第九話 所属する文化圏に拘る鋭い御方

『ズルッズルッズルッ』


『伯爵閣下の御命を狙った不逞の輩を生け捕りにしてもらい感謝をいたします。魔法使い殿』


『恐悦至極に存じ上げます。騎士様』


根元魔法の麻痺魔法レームングス・ツァオバーで身動きの取れなくなっている射手を、十四歳の私と同年輩だと思われる従騎士の御二方が引き摺りながら連行して行かれました。


『自分のような騎士リッターは、七歳頃から小姓ペイジとなりまして、十四歳頃に従騎士スクワイアとなります。魔法使い殿は確か十四歳でしたな?』


『はい。騎士リッター様。仰られる通りです』


私が根元魔法を学ぶ街である自由都市の周辺には、領地を治められる貴族諸侯の皆様方に仕えられる家臣の騎士リッター様と騎士シュヴァリエ様が混在しています。


フローリアン・ツェーリンゲン。自分達は同じ文化圏に属していますな。魔法使い殿♪』


『はい。騎士リッター様』


姓名でどちらの文化圏に属しているかは大体解ります。私の名前であるフローリアンは、花という意味ですが、果樹園で林檎アプフェルを栽培しているから命名されたフローリアンという名前になります。


『エミリー・コレット・ソフィー。自分達とは異なる文化圏の名ですな。魔法使い殿』


『はい。騎士リッター様』


…どうやらエミリーさん三人家族に対して、所有権を持つ奴隷に対する以上の感情を抱いていると、騎士リッター様には見抜かれたようです。

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