第17話

イニシエーションは簡単なものだった。


私は誓約を読み上げ、それに対して誓いの宣誓をするというものだ。

そして最後に誓約書へ血判を押した。


誓約書には僅か5つの誓約が掲げられているだけだった。

1.我々は人類の自由意志と尊厳の為に戦う事を誓う

2.我々はそのために結束してベルマの排除にあたる事を誓う

3.我々は決して組織を裏切らない事を誓う

4.我々は組織外の者に決して我々の活動を漏らさない事を誓う

5.我々はこれらの事に心血を注ぎ取り組む事を誓う


「おめでとう。これで君は我々組織リリースマインドの一員だ。」

リーダーが改めて握手を求めて来た。

私は少し誇らしげに彼の手を握り返した。


「君のコードネームはラムザ・トゥエンティだ。グループラムザは11番目の組織であり、主に活動の周辺業務を担当している。」

「ラムザ、トゥエンティ。チームラムザには私以外に19名のメンバーが居るという事ですが?」

与えられたコードネームから私は素朴な質問をした。


「その通りだ。ただ、我々の組織においてグループは役割を分担するための呼び名に過ぎない。実際の活動で組織されるチームは各グループから選出されるメンバーによって動的に編成される。」


私はなるほどと頷いて続けた。

「周辺業務、というのはなんですか。」

「端的に言えば入ったばかりの君でもできる組織のための細かい業務だ。それらがこなせればコードネームが更新され、カパーナンバーとなる。」


「承知しました。頑張ります。」

リーダーはにこやかに私の肩に手を置いていった。

「君には期待している。我々の意志と尊厳の為に。」


彼がそう言うと残りの二人も声をそろえて復唱した。

「我々の意志と尊厳のために。」


それを聞いて私も少し気恥ずかしさを覚えながら復唱した。

彼らは私に笑いかけ、リーダーとアグサは部屋を出て行った。


それを見送るとアルファ・セブンが今後の事について話始めた。


「さて、まずは今後の君の生活についてだが、基本的に今までの生活習慣や活動を変更する必要はない。」


その言葉を聞いて私は心の底からの安堵を覚えた。いくら人類のためとは言っても突然生活が変わるとなると、妻や会社になんと言えばいいのか、事故に見せかけて消してもらおうか、等と真剣に考えていたからだ。


「トゥエンティ、君の考えている事は判るよ。我々はいきなり君をブートキャンプに投げ入れる様な事はしない。」


それを聞いて私も苦笑せざるを得なかった。


「君にまずやってもらいたい事は情報収集と提供だ。今日の為に君の事はいくらか調査している。君のいる企業はバーンズコードテクノロジー社だ。そこでの君の役割を教えてもらいたい。」

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