第七話 軍事行動は経済活動

『ワイワイ・ガヤガヤ・ザワザワ』


『朝食を四人分お願いします』


『はいよ。綺麗な魔法使いさん♪』


夜明けを迎えて明るくなりましたから、私のような傭兵向けに食事を提供している移動食堂で四人分の朝食を注文して、前払いで食事代を支払いました。


『チャリン、チャリン、チャリン』


『魔法使いさんは今回かなり活躍していたから、伯爵閣下も報酬に色を付けてくれるんじゃないかい』


『さあ、どうでしょうか?』


四人分の朝食を受け取った私は、他の傭兵の方々からは離れた場所で待っていてもらっているエミリーさん三人家族のもとに戻りました。


『お待たせしました。朝食にしましょう』


『はい。ありがとうございます』


『ありがとう』


『お腹ペコペコ』


母親のエミリーさんと長女のコレットと幼い妹のソフィーと一緒に朝食にしましたが、コレットは好奇心旺盛な表情で周囲を見回しまして。


『騎士様や書記官様のような文官や、フローリアンのような傭兵以外にも様々な人が居るのね』


固いパンをシチューに浸して柔らかくしながら私は頷きまして。


『騎士様や傭兵だけでは戦争は出来ませんからコレット。移動食堂は戦争が無い時は街で開催されるお祭り等の催し物の際にも食事を提供しますし、武具や防具の修理や馬に蹄鉄を付ける鍛冶屋などは、戦場では必要不可欠な存在ですね』


他には移動娼館や賭事を行う賭場などもありますけれど、幼いソフィーの前で話す内容ではないと思うので触れませんでした。


『塩辛いよ、お母さん』


シチューにパンを浸して柔らかくしてから一口食べたソフィーが、塩辛い味付けに困っていましたので。


『身体を動かす傭兵向けの朝食なので、塩分を補給出来るように塩辛い味付けとなっています。伯爵閣下の演説が終わり報酬を受け取りましたら、美味しい料理を一緒に食べましょうね。ソフィー♪』


『ありがとうフローリアンお兄ちゃん♪』


約束された通りの報酬を支払って頂ければ、路銀を盗まれた後に高利貸しに借りたお金は全額返済が済む計算になりますが。エミリーさん三人家族の今後の身の振り方も考えなければいけませんから、借金の返済を終えてもやるべき事は数多くあります。

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