第四十話 感謝の気持ちを常に忘れないように心掛ける必要

『良い取引が出来ました。頭領』


『お、おう。そう思うぜ』


砦の最上階にある盗賊ロイバー団の首魁しゅかいの部屋にて、奴隷商人は他者の犠牲の上に得た利益を喜んでいます。


『引き取らせて頂いた奴隷達にはもう買い手が見付かっています』


奴隷商人は具体的な取引相手の姓名は出さずに、盗賊ロイバー団の首魁しゅかいに対して商売人の笑みを向けまして。


『新しい商品が入荷しましたら、御連絡下さい。頭領』


『お、おう。そうさせてもらうぜ』


退室した奴隷商人が、外からは中が見えない荷馬車に隊商の男性達を乗せて遠ざかる後ろ姿を見送りますと、私は再び砦の最上階にある首魁しゅかいの部屋へと戻りました。


『お頭、どうかしやしたか?』


『他の連中も見当たりやせんが、良い獲物でも見付かり襲いに行ってるんすか?』


奴隷商人の道案内をする為に別行動をしていた盗賊ロイバー団の一員が、髭面ひげづらに不思議そうな表情を浮かべていましたが。


原子核崩壊アトーム・ツェアファル。バシュウッ』


殲滅フェアニヒトゥング完了です』


根元魔法の命令魔法ベフェールス・ツァオバーで束縛していた首魁しゅかいも含めて、ペーターの御父君でもあるリューベック参事会の議員から受けた盗賊ロイバー団を殲滅フェアニヒトゥングする依頼を完了しました。


『我慢してくれてありがとう。フローリアン』


私同様に根元魔法の姿隠之魔法ウン・ズィヒトバールカイツ・ツァオバーを解除した、叡智ヴァイスハイト学園で共に学ぶ優しい性格をしているペーターに対して。


『私達三人が議員から受けた依頼は、放棄された古い砦を根城とする盗賊ロイバー団の殲滅フェアニヒトゥングです。どういう背後関係があるか解らない奴隷商人に手を出す訳にはいきませんでした』


買い手は見付かっていると奴隷商人は話していましたから、奴隷を纏め買いの出来るだけの資金力のある人物との繋がりがあるのは確実ですので、事をこれ以上大きくしない為に、盗賊ロイバー団の首魁しゅかいには最後に取引を行うように命じました。


『無理しなくて良いわよ。フローリアンが奴隷制度に対して否定的な考えを持っている事は私もペーターも解っているわ。地下牢に残されている淑女マドモアゼルと護衛の従騎士スクワイアの男女は私が片付けておくから、フローリアンとペーターは戦利品を運び出す準備をお願いするわ』


どうやら私はかなり苛立っているように、学友のペーターとハイディには見えるようです。


『解りました。嫌な仕事を任せて済みません。ハイディ』


『気にしなくてよいわよ。フローリアン♪』


私は本当に学友に恵まれています。感謝の気持ちを常に忘れないように心掛ける必要があります。

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