第四十五話 男子寮と女子寮

『私やフローリアンのようにリューベックの外から叡智ヴァイスハイト学園に学びに来ている学生は、学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムで生活しているのだけれど、女子寮と男子寮に分かれているのよ。コレット』


『共同洗面所だけは男子寮と女子寮で共有していますけれど、それ以外は男女で分かれていますね』


叡智ヴァイスハイト学園の学生であるハイディと私の説明を聞いて、侍女服姿のコレットは頷きまして。


『十四歳の私達の年齢で、男女が同じ寮で生活すれば様々な問題が起きる可能性が高いから、性別で寮が分けられているのは当然だと思うわ』


コレットは父親が事故死してからは、母親のエミリーさんと妹のソフィーと、女性の家族だけで暮らして来ましたから。男女は一緒に暮らすべきではないという考え方のようですね。


『コレットの言う通りよ。私も余計な殿方の視線を気にせずに済む女子寮での生活は快適に感じているけれど。フローリアンとペーターに用事があっても、男子寮に女子生徒の私は入れないのは不便に感じて不満を覚えているわ』


ハイディの考えに私も同意しまして。


『特に今のような冬季休暇中ですと、叡智ヴァイスハイト学園の講義で会う機会も無くなりますから、街中の大衆食堂などで待ち合わせをするか、本日のように議員の屋敷のペーターの部屋で集まるしかないですからね』


『ボクとしてはフローリアンとハイディが遊びに来てくれるのは嬉しいけれど、確かに少し不便かも知れないね』


私とペーターも少し不便かも知れないと感じていると確認出来たハイディは、身を乗り出しますと。


『そこで、私達が自由に活動出来る拠点を借りないかと思うの』


ふむ?。


『リューベックの中で賃貸物件を見付けるという事ですか?。ハイディ』


自らの考えを直ぐに理解してもらえたハイディは、嬉しそうに満面の笑みを浮かべまして。


『ええ、その通りよフローリアン。制約を受ける事無く自由な活動が行える拠点となる空間ね♪』


貴族諸侯の男爵バローン家に生まれて、祖母から根元魔法の素質を受け継いだ令嬢フロイラインのハイディは、自由を渇望する気持ちが私よりも強いように感じます。

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