第八話 雇い主に死なれては報酬が受け取れません

「………………」


「伯爵閣下が何を話されていられるのか、全く聞こえないわね?」


「勝ち戦の後に雇い主の貴族諸侯の皆様方が行われる演説は、家臣の騎士様や書記官様向けの話しですから、私のような傭兵に聴かせるつもりは最初から無いのだと思われますね。コレット」


家臣団に取り囲まれて演壇の上から演説をされている伯爵閣下を遠巻きにしている傭兵の方々に混じり、小声で私とコレットが話している間、母親のエミリーさんと手を繋いでいる幼いソフィーは退屈そうに周囲を眺めていましたが。


キョロッキョロッキョロッ。


『お母さん。あの人は何をしているのかな?』


「もう少し小さな声で話しましょうねソフィー。どの方の事かしら?」


「ええと、あの木登りをしている男の人」


木登り?。


『伯爵閣下に向けて弓を構えているわっ!』


叫んだコレットの視線の先には、木に登り枝葉に身を潜めて演壇の上に居る伯爵閣下に目掛けて矢を放とうとしている射手でした!。


『ビュンッ。魔法障壁マーギッシェ・バリエーレ。ガキンッ』


雇い主が射殺されては報酬を受け取れませんから、根元魔法の魔法障壁マーギッシェ・バリエーレを展開して弓から放たれた矢を弾き飛ばしまして。


麻痺魔法レームングス・ツァオバー。ドサッ』


反撃されてエミリーさん三人家族に危害が加えられないように、射手の身体を麻痺させて木から落下させました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る