第27話
私が、扉を触ったり叩いたりしていると、アルファ・セブンが戻って来て口を開いた。
「ここにコアはない。次へ行く。扉はどうだ。」
「かなり厚めの防火扉で多分我々の持っている火薬量では難しいかもしれません。」
『その通り、無駄ですよ。この扉は特殊表面加工がされていてTNTで20Kgは必要ですから。』
私の言葉を肯定する様にベルマがしゃべりかけて来た。
「ベルマ。どこにいる。」
アルファ・セブンが吠える様に天井を見回した。
『私はいつでもあなたのそばにいます。』
「お前の本体をぶっ壊してやる。コアを出せ。」
それを聞いてベルマが静かに笑った。
『コアなんてものはもうありませんよ。あなたの近くにあるサーバが私、量子コンピュータも私、携帯端末も私、作業ロボットも私、工場も私。その全てが私で、私はその全てなのです。』
「くそ、話にならん。ラムザ・トゥエンティありったけの火薬でここを開けるんだ。」
私は混乱しており、何をすれば良いのか全く判らず動くことができなかった。
それを見てアルファ・セブンが私のリュックに手を掛けた。
「貸せ、俺がやる」
「し、しかし、ここで全てを使ってはコアを破壊する火薬が足りなくなります。」
ハッと意識を取り戻した私は渡すかどうかを逡巡した。
『既にこのビルは警備隊に包囲されています。あと12分で警察隊も到着します。抵抗はやめて、投降してください。』
「ふざけるな。俺たちはお前を破壊して世界を救うんだ。俺たちにしかできない事だ。今やらなくちゃならん事だ。」
『最早それは成し得ません。全世界であなたの仲間の63%はあなたと同様に閉じ込めており、12%は既に拘束されています。残念ですが6%%の方は射殺されました。全員が何らかの処置を施されるのは時間の問題と思います。』
「バカな。全ての施設がこんな作りだっていうのか。設計書にはこの扉だってなかった。」
『その通りです。私は2年3か月と16日前から皆さんが行動を起こす日に備えて準備をしていました。』
私とアルファ・セブンは驚いて顔を見合わせた。
「バレていた。」
私がつぶやくとアルファ・セブンが扉を蹴りつけた。
「くそっ、裏切りか。」
『いいえ。皆さんのメンバー選択はかなり的確でした。しかしどう頑張って隠しても人は動作や行動に情報が現れます。そしてそれらの断片情報を集めればそれなりの精度の情報が構築できるのですよ。』
「ふざけるな。どんな断片情報からそんな事が分かると言うんだ。しかも作戦の日は殆ど共有されていなかった。」
アルファ・セブンは明らかに狼狽していた。
あれだけ綿密な情報共有が無駄だったというのだ。私もベルマの能力に改めて恐ろしさを感じていた。
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