12 色々とご満悦
「で、一応確認しておきたいんだけど、此処ってウィザード達の基地……えーっと、異界管理局って事で良いのか?」
「当然そうなるの。事が事じゃ。普通に病院に搬送という訳にもいかないじゃろう」
「だな……で、ユイ。ウィザードの人達は……」
「あ、そうじゃ。鉄平が目を覚ましたら呼ぶように言われとるんじゃった。えーっと確か……これじゃ」
ユイはベッドの近くに設置された、ナースコールのようなボタンを押した。
「これで誰かしらウィザードが来る。本当は二人で話したい事もまだあるのじゃが……頼まれた事はちゃんとやらないと」
「素直で真面目だな改めて。どこが世界征服に来た侵略者だよほんと」
「ほんとじゃよな。今じゃこうして世界を守る正義の味方からのお願いに従っておる」
「じゃあ実質正義の味方じゃん」
「ワシが大正義じゃ……」
そう言ってご満悦にドヤ顔を浮かべるユイ。
……色々起きる前と同じように明るく元気そうで良かったと、肩に力を抜いたそんな反応を見てそう思う。
そう思ったから……少し気になって聞いてみた。
「そうだユイ。お前俺が寝ている間、体調大丈夫だったか?」
「体調? ワシのか?」
「ああ。俺からまともに生体エネルギーとかいう奴の供給を受けられていないから、お前は最初ぶっ倒れてたんだ。似たような事とかが俺の知らない内に無かったのかなって」
「言ったじゃろう、良い扱いをしてもらったと。鉄平が最初にしてくれて知れたように、ワシは食事を取る事でも最低限のエネルギーを確保できる。流石に昨日の昼は鉄平が心配で何も喉を通らなかったが流石に限界が来ての。昨日の夜に一杯食べさせてもらった」
「……そっか。良かったじゃん」
まあ今こうして元気にしている時点で察する事は出来たが、ちゃんと言葉で聞けると安心の度合いが違う。
「ちなみに何食べたんだ」
「カレーライスとやらじゃ。此処の食堂の人気メニューらしいのじゃがめっちゃうまいぞアレ。鉄平も機会があれば食べた方が良いと思うぞ! オススメじゃ!」
「機会があればな」
多分所謂社員食堂的な場所で食べたのだろうけど、果たしてウィザードでも無い自分がそこを利用する機会があるのだろうか?
……まあユイが居る以上、彼女と契約を結んでいる自分が此処の人達と無関係で居られる筈が無くて、きっと嫌でも関わっていく事になるだろうから、そういう機会もあるかもしれないけど。
そう今後共、きっと自分達はウィザードと関わっていく事になる。
(そうだ……これからどうなるんだ。ウィザード達は止まってくれた。だから今こうしてユイは生きている。でもこの先は一体……)
死ねばきっとそれで終わりだ。
だけど生きていれば考えられる可能性は多岐に渡る。
……まさかあれだけの力を持つ、本来殺害しなければならない相手を完全に自由にするなんて事は、流石にする筈が無いだろうから。
だから一件落着なように思えても、少なくともあの一件に関わっていた人達がユイの味方をしていてくれていても、まだ完全に全部終わったと気が抜けるような状況ではない訳だ。
「なんか朝ご飯も頼んだら食べられるそうじゃからの……今度は隣で柚子と神崎が食べておったラーメンとやらを食べるのじゃ」
「朝から重くねぇ?」
「……重い? 確かに水分がたっぷりで重そうじゃったが」
「物理的な話じゃねえよ。あと神崎って誰?」
「なんか身長高い奴じゃ」
「誰ぇ……」
まあウイザードの人なんだろうけども。
と、そんなやり取りをしていた時、部屋の扉が静かに開く。
そこに現れたのは、知っているウィザードの男。
「良かった。目を覚ましてくれて安心しましたよ、杉浦さん」
あの場で戦いを終わらせてくれた篠原が、玄関で対峙した時のような丁寧な口調でそう言いながら歩み寄ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます