第五十九話 クララ

『ソフィーちゃんがクララと仲良くしてくれて嬉しいな♪』


『うん。クララちゃん大好き♪』


『私もソフィーちゃんが大好き♪』


お風呂を借りた後にエミリーさんの次女でコレットの妹でもある六歳のソフィーの様子を見に行きましたが、ペーターの御父君でもある議員が御夫人との間に儲けられた末娘のクララの部屋で仲良く遊んでいて安心をしました。


『ソフィーちゃんは本当に可愛らしい娘さんですから、クララにも同い年のお友達で出来て嬉しく思います♪』


『恐縮に存じ上げます。奥様』


ペーターの優しく善良な性格は、住み込みの家政婦として屋敷で働いているエミリーさんと話しをされている、御母堂の御夫人から受け継いだ部分が大きいのかも知れません。


『フローリアンさんとアーデルハイト…、ハイディさんも、同い年のペーターと仲良くしてくれて嬉しく思います♪』


学生食堂メンザで学友のエーゴンに対して行ったように、ハイディは御夫人を睨み付けた訳ではありませんが。女性特有の鋭い感覚で貴族諸侯の令嬢フロイラインの名前であるアーデルハイトと呼ばれ掛けて、不愉快な気配を感じさせたハイディの呼び名を直ぐに改める臨機応変な反応は、善良な人格をされていてもリューベック参事会の議員の御夫人である事を感じさせる、素早く柔軟な対応を行うのは見事だと思います。


『ペーターは大切な良き学友です。御夫人』


『え、えへへ。フローリアンにそう言ってもらえて嬉しいな♪』


『ペーターとフローリアンの殿方の学友二人には、私も助けられていますわ。御夫人♪』


ハイディはアーデルハイトと呼び慣わされるのは嫌いますが、年長者の前では御母堂の男爵バローン夫人様と同じ話し方を無意識に行います。

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