第四十二話 冬季休暇中も帰りたくない学生達

『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』


『甘くて美味しくて幸せ♪』


『ペーターの言う通りですね、収穫直後の新鮮な瑞瑞しい林檎アプフェルも美味しいですけれど、砂糖ツッカー漬けにした林檎アプフェルは糖分が疲れた身体に染み込み幸せを強く感じます』


博士ドクトルと話しを終えまして、叡智ヴァイスハイト学園の学生食堂で私達は食事にしていますけれど、十四歳の男子生徒二人が美味しそうに林檎アプフェル砂糖ツッカー漬けを食べている様子を、同い年の女子生徒であるハイディは楽し気に眺めまして。


『フローリアンとペーターは、同年輩の男子生徒のように見栄を張らずに甘い食べ物も素直に美味しいと人前で認めるわね♪』


冬季休暇中も博士ドクトルのように研究を続ける御方や、学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムで暮らしていて実家には帰らない私やハイディのような学生の為に、叡智ヴァイスハイト学園の学生食堂は開かれていますけれど。


「首席のペーターさんが、本当に美味しそうに林檎アプフェル砂糖ツッカー漬けを食べられていますわね♪」


「隣に腰掛けていられるフローリアンさんは、この一ヶ月ほどお見掛けしませんでしたけれど、中性的な金髪ブロンデス・ハールが素敵ですわね♪」


『冬季休暇中も、学生食堂を利用される方々は数多くいられますね』


遠巻きに私達三人の様子を眺めながら小声で話す女子生徒の声を無視した私の態度に、男爵バローン家の令嬢フロイラインのハイディは笑みを浮かべまして。


『私のように領地の城館に帰りたくは無い学生も居るのよ。フローリアンの場合は融資の返済に忙しくて、一年以上故郷には帰っていないのよね?』


ハイディの確認に私は頷きまして。


『借金を踏み倒して逃げ出したのではないかと疑われるのは嫌でしたから、傭兵ゼルドナーの仕事以外でリューベックから出る事は、叡智ヴァイスハイト学園に入学して以降は一度もありませんでした』

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