第七十六話 エーゴン・フォン・ザイデル
『ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ』
『衛兵長様。御疲れ様です』
『おや、ザイデル殿。御母堂であらせられる
エーゴン・フォン・ザイデル。貴族諸侯の
『はい。衛兵長様。母上からは指示は受けてはいませんが、雪が降り始め本格的な冬が到来しましたので、何か御手伝い出来る事があればと思いまして。
エーゴンの説明を受けた検問所の責任者でもある三十代半ばの衛兵長は、好意的な表情を浮かべまして。
『最近の若い連中は上からの指示待ちが多く困りますが、ザイデル殿は御母堂であらせられる
『恐縮に存じ上げます。衛兵長様。実は
エーゴンは本当に生真面目な性格をしていると思います。自分で考えて行動したと話しても、私は一切気にしません。
『ツェーリンゲン……。ああ、あの
衛兵長はそう仰られますと、私の
『酒席で泥酔した父から聴いた話ですが、敵側に
多分ですが、衛兵長の父親の話は本当の事だと思います。
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