第五話 一宿一飯の恩
『パチッパチッパチッ』
『明朝に伯爵閣下が行われる演説の際にお会いしましょう。魔法使い殿』
『はい。騎士様。御心尽くしに心底よりの御礼を申し上げます』
天幕内での事務処理を終えた私とエミリーさんとコレットとソフィーを、騎士様は他の傭兵の方々が使用していない焚き火まで送って来て下されましたから、優しい善良な人格をされていられるのは疑いの余地が無いと思われます。
『それでは魔法使い殿。夜風に当たり身体を冷やされぬように』
『はい。有難う御座いました。騎士様』
二十歳くらいの若い騎士様が立ち去られますと、近くには他の傭兵の方々も居ないのを確認しましてから。
『本当に申し訳ありません、エミリーさん。形式上だけとはいえ、貴女方を私が所有権を持つ奴隷身分にしてしまいました』
頭を下げて謝罪する私に対して、コレットとソフィーの母親であるエミリーさんは首を横に振られまして。
『とんでもありませんフローリアンさん。貴方が助けに来てくれなければ、今頃私達はどんな目に遭わされていた事か』
母親の言葉に長女のコレットも同意してくれまして。
『エミリー母さんの言う通りよフローリアン。それに、さっき騎士様が話していられたけれど、誰よりも早く私達家族三人の元に駆け付ける為に、危険な最前線で戦ってくれたのでしょう。お礼を言うのはこちらの方よ』
…罵倒される事も覚悟していましたから、正直救われた気持ちがします。
『ありがとう。フローリアンお兄ちゃん♪』
怯えていた幼いソフィーも、笑顔で私に対してお礼を言ってくれました。
『故郷である地方の林檎果樹園から、街にある教育機関で根元魔法を学ぶ為に旅をしている最中に、路銀を盗まれて行き倒れかけていた私を助けてくれた恩義は決して忘れません』
空腹で動けなくなっている私に声を掛けて暖かい食事をエミリーさん家族は提供してくれました。一宿一飯の恩は命に代えても必ず返す必要があります。
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