第20話
遂に決行の日が訪れた。
私はそれまでにヨガマットに偽装されたプラスチック爆弾を、指示されていたブロックサイズに切り出し、押し込み式の雷管を取り付けた。
そして小さい物をポケットに入れ、残りは短期出張や旅行でよく使っているリュックサックに詰め込んだ。重さがトータルで20Kgあり、多分ビルのワンフロア位は軽く破壊することができるはずの量だ。
渡されていた武器はハンドガン1つだった。
これらの武器は最悪一人になっても計画を実行できる様に渡されていたもので、現地でよりかさ張る自動小銃などが配られる手はずになっていた。
まるで映画の様に本に挟んであったガンを取り出しできるだけ音がしない様にホルダーに入れて肩にかける。その上からジャケットを羽織るとリュックを背負った。
この三年間でベルマに気付かれる音、動作等について熟知しており、あたかも着替えや日用品を準備しているかの様に私は振る舞う事ができた。
最後に私は今日までの記録を閉じると妻への遺書と一緒に机の引き出しへ仕舞った。
この作戦は多くの情報から検討された生還可能なものとされていたが万が一の可能性もある。
ふと私は今自分がやっている事は私がやらなくても良かったのではないかと考えた。
しかし、最早後には引けなかった。私は組織にドップリ浸かっていたし、組織はイニシエーションを受けた者の足抜けを許さなかった。
私は行動に出ない様に意識しながら自然な風を装ってベルマに挨拶をした。
「じゃあベルマ、ヨガ合宿に行ってくるよ。」
「ええ、承知しました。良い瞑想を。」
この日の為に組織はヨガの合宿を三ヶ月に一回開催しており、その際には端末を家に置いてくるというルールを設けていた。最初、私はベルマに怪しまれるのではないかと考えていたが、意外にもベルマは特別な反応も見せず、承諾した。
変に緊張していた私はベルマのそんな反応に毒気を抜かれた気持ちになった。
しかし、後に知ったのだが、どの時代でもデジタルデトックスは流行を見せる様で、そんな合宿はごまんとあるという事だった。
組織はその合宿で簡単な戦闘訓練と作戦検討を行っていた。
私は幹部では無かったので戦闘訓練やプラスチック爆弾の取り扱い、ベルマサーバの破壊方法等の実践訓練を積んだ。
私が集合場所に行くと、そこには一台のバンが停まっており、私を待っていた。
私が近づくと、後部座席の扉が自動的にスライドし、車の中には4人の男女が乗っていた。
1人はアルファ・セブン、この隊の隊長だ。
他のメンバーも合宿の顔なじみでお互いに気さくに挨拶を交わした。
「よし、全員揃ったな。出発だ。」
彼がそう言うと車は動き出した。
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