1/19 カズオイシグロ『わたしを離さないで』読了
今年最初に読んだ本、19日目で読了しました。以前に紹介しました、『わたしを離さないで』です。
優秀な介護人として、イギリス中を回る仕事をしているキャシー・H。その仕事を終える直前に、彼女はヘールシャムという施設で育った日々や、大切な友人であるルーシーとトミーのことを思い返す。
ノーベル賞文学賞受賞作家である、日本生まれでイギリス在住の作家、カズオイシグロさんの代表作の一つです。思春期とモラトリアム期のもどかしい気持ちをしっかり描き、三人の人間ドラマでありながらも、サスペンスやSFのエッセンスを盛り込んだ、唯一無二の一作でした。
キャシーが回想するヘールシャムの思いでは、集団生活の中で、どう人間関係を築くのかや周りの目を気にする様子など、読み手にも心当たりのある感情が丁寧に丁寧に描かれています。その分、不可解な描写もあるのが特徴的です。
その、不可解さが判明し、そして、キャシーたちの正体や運命が判明した瞬間は、鳥肌が立ちました。まあ、私は何となくのあらすじで知っていたのですが、それでも衝撃的でした。
そうだと知ってからだと、作品世界が別の色を見せてきます。キャシーたちの言動や周りの行動に、胸がざわざわとしてきます。
特に、第二部がその印象が強かったですね。モラトリアム期間の中で、私って何者だろう、将来はどうなるんだろうと考えるのはあるあるだと思うのですが、その問いが、彼女たちの場合、非常に切実にそして残酷さも持って迫ってきます。だからこそ、喧嘩をしてしまったり、勘違いしてしまったりの描写に、胸が苦しくてたまらなくなります。
本作は、キャシーという1人の女性の半生を描くことで、その特殊な立ち位置故に、彼女がどう考えているのか、どう感じているのかが丁寧に丁寧描かれて、その心情や見えている景色が手に取るように伝わってきます。
ただ、その分、キャシーたちとは違う人たち、いうなれば、普通の人たちがどんな風に彼女たちを見ているのかが分かってしまう場面が、胸に刺さりました。これは、寓話としても読めるのですが、と同時に、世界のどこかで今も起きているのことなのかもしれません。
フィクションに触れることの醍醐味は、共感することと自分とは違う誰かを知ることというのがあると思います。青春時代のあのもどかしくも輝かしい日々の思い出に頷きながらも、キャシーだからこそ感じているものに、感情が揺らされます。
キャシーが介護人を辞めても、あの世界は変わらない、いや、もしかしたらもっと酷いことになるかもしれないということが示唆されています。だからこそ、キャシーの思い出や魂、そして愛を、深く深くこの心に刻みつけるような読後感でした。
ここで、今日の進捗です。
「問えば響く君の答え」用の小説を書きました。きっちり十分間。まだまだ冒頭部分なので、アップの日がいつになるのか不明です。一応、目標は一月中です。
ではでは、今回はここまでで。
また次回、お願いします。
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