかとんでもない事やと思うよ」って。


「断ることも俺のこと大事にしているってことになるんやで」って言われた。


私はシンに悪いことした。これからは気を付けようと思う。


「シンちゃんごめんなさい」


駅に着いたが車の中でキスは無かった。


ホームに上がってきたけれどなんだか気まずい。


階段以外では手も繋いでくれなかった。


 しばらく無言でシンと見つめ合っていた。


シンが怒っているのがわかるのでまた涙があふれそうになっていた。


「ナツ。 俺の事好きなん?」「うん」


「好きやのに他の男とデートするの?」


「ごめんなさい」

 

「もうしない? また行く?」


「もうしないし行かない」「ほんとうに?」「うん」


「俺の事好きって言える?」 「・・・うん」


「じゃあ言って」


「・・・」


「シンの事が好き」 私は涙がこぼれた。

 

電車が来たところでシンが私にキスした。 


「んんっ!」 びっくりした。


でもうれしかった。


シンは許してくれたみたいだ。


次は無いぞって言われた。


シン、ごめんなさい。そして許してくれてありがとう。


寮に帰ってから私は手紙を書いた。 本当にごめんなさいって。


 シンの言う通りあのまま誘われるがままにデートを重ねるとシンと同じように告白されていたと思う。


 シン以外と付き合うなんて思ってもいなかったしただ誘われて遊んでいるだけの感覚だった。


 今度からはそんなことのないように。シンを悲しませないようにしたいと思います。


それから、またお誘いがあったのできちんとお断りしました。


彼がいるのでこれ以上はお付き合いできませんと。


シンからも返事が来た。


俺らはまだ若い。若いから遊びたいという気持ちもわかる。


俺に関しては今どきの若者とはちょっと違うかもしれない。


誘われれば遊びには行くけれど女の子と遊びたいというのはあまりない。


それはナツがいるから。


ナツの事はとても大切で大好きだ。


信じている。信じていたい。


俺の事だけ好きなのだと。そう信じたいと思っている。


本当はガミガミ言いたくない。出来ればナツの判断でいいと思っている。


でも言われないからと言って何をしてもいいわけじゃない。


 これをOKしたらどうなるのか、よく考えて返事しないと取り返しがつかないこともある。


 困ったら相談してほしいと書かれていた。決める前に相談すること。


私の事心配してくれている。


 次やったらものすごい罰が待っているって書かれていた。


そのあとウヒヒって。 


なんだろう?


私は電話でシンに提案した。 


これからも泊ると思うからパジャマか何かおそろいで買ってもらえないだろうかと。


 シンはわかった買っとくよって言ってくれた。


 次のデートの後、シャワーを浴びて着替えようと彼の用意してくれたパジャマを着ようとしたらむちゃくちゃ小さい。 


サイズはMなのに。


 彼は洗濯してきてくれたのだけれどそのせいで思いっきり縮んでいた。


麻が入っている生地で洗濯機に何も考えず放り込んで洗ったって言っていた。


 ちょっとぴちぴち過ぎて着ることが出来なかった。 


私の太ももがぴちぴちになっていた。 血が止まりそう。


 シンも失敗するんだ。


二人で笑った。


 その日シンは胸まで愛してくれた。


シンが優しく愛してくれた。




 シンは時々私に会うために車を走らせる。


その頃はまだいろんなところに遊園地があった。


 一度港近くの今は無くなってしまった遊園地で遊んだ。


ジェットコースターで怖くない方法をシンに伝授して乗り込んだ。


 頂上まで上り詰めた時私は息を思いっきり吸い込んで止めた。


シンが「ナツ」って呼びかけるので見てみると最悪な変顔を見せられた。


 私は我慢が出来ず吹き出してしまった。「うぐっ。ブーッ」


その時ジェットコースターが急降下を始めたのだ。


「キャァァァァァァァァァァァァァァア」 


私の悲鳴が響き渡った。


 ジェットコースターを降りた時私はフラフラになっていた。


シンのお尻をバシッと叩いた。「シン。むちゃくちゃ怖かったんやからね!」


 シンは笑いながら「ナツのキャーが聞きたかったんやで」って言った。 


シンは笑顔だ。「ナツ。かわいいよ」シンはそう言った。


 手を繋いでベンチで休憩した。 シンがジュースを買ってきてくれた。


怖かったけど、それでよかったのかも。


 その夜シンと飲みに行った。


頭をよくぶつける居酒屋だ。


 私は少し飲み過ぎた。 


シンに支えられながらホテルに着いたもののあまり記憶がない。


 でもシンが私にキスした事は覚えている。


 夜中に目が覚めた。私はブラとパンティ、キャミソールを身に着けた状態で

シンと並んで眠っていた。 


いつの間に脱がされたのだろう。 正直驚いた。


まだ体の関係はなかったから。


脱がされたこと、全く記憶になかった。


シャワーを浴びてベッドに戻るとシンが目を開けていた。


「ナツおいで」と言ってくれたので、そのままシンに抱きついた。


抱き合ってキスをした。


 前に会った時に彼から指輪のサイズを聞かれていた。 


指輪はしたことなかったので「お店で聞いてくるね」って返事していた。


 彼は私に指輪を買ってくれた。 結婚指輪みたいな感じだった。


 着けてほしいと言われたんだけど仕事の時とかは着けられないからって言葉を濁した。


 うれしかったんだけどまだ早いような気がしてしまってあまり着けることは無かったんだ。


 シンごめん。


 私の住む街の公園のベンチで彼と話していると知らないおじさんが近づいてきて長い話のあと、たばこくれへんかと言われて


彼はゲラゲラ笑った。「またか! いやこっちの話やねんけど。 何やそれが言いたかったんかいな? 先に言ってくれたらあげるのに。正直デートの邪魔ですわと言ってた」笑 


 ある時病院近くで散歩していたらなんだか見たことのある団体が前方に見えた。


 私は冷やかされるのがいやで彼にも隠れてほしいと言ったけどなんで隠れなあかんのやと私だけ隠れた。


 彼は少し怒っていたような気がする。


何ら恥ずかしいことなど無いと。その通りなんだけど。


 初体験はドライブ途中で入ったホテルだった。


帰るつもりで来ていたが私がまた「帰りたくない」とわがままを言ったから。


 「今日はナツをもらうね」ってシンが言った。


前回の話がシンを焦らせてしまったのだろうか。


 誰かにとられる前にと思ったのかもしれない。


私は覚悟した。彼が先にシャワーを浴びた。


 私は湯船につかってこれからのことを考えたけどよくわからない。


怖いという気持ちもあった。でも大好きなシンだから。


 下着を着けずにバスタオルを体に巻いて彼の待つベッドへと向かった。


彼は立ったまま待っていた。


 もちろん明かりは落としてもらっていた。


そして抱きしめられた。


 キスをした。


バスタオル越しとはいえ下着を身に着けていない状態で抱き合った。


これから大人になるキスだ。


一つになるためのキスだ。


 ゆっくりとベッドに寝かされた。


彼は私に「愛してる」と言った。


 私はうれしかった。


シンが「本当にいいの?」と聞いてきたので私は頷いた。


私だけのシン。初めて私だけを見てくれる彼がシンだった。


 長いキスのあと私の色々な部分を彼の唇が舌が愛撫していく。


シンと胸までは経験していた。


 今まで触られたことのない所もシンの手が触れていく。


シンのものを握らされた。 これが男のモノ。


 これがシンのモノ。 初めて触った。


固いような柔らかいような不思議な感じがする。


 小さな男の子のモノは見たことがある。


「ポークビッツみたい」と言って同僚と笑った。


 でもこれはポークビッツとはかなり違うものだ。


これが私の中に入ってくる。


 背中からお腹に手が移動してきたとき私は今まで感じたことのない感覚に襲われていた。 


寒気に似た感覚。でも気持ちがいい。自然に声が出てしまう。


 彼の手が私の花園に触れた瞬間私の体に電気が走った。


思わず声が出た。長く尾を引く悲鳴のような声が出た。


 そしてそのあと彼の顔がお腹辺りに来た時私はすごく緊張していた。


そしてさらにその下の場所は初めてだった。私は無意識に身をよじった。


 少しずつ、少しずつ近づいてくる。私は背中がゾクゾクしていた。


そしておへそを過ぎたところで彼は少しだけ強引に私の足を広げた。


 もちろん無理やりにではない。 私は少し力が入っていた。


私はそこに手を当ててふさいだ。彼が舌と唇でよけていく。


私は無防備な状態になった。


シンの舌や唇はその周辺を移動していく。


私は体が溶けてしまいそうな感覚に陥っていた。


そこに彼の息を感じる。 私の息がだんだんと荒くなってゆく。


そしてシンはあそこに到達した。脳まで電流が走った。


初めてそこをシンに愛される。シンの舌はお尻にも・・・。


 体の自由が利かない。声が勝手に出てしまう。あぁシン。


私はどうなっちゃうの?


私はすごく恥ずかしかったし、もうどうしていいのかわからなかった。


こんなことまでするの? 


彼が私から出た体液を吸っているのがわかる。


彼を迎える準備ができているみたいだ。


その液体を吸われていることにも私は恥ずかしさを感じていた。


恥ずかしくて気持ちがよくて耐え難い感覚だった。


 夜のオツトメーと言って友達と笑ったことはあったけどその程度の知識しかなかった。


 そしてひとしきりその場所でとどまっていた彼はまた少しずつ上に上がってきた。


彼の顔が私の目の前に来た時また優しくキスをされた。


 シンが静かに「ナツ、一つになろう」って言った。 私は頷いた。


シンが私のそこにあてがうと「愛しているよ」と言いながら入ってきた。


私はシンに抱き着いていた。


痛みとそれ以外の感覚がある。でもベッドの上の方に少しずつ上っていく。


そして私は彼に貫かれた。


 私のシン。私はあなたのもの。シンは私だけのものだから。そう思った。


痛かったけれど彼と一つになれた。うれしいけれど痛い。


 正直、早く終わってほしいと思ったけど、その時はイってなかったと思う。


私が苦しそうな声を出していたので途中でやめたみたいだ。 ごめんねシン。


 そして彼も初めてだったみたいだ。 


あとからその印がシーツについてたよって教えられて顔が火照った。


 「シンちゃん、あのね。お尻も舐めちゃうの?」


「だって好きな人のだから。好きな女のものだからすべて欲しいんだ」とシンは言った。


「すべて俺のものだ」と言った。


 シンは私を抱きしめたまま眠った。


目が覚めると私はシンの腕の中にいた。


 幸せな朝だった。


 彼も目を覚ました。


キスをいっぱいした。


 そしてまた彼が私に入ってきた。


まだ痛い。痛いけれどそれは甘い痛みのような気がしていた。


でもそれ以外の感覚は何だろう。今はわからない。


 シンと結ばれた。


本当に恋人になったのだとそう思った。


 そんな余韻に浸りながらシンの胸に頭を乗せた。


「シンちゃん」そう呟きながら彼の胸にキスをした。


 この体は私が自由にできる身体だ。


シンという男の身体。私の初めてを受け取った身体。


 少し照れながらシンのものを手でなでる。握ってみる。


昨日の夜初めて触ってからずっと硬いままだった。


 シンにこの間の手紙の事を聞いた。


「ものすごい罰が待っていると書かれた後に ウヒヒと書いてたけれどあれは何?」


最初シンは言い渋っていたけれど


 「ナツを動けないようにしてエッチなことをするつもり」と白状した。 


私は一瞬想像してしまった。


 シンはすごいことを考えているんだと私は思った。


そしてそれもいいかもって思った私自身に驚いた。


 シンにはいいよとは絶対に言えないけれどいつかそんなことも

いいかもしれないと思った。

 

 彼は連休を利用して私との旅行を計画してくれた。


そして休みを合わせて関東方面にドライブに出かけた。


 彼と初めての関東方面への旅。


彼の作った行程表には、ちゃんとどこに何時に着くまで書かれている。


 昼間の東名高速道路。


遠くに高い山が見えて、なんだかダイナミックな風景が目の前に広がっている。


 私達は旅に出るんだっていう気になっていた。


しばらく走ると遠くに富士山が見えた。すごい!大きい! 


 白糸の滝という名所に立ち寄り散策した。


見たことの無い風景に接すると遠くへ来たのだなと思う。


 車でだけど五合目まで初めて富士山に登った。


途中の路肩の広い所で車を停めて溶岩と思われる岩を触ってみた。


「結構とげとげしてるね」「そうだね。遠い昔に溶けて固まったんだね」


赤茶けた岩がそこかしこにありこんなのが噴火で飛んで来たら大変だなと思った。


遠くから見た感じと実際の山肌が全く違うことに驚いた。


 再び車を走らせて五合目の駐車場に車を停めた。


シンと二人でそこから見える景色を眺めた。


 「高いねー」「そうだね。頂上まで登ったらもっとよく見えるんだろうね」


「うん」「ナツ、登ってみる?」「いつかね」「ほんとうに?」


「嘘。登れる自信がないよ」「でもいつか登れたらいいな」


「そうね。シン、それよりも結構寒いね。 気温が全然違う」


「あんまり冷えるとだめだから次に行く?」「うん」「じゃあ行こう」


 その後、山中湖を見てボートに乗った。 写真を撮った。


シンとこうやっていろんなところを旅できるなんてとても楽しい。


 私にとって初めての彼との遠出。きっといい思い出になるかな。


夜は彼の会社の保養施設に泊まることになっていた。


 予定よりもかなり早く着いてしまったみたいで保養所の人にもうチェックインできますかって聞いていた。


シンが戻ってきたので一緒にチェックインした。


 民宿みたいなところで鍵がなかった。


扉も引き戸でいきなり開けられたらどうしようという感じだった。


しばらく保養施設の部屋で彼といろんな話をした。


今日見て回った所の話とか。 明日の予定とか。


 夕方になり私だけ保養施設に置いて彼はどこかへ行ってしまった。


誰かに届けないといけないものがあるって。


 誰がそんな用事を頼むのだろうかと思った。私たち二人の時間なのに。


彼は夜九時過ぎに帰ってきた。私はさみしくて彼に抱きついていた。


 お風呂の時間が迫っていたのでまずお風呂に入り保養所の人が用意してくれたご飯を一緒に食べた。


 そしていろんな話をしたあと、そろそろ寝ましょうかとお布団に入った。


シンと一緒に居られてうれしい。


 キスをした。 


何度も何度もキスをした。


「ナツのこといただきますよ」


「うん。私もシンをいただきますよ」「うん」


少し恥ずかしかった。


シンが私の下着を脱がせてくれた。


私も彼の下着を脱がせた。


 そして抱き合った。彼の肌のぬくもりが心地いい。


いつまでもこうしていたい。


 そして愛し合った。 


この時私は初めて彼のものをお口で愛した。


 愛おしいと思った。


そして一つになった。幸せな時間。


 翌朝早く目が覚めると彼が私を見つめていた。 


なんだか恥ずかしい。


 空気が意外と冷えている。


だからシンのぬくもりがすごく心地よかった。


 布団の中でシンに抱き着いた。


もう一つに溶け合うくらい体を密着させた。


 それだけでも気持ちがいい。


下腹部に硬いものが当たっている。


「シンちゃん。元気になってるよ」


「うん。ナツを愛したいからね」


 そしてまた私を抱いてくれた。


いつまでもこうしていたい。


 保養所を出る準備をしているときに彼に「お針セットもってない?」と聞かれたので「持ってるよ」と答えると「これつけてほしい」と外れたボタンを渡された。


私は彼に見つめられながらボタンを付けた。


 シンは「女の子やね。すごくいいシーンだ」と写真を撮った。


すっぴんの素朴なかわいい女の子が写っていた。


 その後、東京に向かって出発した。


首都高速に入るといきなり渋滞していた。


 ずっと渋滞している。


阪神高速も渋滞するが所々でこんなにずっと渋滞しているのはすごいなと思った。


東京タワーを見物し、渋谷を歩いてシンとデートした。


 「東京ディズニーランドは次やな。行こうな」「はい!」


お昼過ぎに出発し神戸に着いた頃にはもう夜になっていた。


 長い長い車の旅だった。 「シン。お疲れ様でした」


シンも私も明日まで休みだ。「シン。もう一晩泊まらない?」


 「そうやな。なんか疲れたし、まだナツと離れたくないし」


「シンちゃん。それがいいと思う。私が癒してあげるね」

 

 言ってから顔が火照った。


そしてシンと何度も結ばれた。愛し合うって素敵なことだなと思う。


 シン。ずっと一緒にいてほしい。


そして、ありがとう。


 翌朝は私のほうが早く目が覚めた。


不思議なことにシンは眠っているのにシンのものは硬いままだった。


 私は明るい所で見たことがなかったので見てみることにした。


すごい形をしている。昨夜これが私に入っていた。


 私はシンを口に含んだ。だんだん気持ちよくなってきている。


シンが目を覚ましたみたいだ。私のほうを見ている。


 シンと目が合った。恥ずかしい。恥ずかしいけれど気持ちがいい。


シンがナツのを見たいって言った。でも私はそれはダメって言った。


シンはあきらめてくれた。私はシンを愛しつづけた。


そしてまたシンと一つになった。


 チェックアウトの時間に合わせて準備したもののまたシンに貫かれた。


そのあとは車で私の寮の近くまで行き海でのんびりと過ごした。


ベンチに二人でくっついて座っていた。とても幸せな時間だった。


 お昼ご飯に南京町まで歩いてラーメンとチャーハンを一緒に食べた。


この三日間ずっと彼と一緒だった。とても充実していた。


 このまま一緒にいてもいいくらいに思えた。


もしもシンとこのまま同じ部屋に帰ることが出来たら。


 同じ時間にご飯を食べて一緒にお風呂に入って一緒に眠る。


そんな暮らしが私の目の前に広がっている。


 シンとずっと一緒にいられたらうれしいのに。


シンはその後、自分の住む街へ帰って行った。


 彼の故郷にも何度か行った。


彼の先輩の家に行って私は初めて彼の田舎の友達に会った。


 彼の同級生のキューピットさんも来ていたのでお礼を言った。


彼を紹介してくれてありがとうって。


 キューピットさんは私に色々と気を使ってくれた。


彼の仲間といろんなゲームをして遊んだ。とても楽しい時間だった。


 この時も帰りは寮まで送ってもらった。


それから何日かして彼から連絡があった。


その彼の田舎の先輩が結婚することになったって。


彼と私と二人呼んでいただいた。


 なんとそのキューピットさんが結婚するとのこと。


前回の連休にシンと一緒に田舎に帰った時はそんな事全然言ってなかったのに。


何があったんだろう。興味はあった。


 彼に話を聞くと高校生になった時から先輩とキューピットさんは付き合っていたと思うって。


 思うってのはそんな風に見えていたけど実際に付き合っているのかどうかは聞いたことがなかったらしい。


 でもキューピットさんはその先輩の事を一途に思い続けていたのは間違いないとの事。


そして先に先輩が就職してその一年後にキューピットさんが就職して。


 多分時々会っていたんだろう。


そして結ばれてそれで赤ちゃんが出来たとの事。 


 順番は違うけれどシンはそれでよかったんじゃないかと言っていた。


たんなるきっかけだと思うって。


 計画を立てていても狂うことはある。


その狂ったときにどうするかでその二人の覚悟とか絆が見えてくると思う。 


 俺は結婚を選択した二人はすごいと思うって。 


 二人は好きあってそういうことをしたのだから、その結果の赤ちゃんを二人で育てる選択をしたことが素晴らしいと思うと言っていた。 


 人によっては失敗したんやって言う人がいるけれどきっかけに過ぎないのだからそういうことを言う方がおかしいと思う。


 私もその通りだと思う。


 ちなみにシンがいつくらいに赤ちゃんが出来たのかを想像してこれくらいかな、何月何日くらいかなってキューピットさんに言ったら先輩の前でシンはこんなこと言いよるんやって言われて怒られたらしい。笑


 シンが言った。「俺もナツといつか一緒になりたいと思っている」


「いつかね」って私は答えた。


 私もシンの赤ちゃんが出来たなら産みたいと思った。


 式の前々日に彼と彼の田舎に向かうことにした。彼の先輩が用意してくれた

ホテルには式の前日に泊まることになる。


 彼は車を走らせている途中もうすぐ海が見えると言った。


そしてその通り海が見えた時とてもきれいな風景で感動した。


 私達は道中気になる場所や施設があると立ち寄った。


 そして夕方になり彼が予約した旅館の駐車場でちょうどいいタイミングで彼に聞いてもらいたい曲が流れた。


 中森明菜の難破船。彼はじーっと聞いていた。


 そしてなんか言ってくれるのかと思ったけど何も言わずに行こうと言って

旅館の受付に向かった。


 あれっ? 何とも思わなかったの? 私の今の気持ちを知ってほしかったのにな。


私はその旅館で一か月ぶりに彼と結ばれた。


 まだ両手で数えられるくらいしか結ばれていない。


 このまま付き合っていけば数えきれなくなるんだろうなと私はなぜか一人でニヤニヤしていた。恥ずかしい。


 翌日は水族館に行った。私はなぜかフグが気になっていた。


いつも胸びれをパタパタさせているのがとても面白く感じていた。


 シンは似ている似ていないは別としてよく物まねをする。


私もシンに影響されて物まねをすることがあった。


 自信があるのは目玉のおやじだ。これはめったに披露しないがシンにはうけた。 


「おい、鬼太郎」


そしてフグのまねをしてみた。


 シンの顔がデレデレになっている。私の事かわいいと思っているみたいだ。笑


彼とならどこに行っても楽しいと感じている。


 夕方彼の先輩が手配してくれたホテルにチェックインすると彼の先輩が訪ねてきた。


「明日頼むで」って。それだけ言って去って行った。


そして彼と二人でおにぎりをほおばっていると私の友達がやってきた。


 その子は新婦の友達でもあり私たちを結び付けた二人いるキューピットの一人だった。


彼とは初対面で和やかな雰囲気で色々話をした。


 友達がそろそろ部屋に帰るわって言ったタイミングで彼が、おにぎり持って帰る?って聞いていた。


 私はなんでって思ったけど後から彼に聞いたら結構おにぎりに目が行ってたからお腹空いてるんかなと思ったって。


 もう無理やり勧めたとのこと。


 その友達はそれまで付き合っていた彼と別れたあと三ヶ月くらいで違う人と結婚した。


 別れた直後に友達の話を聞いたのだけれど、あの時友達はあれだけ忘れられないって泣いていたのに一体何だったのって思ったことを思い出した。


 もしかしたらその人に彼と別れてしまってとか相談したのかな? 


そんなにすぐにと思ったけれど、色々あるのね。


 結婚式当日。私も彼もおめかしして部屋を出た。


彼の礼服姿がかっこよくて惚れ直した。


 私のことかわいいよって言ってくれたからうれしかった。


お互いに写真を撮った。何故かツーショットは無かった。


 ホテルに人がいなかったから。


式が始まった。新郎新婦の入場。 彼を見るとほぼ目線が合う。


 彼は私ばかり見ているみたいだった。


新婦がとてもきれいでいつか私も彼の横でみんなに祝福してもらいたいと思った。

 

 式が終わったあと、夜までに寮に帰り着く予定で彼の車に乗った。 


 でも途中で渋滞になりこのままだと帰りが夜中になるので途中のホテルで

泊まることになった。


 私はまだ式の余韻が残っており、もしも今あなたの花嫁だったら。


そんな想像を膨らませていた。


 そんな時に彼とお泊りできることになって気持ちが弾んだ。


ご飯を食べたあとホテルに入った。


「お風呂入ろうか?」「うん」「一緒に入る?」「うん」 先に私が入った。


お風呂がガラス張りなので恥ずかしい。でもほとんど明かりは無い状態だ。


 一緒にシャワーを浴びてそして洗いっこした。


ボディーソープの泡が私と彼を包む。


 彼が後ろから私の胸を洗い始めた。 


にゅるんとした肌触りに私はすごく感じている。


 彼に頭を預けてしばらく彼にお任せしていた。


シャワーで泡を流した後、湯船にお湯を張ってゆっくりとつかっていた。


 彼がまた後ろから私のおっぱいを触っている。私は頭を彼に預けた。気持ちいい。


彼が浴室から先に出て待っていてくれた。


 そしてお姫様抱っこをしてくれたのだ。私は彼の首に腕を回しキスをした。


ベッドに寝かされて彼が私を愛撫し始めたとき私はとても感じていた。


彼の手が私の体を優しく撫でていた。


 胸やお腹や秘密の場所の近くも。この時も私は背筋がゾクゾクしていた。


体が幸福感で満たされてもう彼のなすがままだった。


 彼の唇と舌が私をとろけさせる。


彼が入ってきた時、私は今までになく気持ちいいと思った。


 その気持ちよさと彼のことを思う気持ちがあふれ出てしまって、私は彼に「シン好き。好きよ。好き!」と何度もつぶやいた。


 私はシンのことを愛している。愛してるって確信した。


あれほど好きって言ったのは初めてなくらい言っていた。


 彼が私を優しく揺らすたびに「好き。好き」とつぶやいていた。


私は彼にぞっこんだった。


 彼は私に俺も大好きだよって言ってくれた。


何度もキスをして何度も言ってくれた。私は幸せな気持ちで一杯だった。


 私どうなっちゃうのって思っていた。もしこの時彼に結婚を申し込まれていたら。


きっとOKしていたと思う・・・かも。 


 いや、やっぱりお金貯めてないと無理かな。


 シンと会うようになってからも時々手紙を書いた。


口で言えないことやうれしかったことなどシンに感謝の気持ちで書いていた。


 シンも同じように返事をくれた。


私の一番大切な人になった。


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The Last love letter  鴨居 伸 @kamoishin

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