画一

画一的な立方体をそこらに埋め込んだような快晴だった。

朝から最低な気分。隣部屋とこちらを隔てている壁を叩く。小部屋が連続している。細胞の一つが零れ落ちる。癌は早期切除しておかないとね。テストの解答を切り貼りすれば百点だった。糸電話の糸を切る。そんなに話したい気分じゃないんだ。噛み合わせの悪いジグソーパズル。きっと不良品に違いない。無理をすれば案外嵌まるもんじゃない?窮屈だ。青い立方体を空に嵌めていく仕事があるらしい。切った糸は戻らない。画一化された量産化人間。モデルケースが悪いんだ。この立方体、穴の大きさに合ってないよ。長い間放置していたパズルがふと完成したような、綺麗な映画だった。捨てればいいんじゃない?整然と並んだ卒業アルバムの写真。複雑化した思考の果てに。その立方体を削ってしまうのか。鋸か何かで自ら断頭した人間がいるらしい。首を吊るための紐が切れている。水と油。余分を切り落とせばただ澄んだ青になってくれる。壊れた糸電話から悲哀が滴った。青は藍から出る色の癖に藍より青いらしい。本当のことだっただろうか。俺は何故こんな。深みに落ちて出られない。糸が水溜まりを漂っている。やがて複雑な模様を成した。図鑑じゃ分類できない魚だね。昨日釣ったやつは刺身にしてしまおうか。立方体の海に展示されている。のっぺりとした奴らに手を振った。刺身って舌みたいだよな。食べる気失せるからやめろって。振り向いた顔もまた。落語にさ、のっぺらぼうが出てくるやつなかったっけ?俺すらも笑顔の仮面を着けている。釣糸を垂らした。置いてけ堀のことかな?喉に毒針が刺さって取れない。それだ。大事な魚をおいていってしまうなんて。あり得ないな。あり得なかったらしい。足掻いている、捥がれている。埃を被った骨格標本。泡の出るジュースだぁ。はぁ?エンドロールが流れ始めている。よかった、君には気づかれないで済むのか。糸が切れている。糸が切れている。糸が切れている。陳腐な妄想のままに引っ張りあげてくれ。唯一のっぺりとした奴らの中で顔がある。大海は自由だろうか。でも時々寂しい。俺の海に毒を吐かれている。皆が皆、石を投げ始める。当たった石には青が着く。網じゃあ赤がわからない。あんたがどんな魔女でも。その傀儡は単純作業を繰り返している。青い立方体を嵌めている。だが海だ。何かが根本的に間違っている。魚をすり替えられている。プロローグの差し替えミスだった。忘れてしまえよ、嘘なんだから。君は青を呑んでいる。糸の先にあるのは。糸の先にあるのは。糸の先にあるのは。のっぺりとした奴らが手を振り返した。みんなが皆同じ動き。この絵本はお前の話じゃないよ。解ってた。カメラが向いている。鏡面には青が映っている。顋から泡を吐いている。嘔吐している。酷い出来だなこりゃあ。君が硝子板をこん、こん、と叩く。あぁ。削いだんだ。君と会うためにいっぱい削いだんだ。立方体に嵌まってしまえる。そんな。色眼鏡を通している。ちょっとまって。


むかし むかし あるところに

けっこんをちかった ふたりが いました

ふたりをみた にんぎょが こいをしたのは

にんぎょひめが こいをしたのは


君が笑う。じゃあ、それって。糸が繋がるだろうか。深海魚の化石は生き返るだろうか。でも。ごめんねって。そういえば君は青を呑んでいる。立方体には酷く歪な罅がはいっている。魔女にお願いするには代償がいるんだ。魚でも何でも不要を削ぎ落としてあげる。バッドエンドじゃ笑えないんだ。糸はやはり切れている。この電話が繋がることはもうないんでしょう。傷を残った糸で縫っている。台本には青いインクが染み過ぎてしまった。どこまでいってもここじゃ酷く寒い。潸々さめざめしている。そうなんだね。この物語は結局、どこまで行っても青なんだね。切断カット切断カット切断カット。これじゃあまるで駄目だ。青いからね。最初からやり直さないと。泡を吹いちまうね。俺たちは。置いてけ堀にいた魔女に頼んで魚を置き去った人魚姫。将来を幼い頃に誓いあったふたり。みんなみんな青を呑んでいる。彼らはやがて画一化された区画に収まって。泡になって消えてしまう。


にんぎょひめが こいをしたのは

あおい あおい おんなのこ

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