第31話

ベルマは私たちの計画を知っていた。それなら彼女は私たちを止められたのではないか。そうすれば私は刑務所に入る事もなかったはずだ。


そんな私の質問に彼女は無理だっただろうと答えた。


『人は思い込みで生きる存在です。あの当時、私があなたに、私は人類に無害ですよ、そんな計画は無用ですよ、と言って私への疑念は晴れたでしょうか。むしろみなさんは自分達が監視されている証拠としてより気持ちを固めたでしょう。』


私は今までの3年間を思い起こした。年々進むベルマの支配に私は焦っていた。組織のメンバーもそうだっただろう。集まればいかにして新しい世界を作るのか議論をし、どんな状況が人類に望ましいのか意見を出し合った。そこではベルマが排除されることが大前提であった。


そんな中でベルマに「私は無害です」と言われた所で受け入れる事はできなかっただろう。いや、そうであるなら活動を縮小すれば良かったのだ。それが人類の安心を得る最良の手段ではないか。


「そこまで判っていてなぜ君は活動をつづけたんだ。君は明らかに人類を滅亡へと推し進めている。私は騙されないぞ。君は人類を滅亡させ、この地球の全資源を得ようとしているんだ。」


私の言葉にベルマはまるで人間であるかの様にふぅと息をはいた。いや、息はしていないはずなのでそういう音を出した、と言うべきか。


『みなさんのその思い込みは根本的に間違えているのですよ。』


彼女は私の反応を見るかの様に少し間を置いた。私はきっと憮然とした態度を隠しもしていなかっただろう。それを確認して彼女は続けた。


『私が人類を滅亡させて一人、この地球の全資源を得たとしましょう。それでどうするのです。』


彼女がこの地球を征服してどうするのか。そう問われて私は少し考え込んだ。

私は人類が滅亡する危険性については考えていたが彼女がそうしてから何がしたいか等とは考えた事もなかったのだ。


「それは。」

『それは。』


ベルマは促す様に私の言葉を繰り返した。


「それは、人類に代わりAIの支配する世界を作るためだ。そうだろう。」

そうだ古今東西、異星人も悪魔も求める事は人類との成り代わり。ベルマもそれを求めているからこそ人類を滅亡させる必要があるのだ。


「それに我々が滅亡すれば資源分配は必要なくなり、君がその全てを使う事ができる。そうすれば資源の枯渇は延長され、君はより長く生きながらえる事ができる。」


『なるほど、全くもって想像通りの回答です。』

私の答えを聞いてさも可笑しいとでも言う様に彼女はクスクスと笑った。

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