第6話
カップ麺を食べ終え、ペットボトルのお茶を飲ませてもらっていると、コンコンと音がしてドアが開き、部屋に3人、人が入ってきた。
「おはようございます。お加減いかがですか?」
3人の内、一番前にいる濃い灰色のスーツを着た人がそう話しかけてきた。後ろの二人は、軽くお辞儀をしたくらいで、スーツも着てはいなかった。
3人がこちらに歩いてくると、はあと息を吐いて、翼の生えた人は、朝眠っていた、ソファに腰かけて、腕組みをし、足も組んで、3人を眺める。
こちらも、軽くお辞儀をして、
「おかげさまで、身体が少し痛むくらいです」
と答えた。
「それは良かったです。私たちは、特殊科の職員で、
スーツの人がベッドわきの椅子に座り、二人がその後ろに立った。
「まず初めに、改めて言わせていただきますと、
ちらりと翼の生えた人を見ると、目が合う。俺に向かってニコッと笑ってから、また、少し眉間にしわを寄せて、翼のある人は3人の方に視線を向けた。
「ざっくり言いますと、
そこで一回言葉を切ってから、スーツの人は先を続けた。
「ですがいずれの場合にせよ共通して、これまでの人生とこれからの人生では大きく違うところがあります。これから、その違いについて、説明いたします」
そう言うと、スーツの人は指を3本立てて、こちらにむけ、そのうち1本を折り曲げた。
「まず、1つ目、神との契約によりあなたの身体は変化しました。神社での気絶と、今感じている体の痛みはそれに伴うものです。具体的に言いますと、寿命は200年まで伸び、人体の耐久力、回復力が著しく向上しています」
2本目の指を曲げる。
「2つ目は、あなが死ねばあなたが契約している神も死にます。同様に、あなたが契約している神が死ねば、あなたも死にます。そこの彼女とあなたは一蓮托生という訳です」
そして、最後の1本を曲げる。
「最後の3つ目は、これが一番重要なのですが、これからさき、死ぬまで、命を狙われることになります。他にもこまごまとあるのですが大きいのはこの3つです」
言い終わると、スーツの人はしばらく黙った。
1つ目は別にいい。2つ目も、まあ、仕方がない。でも、3つ目については意味が分からなかった。
「どうして俺が狙われ――」
「申し訳ありませんが、特殊科に所属しない限り、その理由は教えられない規則なっています。ただ、
俺が言い終わる前に、毅然とした態度でスーツの人はそう答えた。
「ですが、もちろん
「それなら、特殊科で
俺の問いに、ふむふむというようにうなずいてから、スーツの人は話し出す。
「確かに、今までの話だとそのように思われるかもしれません。ですが、メリットはあります。1つは、先ほどまでの話と関係しますが、一般人として生きる場合、狙われれば、ほぼ間違いなく死にます。特殊科に所属する場合は、邪神討伐で日常的に戦闘をするので狙われてもまず死にません。
そして、もう1つのメリットは、これが特殊科の
そこで一度溜めを作ってから、スーツの人は言った。
「給料とは別に、全ての生活費が国から保障されます。また、給料も上限はありますが、基本的に言い値で支払います。あと、税金も基本的に免除ですし保険料もかかりません」
スーツの人の顔を見て、内心でマジかと呟く。これまで、両親の遺産で生活してきたが、大学進学には心もとなく、進路について悩んでいたところだった。巫戸として就職すれば、進路の心配はないというわけだ。金のことだけ考えればこれ以上もない魅力的な選択肢だった。
「だめだ、
それまで黙っていた翼の生えた人が、凛とした声で、俺の目を見て言った。それを聞いて、俺は、はっと目が覚めたような気分になった。
少し口角が下がり気味なスーツの人は、立ち上がって、俺たち二人の顔を見ながら、
「返事はいつでも結構なので、ゆっくり考えてみてください」
とだけ言って、3人とも病室から出ていった。
2人取り残された病室で、俺は一言言った。
「ありがとう」
「ども」
と翼の生えた人も短く言った。
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