第2章 性別不詳組、本格始動
第7話 学校と幼馴染み
「どうしたの、
教室で話書けて来たのは、
ニタニタと笑みを浮かべながら謎にもみ手までして近づいてきた。
「なんだそれ」
ナズナはいつもへらへらしている方だが、栗坂君なんんて呼び方も、したてに出る態度もらしくないものだった。
「いやー同接一万も出しちゃうVTuberさんにはね、頭もあがらないっしょ」
「やめてよ、やりにくいって!」
ナズナなりの祝い方なのだろうか、まるでうれしくない。
早朝の教室ということもあって、周囲に人はいない。普段なら人目を気にするVTuberの話だったが、そこまで警戒はいらないだろうか。
「ま、でも実際すごいって! 同接一万は人気VTuberっしょ」
「人気VTuberはおおげさだって。あー、でも実はコラボの誘いをもらってて」
「へぇ、有名な人?」
「……セレネさん」
「はい?」
さすがの幼馴染みも、俺の出した名前に戸惑ったようだった。
「セレネって、あの?
「うん、そのセレネさん」
「嘘。だって、それこそ登録者一○万人越えてるよね、本物の人気VTuberでしょ、セレネって。しかも……恵、セレネのファンだったっしょ?」
「……へへっ、そうなんだよね」
なにを隠そう、ほぼ不純な動機で始めたVTuber活動だけれど、そもそも俺がVTuberにハマったきっかけは宴百年セレネさんだった。
だからそのセレネさんからのコラボの誘いを、はやく誰かに自慢したかったのだ。
まだ正式に決まったわけでもなく、配信で言うわけにはいかない。
コラボの誘いは性別不詳組として、俺たち四人が声をかけてもらったのだから、トモたちに自慢するわけにもいかず――。
「ナズナ、俺のことほめたたえてもいいんだよっ!」
「よっ美少女VTuber!」
「……それは違う。性別不詳VTuberだし」
「えー、恵が美少女って認知されたからこそっしょ?」
「…………まあ、あれで話題になったからなのはそうだけど」
オフ会と感想配信、それからその後の同接一万の配信を皮切りに、性別不詳組の配信では人の集まりが格段に増えている。
ただ少しだけ納得できないのは、同接やコメントに関しては俺の配信がにぎわっていたはずなのに、登録者数でいえばアマネさんが一番増えているということだ。
「アマネさん? あー、声が巨乳だからでしょ?」
「その声が巨乳ってなんなの」
「こうね、耳がつつまれる感じで……ってか、恵オフしたんでしょ? リアルだとどうだったの!? やっぱ巨乳!?」
「そういうのは内緒にする約束だから」
ナズナは「アタシにくらいいいっしょー」と不満そうだったけれど、俺は幼馴染みの夢を壊したくなかった。いや、関係なく約束である以上、おいそれとは言えない。たとえナズナ相手でも、どこで情報がもれるかわからない。
性別不詳VTuberとして、性別が特定されるような情報は絶対に隠さなければならなかった。
「ふぅん、とりあえず順調ってことか。恵の配信はバズるし、ファンだった大物VTuberからコラボの誘いもあるし、オフまでした配信仲間は巨乳美女かー。もう酒池肉林一歩で前だねー」
「いや、最後のはナズナの想像だからね?」
事実としては、違うもと否定できないのだが、一応ツッコんでおく。
「順調なのはそうなのかな……まだ昨日今日のことで、全然実感というか、これからもうまくいくのかって不安のが大きいけど」
「炎上とかしないようにねー。彼氏バレとか」
「おい。いないし、できないからね」
応援してくれる人が増えるなら、それだけ気をつかわないといけなくなるのはたしかだけれど、俺に彼氏ができる心配はいらない。
「……それより問題なのは男バレだよ。……嘘ついてたわけじゃないけど、こうなっちゃうとなんかでバレたとき絶対炎上する……いや、でももともとバレバレだったと思うから……今更なんに気をつかえばいいのかわからないし……」
「恵はそのままで大丈夫でしょ?」
ナズナが適当なことを言う。これでプロデューサーを自称するなんて、まるで責任感のない発言ではないか。
「まぁ……多分、冗談の延長みたいなもんだし、視聴者も本当に俺のこと美少女だとは思ってないよね? もしかしたら一部真に受けている人もいるかもだけど……」
「んー、それもあるけど、恵なら、バレる心配はないと思うよー。あ、でもカメラつけて上半身裸になるのとか、あと下半身も露出しない方がいいかも。それはさすがにバレるっしょ」
「いやいや! バレるとか以前の問題だよ!」
上半身裸でカメラ配信するVTuberなんて聞いたことがないし、下半身なんて出したら炎上よりも先にアカウント停止だ。
ただ少なくとも、ナズナも今回のことをそこまで大事にはとらえていないようだった。俺も気にしすぎて配信がおろそかになるのはいやだ。
「……セレネさんにコラボ誘われたんだしね、これからはもっと配信がんばらないと」
「出世払い期待してるよん」
苦笑いで返したが、俺のやる気は十分だった。
セレネさんとのコラボが楽しみすぎる。なんせただのコラボではなく、年末恒例の大企画だ。セレネさんにがっかりされないよう、それまでにもっと配信して、視聴者にたくさん楽しんでもらえるようしないと!
――と意気込んでいた矢先、
『ごめんなさい。わたし、しばらく配信の頻度がさげるわ』
アマネさんが、それこそコラボに向けて性別不詳組での通話中に、しれっと言った。
よくようのない声から、どんな事情なのか、どんな感情なのかもわからない。
しかし、四人で盛り上げていこうという中、それも巨乳声で性別不詳組の人気筆頭のアマネさんが、配信頻度を落とすというのはゆゆしき事態だ。
――まさかアマネさんも、巨乳だって誤解されていることを思い悩んでいる!?
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