第四十三話 首席から三席まで

『やはりリューベックの誇りである叡智ヴァイスハイト学園で学ぶ首席から三席までの成績上位者の君達に依頼して正解だった。父親として息子の成長を嬉しく思う。ペーター♪』


『え、えへへ。ありがとう。お父さん♪』


ペーターが優しい性格に育ったのは、御父君でもあるリューベック参事会の議員による教育方針も大きく影響していると思われます。


『御依頼の通りにしました議員。痕跡も残してはいません』


盗賊ロイバー団の死骸と、死骸の一部と血液等の体液も全て、根元魔法の原子核崩壊アトーム・ツェアファルで完全に消去してから放棄された古い砦を後にしました。


『フローリアン君は傭兵ゼルドナーとしての仕事は完璧に果たすな』


ペーターが暮らす議員の屋敷の居間で私は苦笑を浮かべまして。


『恐縮です議員。ただ、負け戦で敗走した経験もありますから、常に完璧ではありません』


『君は自分に対して厳しい真面目な性格をしているな♪』


ペーターの御父君でもある議員は、大切にしている子息の学友である私の事を気に入ってくれています。


『砦で入手した戦利品は、この一年間取引をしている商人に金額を査定してもらっています。現金に代えてから私達三人で三等分に山分けをします』


博士ドクトルに解析して頂いている魔剣と、ハイディが銀白色ズィルバー・ヴァイスの髪の毛に身に着けているミスリルズィルバー製の貞淑ていしゅく髪飾ハール・シュムックりは、三等分に山分けする戦利品には含まない事にすると、私達三人で話し合って決めました。


『それで構わない。フローリアン君に万ヶ一の事態が起きたら、エミリーさん三人家族は私が責任を持って奴隷身分から解放する。書類は既に作成してある』


能力主義で選別されているリューベック参事会の議員は本当に動きが速いと思います。


『万ヶ一の事態は起きてほしくはないが、エミリーさん三人家族の今後に関しては心配する必要は無い。フローリアン君』


私は椅子から立ち上がりますと、心底よりの感謝の気持ちを込めて恭しく深々と御辞儀を行いまして。


『有難う御座います議員。これでエミリーさん三人家族への、一宿一飯の恩を返す事が出来ました』

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