第22話
アルファ・セブンは続ける。
「まず、別の部隊がビルの全電源をダウンさせる。その瞬間我々は地下から侵入し、ただひたすらに階段を駆け上がる。8分で25階に到着する。各自暗視ゴーグルの起動と機能をチェック。」
全員がリュックから暗視ゴーグルを取り出し、それを被って異常がないかをチェックする。
「補助電源は5階毎のフロアに用意されており、我々の向かう25階にもある。まずはその電源の破壊が最初の目標だ。警備ロボを速やかに排除し、爆破を行う。担当はイタ・ナインとラムザ・トゥエンティ、5分で処理しろ。」
私とイタ・ナインはアルファ・セブンに見える様に親指を立てる。
補助電源の場所は図面から判明している。私たちは合宿で何度もその図面に合わせた設備で訓練を行った。階段から2分で駆け込み、プラスチック爆弾一つを使って破壊する。それで25階から29階までの電源は全てシャットダウンする。
「電源が落ちただけではコアの破壊は行えない。なので続いての目標はヨーロッパコアの発見になる。ヨーロッパコアがどのフロアに配置されているのかは不明だ。そして我々の爆弾は限りがある。何としてもコアを見つける必要がある。25階担当はイタ・ナイン達、26階は私とクシ・テンだ。」
コアも一応図面上の当たりは付けていた。
電源系統はビルの中央に背骨の様に通っており、そこから神経の様に各部屋へと伸びている。そしてエレベーターや階段は建物の端に寄せられており、建物の正面玄関が南側中央にあるのに対して、エレベーターは建物の中央ではなく南東に、階段は南西に配置されていた。
そのため、コアはこれらの侵入口から一番遠い北側中央あるいはその向いにあるのではないかと言われていた。向いにある場合は、補助電源の部屋と同じになるため26階、27階が候補となる。
「我々はベルマのコア形状を知らない。だが、あれだけの演算能力を持っている以上複数の量子コンピュータである事は間違いないだろう。なのでQ-WAVE社製と思しきものを順次破壊していく。」
量子コンピュータは私が育った頃よりかなり一般的になってきたが、そのサイズは未だに大型でご家庭用というわけにはいかなかった。また、それらの販売会社は3社しかなく、そのうちの1社がネオ・フォーミュラー社傘下のQ-WAVE社であり、ベルマにはその会社の量子コンピュータが使われていると考えられていた。
「目標達成後はエレベーターのケーブルを使ってケーブルタックルで2階まで滑り降りる。全員タックルの確認。」
私たちはケーブルに引っ掛ける滑車を取り出し。ロックが動くかどうかと滑車の回転に異常が無いかを確認する。
「全目標の達成想定時間は50分だ。異常に対して駆けつける警備会社は距離的には3分、現実的には7分を想定している。足止め部隊がどれだけ足止めできるかは判らん。つまりできるだけ早ければ早い程生還確率が上がるという事だ。」
アルファ・セブンが一呼吸置いて続けた。
「我々はこのミッションに命を懸けている。だが、帰るまでが合宿だ。全員無事に帰還できる事を願う。」
全員が隣のメンバー等と頷き合った。
本番は早朝の5時だ、行動開始まで時間があるため我々は仮眠に入った。
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