007 人はソレを変質者と叫び、お巡りさんを呼ぶんだぜ。
翌日の朝イチから昨日と同じ〈第1085F〉ダンジョン...あいかわらず長いな。F級ダンジョンに潜る
このダンジョンは探索者登録をした新人がダンジョンってこんなモンだぜ?、という気概で潜る謂わばチュートリアル的なダンジョン。
昨日戦闘したウサピョンで立ち回りを経験し、定番のスライムで魔物という生物を実感する。
余程の事など起きない
「ウサピョン出てこいやーーッ!!」
だからこそその当たり前に当たり前のように逆らう俺は、かなり目立っていた。
いや、目立ち過ぎていた...。
30過ぎたオッサンのold rookieが、新人にしては立派な(基本的にだいたいの新人は10代で、そんなにお金を持っていない)装備を身に着けて、右手にはこれまた良く切れそうなククリナイフ。
血走った眼で、見た目だけは愛くるしい兎のウサピョンを追いかけ廻す...俺。
「何で一匹ずつしか出てこないんだよ!もっと群れろ!
...後で身を以て理解するのだが、事案だったようで。
それと、
「ちょっとあのオッサン危なくね?」
「ホント。ヤバい薬とかやってんじゃない?」
「犯罪臭しかしないわ...」
「あ!?コッチ見た、逃げろ!!」
そんな声が飛び交っていたとか。
「ウサピョンはいねが〜出てこねが〜」
『人は
そんな歌詞の歌が、不意に聴こえた気がした。
それから30分程経った頃、通報を受けたダン警(ダンジョン専門警察の通称)らによって、俺の身柄は探索者協会の取調室に連行されていた。
「ではこれからは気をつけて探索活動をして下さいね、折谷さん」
「誠に申し訳ありませんでしたーッ!」
何とか誤解を解いた俺は、協会取調室を出て外にある喫煙所に向かった。
取り敢えず、一服せねば...。
「それにしても酷い目に遭った...まさか犯罪者と間違われるとは何とも恥ずかしい」
煙草に火を点けてゆっくりと吸い、ふぅ。
澄んだ青空に立ち昇り、雲散していく紫煙を、ぼんやりと眺める。
どうやってカード集めようかなぁ...。
「1匹ずつしかエンカウントしないのはキツいわ」
...実は〈第1085F〉ダンジョンの仕様が、偶々そうなだけで、他所ではスライムばかり出るダンジョンや、獣類が多く出るダンジョンなんかもあるみたい。この時点の俺が知らなかっただけ。
ネットで検索したり、喫茶店のマスターに相談すれば一発で解決出来た事だったのだが。
もう少し後にこの事実を知り、膝を着き項垂れる事となる阿呆、その名は、SOUJI....はい、俺です。
「まぁ、あんまり考え過ぎてもしゃーないわな。とにかく堅実に集めますか。
とりあえず人の多い時間帯は気をつけて、人を避けて探索する事にしよう、うん、そうしよう」
少し傷ついた心に、煙草の紫煙がじんわりと沁みた俺は、若干の遠回りの選択を余儀無く選び、再びF級ダンジョンへと繰り出して行くのであった、とさ。
「今行くぞ!
...気持ちだけは、負けないようにね。
折谷総司 ♂ age:30
Lv:4
rank:F
job:トレーダー:Lv2
skill:トレード:Lv2、鑑定眼:Lv1
title:×1、(変質者)new!
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