第十三話 帝国自由都市リューベック

『シュルンッ』


『失礼しました。もう安全です』


抱き締めていたエミリーさんとコレットとソフィーに対して、救い出せたという私自身の安堵の気持ちも込めてもう安全だと伝えて抱擁を解きました。


『え、ええと。さっきまで居た所とは違うよね?』


まだ幼いソフィーは状況を理解出来ていないので、私は優しく微笑みながら。


『今のは根元魔法の帰還ハイム・ケーアですね、ソフィー。私が自宅と考えている場所に戻る魔法になります。ようこそ帝国自由都市のリューベックにある、叡智ヴァイスハイト学園の学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムへ』


根元魔法を学ぶ帝国自由都市のリューベックにある叡智ヴァイスハイト学園には、私のように遠く離れた土地からも学生が入学しますので、学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムが整備をされています。


『カチャッ』


『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』


机と本棚と衣装棚と寝台しかない学生寮シュトゥデンテン・ヴォーンハイムの私の部屋の窓を開けますと、活気に満ちた帝国自由都市リューベックの街並みが広がっています。


『噂には聞いていたけれど、活気のある大きな街ね』


私とは同い年の十四歳の少女であるコレットが窓から街並みを眺めて感心したように話しますと、エミリーさんはまだ幼い六歳の次女であるソフィーを優しく抱き上げて窓の外の街並みの様子を見せてあげました。


『高い建物がたくさん♪』


嬉しそうに笑顔でソフィーが話したように、帝国自由都市リューベックには、叡智ヴァイスハイト学園を始め様々な高層建築物が林立しています。


『帝国自由都市は名目上は皇帝陛下直轄の都市ですが、内政に関しては完全な自治を認められています。周辺地域の貴族諸侯の皆様方が治められる領地とは異なり、帝国自由都市リューベックには領主は居ません』


ふう…。やはりリューベックに戻って来ると自由を実感します。伯爵グラーフ閣下や騎士リッター様に対して所作や言葉遣いを常に気にしないと、身分が上の御方の不興を買うのではないかと神経を磨り減らす外と比べて、やはりリューベックは自由で良いと心より思います。

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