第六十話 学生服

『ヒュウウウーーーッ』


『寒くはありませんか?。コレット』


『大丈夫よ。フローリアン』


コレットはハイディと共に、私とペーターと共に湯浴みをしていたのとは別の浴室でお風呂に入っていましたが、湯冷めの心配は無さそうです。


『フローリアンは、洗濯屋さんに学生服を取りに行くのよね?』


コレットが御夫人から買い物を頼まれましたので、私も洗濯屋に預けていた学生服を回収する用事がありましたから、同い年の男女二人で出掛ける事にしました。


『その通りですコレット。皇帝陛下直轄の帝国自由都市であるリューベックは基本的に誰でも受け入れますから、懐を狙う悪童等もいますけれど。交易拠点でした子爵ヴァイカウント閣下の御領地で生まれ育ったコレットでしたら、対応には慣れていますね』


エミリーさん三人家族はリューベックに来たばかりですが、規模は異なれど交易拠点という意味では、コレットが生まれ育ち伯爵グラーフ閣下の軍団が焼き払われた街と似ていると思います。


『フローリアンの言う通り共通点は確かにあるわね。あそこで停車しているのは、郵便物を運ぶ馬車でしょ?』


コレットの視線の先には帝国郵便ライヒス・ポストの郵便局があり、郵便馬車ポスト・クッチェが停車をしていました。


『そう言えば今にして思えば、街が伯爵グラーフ閣下の軍団に攻囲される前日に、郵便局の馬車が一斉に居なくなったのよね?』


帝国郵便ライヒス・ポストは皇帝陛下の庇護ひごを受けている組織ですから、子爵ヴァイカウント閣下の御領地であった交易拠点の街を攻囲する直前に、伯爵グラーフ閣下は帝国郵便ライヒス・ポストだけには攻囲戦を行うと内々に通達された可能性があります。

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