おっ!?イイもん持ってんじゃんか。よし、トレードしようぜ!
005 ...よし、棚上げしよう。後だ、後。
始まりの一服を終え、煙草を懐に仕舞いククリナイフをホルダーから取り出し右手に持つ。
慣れない刃物に緊張してか、やけに心臓の鼓動が、切れかけたウィンカーランプの点滅のように速く叩きつける。
汗でククリナイフが滑らないよう、しっかりと握り直す自分の臆病さ加減に、少し苦笑いが漏れた。
とりあえず左側(適当)に進んでみる事にするか。
草原、とは言っても草の丈も脛位のモノなので対して視界が悪いとか、不意打ちを喰らうといったこともないと思う。
だけど、初めてのダンジョン探索だから緊張するなってのは無理。マジで無理。
ゆっくりと200m程進んだところで、突如奥の茂みから、白い塊が飛び出してきた!
ー--Gyarururuuru!!
「うわぁ!...ぁ?ってウサギじゃん」
飛び出してきた真っ白なウサギがメチャクチャ威嚇するが、見た目が愛らしすぎる為に迫力がイマイチなんだよね...。
「意外と可愛い?」なんて気を抜いていたらウサギが突然飛び掛かってきやがった!
ー--ドンッ!!
「イッテッ!?この野郎!!」
クソッ!なに油断してんだよ、俺は!
慌ててククリナイフでウサギに斬りかかるが、中々当たらない!
軽やかに避けるウサギが少し距離をとると、こちらを見て鼻で笑いやがった!
ムカつくわコイツ!誰だよ、可愛いなんて言った奴!
ー--フフン!(ドヤ顔っぽい)
「マジでムカつく奴だな!かかってこい、ウサ公!!」
再び飛び掛かってくるウサギに対して、ギリギリまで避けることはせずに、動きを見据えてから半歩、体を横にずらしてククリナイフを思いっきり振り下ろしてやった。
ー--ギャン!
ザシュっと、見事に首を後ろから叩き斬る事に成功。そのままウサギは地面に落ちると粒子となって消えていく。
「ふぃ~...初戦闘は終了だな。少し見た目に騙されたのは反省点だ。
で、
ウサギが消えた場所を見てみると、小指の爪程の【魔石】?研修の資料で見たからおそらくそうだと思う。後は、何かを包んだ物に、【カード】が1枚か...えぇ?お肉のドロップって梱包してある親切設定なの?スゲェ不思議なんですけど...。
「魔石は小さいがF級ダンジョンなら妥当か。ウサギ肉?は帰って晩飯に使うとして、問題はこのカードだよな」
このウサギは〈ウサピョン〉が正式名称で最もポピュラーな雑魚魔物の一種と言われていて有名だが、カードをドロップするとはどのネット記事にも載っていなかったはず。
取り敢えずカードを調べてみるか...何か書いてあるな。えぇっと、
【ウサピョンカード】・・・見た目のとても愛らしい兎が描かれたカード
「もっと違う事説明してくれよ!ダンジョン関係はなんでこんなに説明が不親切なんだよ!お肉は親切なクセに!」
誰かに突っ込みを入れていると、突然頭の中にシステム音が鳴り響く。
ー--ピコン!Lvアップしました。【トレーダー】がLvアップしました。【トレード】がLvアップしました。skill【鑑定眼:Lv1】を覚えました。
「おぉ!?1回の戦闘でLvアップしたぞ。謎職業も上がったし【鑑定眼:Lv1】も覚えた!」
早速、さっきドロップした【ウサピョンカード】を鑑定してみよう!え〜と、どうやればいいんだ?お、見て意識するとなんか頭に思い浮かぶぞ!...なになに、
【ウサピョンカード】・・・見た目のとても愛らしい兎が描かれたカード。特に効果無し。トレード可。
「効果無いんかよ!...ってあれ?トレード可?ここでトレードが出てくんのかよ」
そういえばskillを鑑定すれば良いんじゃね?
職業とskillをイメージして...鑑定!
job【トレーダー:Lv2】・・・様々な物を交換、売買する者。交換対象はLvに依存する。
skill【トレード:Lv2】・・・物を交換できる。物とskillを交換できる。
「はぁあ!?このskillヤバいヤツじゃねーか!何だよ、物とskillを交換って!?」
まさしく【トレード】といった内容の説明。
物とskillの交換はかなりヤバい。
そんな話聞いた事も無いしバレたら、最悪どっかのお国に攫われてもおかしくない。そもそもこの日本でもどこかに監禁されてしまう可能性だってあるから大っぴらに出来ないって。
何か対策を考える必要があるけど、今この探索中に出来る事は無いので帰ってから考えよう。
一旦棚上げし、取り敢えず一回トレードしてみるか?とも思ったが、また魔物が出てくる可能性があるのでコレも帰ってから行うことにした。
ウサピョンと遭遇した場所を更に100m進むと新たな魔物に遭遇した。
ー--ポヨヨン!
The・定番!といった洗練されたフォルム、魔物オブ魔物、スライムさんだ!
さっきは油断したからな、速攻だ!
ーーーザシュ!
対するスライムは反応出来なかったようで、一撃で粒子へと変わる。
小粒の魔石、【スライムゼリー(瓶入り)】...と、【スライムカード】。
ホント、ドロップ品だけやけに親切だよね?
「カードを落とすのは確定なのか?」
まぁ考えるのは後だ後、とそれからも数回戦闘をこなしていく。
出合った魔物はウサピョン、スライム、ワーカーアントの3種類で、確かに初心者向けのダンジョンだなと思える内容だった。
結果、
初探索にしては上出来だ、なんて少し気持ちが大きくなるな。
身体Lvは2つ上がったが、職業・skillのLvは上がらなかった。
職業とかのLvは上がりにくいんだな。
まぁ、そんなにポンポン上がる方がおかしいか。
初探索を終え地上へ帰還しようと、転移陣に入る際、来た時はビビってたよな、俺...なんて自嘲しながら足を踏み入れた。
とりま、お疲れさん、俺。
折谷総司 ♂ age:30
Lv:1→4
rank:F
job:トレーダー:Lv2new!
skill:トレード:Lv2new!、鑑定眼:Lv1new!
title:×1
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