第21話
車は動き出して10分程で一つのショッピングセンターの地下駐車場に入って行く。
そこにはブラインドスポットがあり、そこで車を乗り換えるためだ。
私たちはカモフラージュのためにショッピングセンターでいくらかの買い物をして、車へと戻ると、元の車の隣に置いてある車へと乗り込む。そのタイミングで乗って来た車が先に動きだした。
元々乗っていた車はいつも合宿を行っている山のロッジへと向かい、乗り換えをした車はベルマのヨーロッパコアのあるビルの近くまで移動するという手はずだ。
私たちは合宿用に着ていた運動着等を脱いで用意されていた迷彩柄の服に着替え、各自で分担して持っていた武器を配分しなおした。
自動小銃の担当の二人がそれぞれ3丁の小銃を組み立て、私にその一つを渡した。
それを手にし、私は遂に引き返せない所まで来ていた事を実感し、銃を持つ手が汗ばんでいた。
準備を行った後、私たちの乗った車も走り出した。
目的地までは車で30分程の距離だ。あと30分で作戦が始まる。
果たして他のチームの状況はどうなのだろうか。
そんなことを考えているとアルファ・セブンが作戦の確認を始めた。
「君たち、いよいよ本番だ。」
その語り口は少し芝居がかっていたがこの状況に非常に合っていた。
「ヨーロッパコアは全部で13チームが参加する。総勢78名の大規模作戦だ。ワールドワイドにも同規模の攻勢をかけるので、バックアップも含めると800名以上の人間が参加する作戦になっている。」
アルファ・セブンが後部座席から淡々と話を進める。
「相手の拠点は軍事施設ではない。単なるサーバセンターだ。しかし油断は禁物だ。我々は建物の図面までは手に入れたが実際の状況については情報を得られなかったからだ。」
そう、我々は建築会社のメンバーから事前にヨーロッパコアの入っている建物の図面を入手したのだ。それは48階建てで下の階が曲線的に広がるビルだった。
それに対して我々は地下の下水道から侵入し、階段を駆け上がりながら担当の25階、26階、27階を探索する事になっているのだ。そのためこのチームはかなり体力に自信のあるメンバーが集められていた。
そこに私が入っているのは自分自身驚きだが、この3年間でひたむきに体力づくりをしてきたことが評価された様だった。
「作戦を確認する。」
その言葉に誰もが息すら止めた様に車内が静かになった。
「我々の最終目標はヨーロッパコアの破壊だ。そのためにいくつかの作戦目標を伝えているが、それらは単なるプロセスに過ぎない。もしその目標が達成されないのなら、我々人類は破滅に向かう歩みを止められない。そしてこの作戦が失敗すればベルマは二度と我々にチャンスを与えないだろう。」
そう、世界中のコアの破壊、それが我々の絶対目標だ。
もし今回の作戦が失敗すればきっと警備はより厳重になり、国も防衛に当たるかもしれない。世界の多くはベルマの陰謀を全く信じない。今の生活を考えればそれも当然の事だろう。
我々人類には今回の作戦が最初で最後のチャンスなのだ。
私は自分の心が押しつぶされることを恐れて、そのことを正面から受け止めることを避けていた。しかし、最早それは不可能だった。
私は喉が締まる程震えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます