第三十八話 運が良いのか悪いのか

子爵ヴァイカウント閣下への身代金の請求は、リューベックの郵便局経由で行ったのですね?』


『は、はい。魔法使マーギアーい様。リューベックの郵便局経由で身代金の請求を行いました』


砦の廊下に正座させて待たせておいた首魁しゅかいへの質問を再開しましたが、根元魔法の命令魔法ベフェールス・ツァオバーで束縛されている首魁しゅかいは、再びあの激痛を感じたくはないと必死で質問に答えています。


『本当に子爵ヴァイカウント閣下の御息女であらせられる淑女マドモアゼルの身柄を確保していると、どのように信じさせたの?』


淑女マドモアゼルの護衛の従騎士スクワイアが所持していた、根元魔法が付与されている魔剣を調べながらハイディが訊ねますと。次は試し斬りの対象とされかねないと考えたらしい盗賊ロイバー団の首魁しゅかいは、髭面ひげづらに歪んだ醜悪な愛想笑いを浮かべまして。


『あ、あの娘が身に付けていた首飾りを、身代金を請求する手紙に同封しました。女魔法使マーギエリンい様』


成る程。


『運が良いのか悪いのか』


私の言葉にペーターとハイディの叡智ヴァイスハイト学園で共に根元魔法を学ぶ男女の学友が揃って頷きましたが。盗賊ロイバー団の首魁しゅかいだけは解っていないようでしたから。


『貴方が手紙に同封した首飾りには、間違いなく淑女マドモアゼルの居場所を御父君であらせられる子爵ヴァイカウント閣下に知らせる根元魔法が付与されていました。もし奪った首飾りを身代金を請求する手紙に同封して、リューベックの郵便局から送らなければ、今頃は貴方の首は子爵ヴァイカウント家に仕える家臣の騎士シュヴァリエにより斬り落とされていました』

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