第33話 行きどまり

半年以上前、中学生だった頃、僕は天邪鬼、隣にいる天野に出会った。

天邪鬼といってもひねくれ者のことでなく本当の怪異、妖怪だ。

幸か不幸か、天野と出会ったことによって僕は事件に巻きこまれ、考え方を変える出来事に立て続けに遭遇した。

天野、天邪鬼に取り憑かれた。

それだけでなく自分は先祖がえりのワーウルフの末裔だと知った。

ワーウルフ。

日本語に訳すと狼男。

嘘に聞こえるが僕はいたって嘘は言っていない。

基本、僕は正直だから嘘をつこうとしてもすぐに顔に出てしまう。

まぁ、それはどうでもいいとして、そんなこんなで妖怪、怪異がらみの事件に巻き込まれ、変な日常を過ごすことになってしまった。

そんな僕は年頃の悩みを抱き、自分と心に横槍を入れてくる天邪鬼の言葉に反応しながら家で考えていた。

しかし、考えなどまとまるはずもなく、気分転換に外に出たのはいいものの行き着いたのは隣町とこの街の間を流れる川のほとりだった。

高校生だというのに一人、友人もなくただ川の流れを寂しく、見つめるというはたから見たら何だ、コイツと思われるような状況。

いやちょっと待て、影が薄いから逆にそうは思われないかもしれない。

「相棒、オマエは一人でぶつぶつ言って何がしたいんだ?」

天野はからかうように言った。

このやり取りとこのくだりを一時間ほど繰り返していた。

悲しいことに天野は僕と数人を除き、普通の人には見えない。

そのため僕が天野に向かって話していると他人から見れば誰もいないのに喋っている変な人物に見える。

まぁ、仕方がないのだろうけれど。

この生活にも完全とまではいかなくても慣れてきた。

苦ではないが恥ずかしさは半端がない。

「なぁ、天野?」

「なんだ、相棒」

「天野は、一応、神様の部類に入るんだろう?」

「何だいきなり、藪から棒に聞いてきて。調子でも悪いのか?」

天野は嫌そうな顔をして言った。

 「神様だったら何か、願い事叶えてくれないか」

天野は皮肉めいた笑みを浮かべ、僕の目を覗きこむ。

「そいつは無理な話だな」

「何でだよ?」

「願いを叶えるか叶えられるかは願いを抱いた奴の問題で、神は何もしない。つまり神はサイコロを振らないだ」

彼は僕自身に見えるのだが、その目を覗き込んでいると何か大きなものに飲み込まれそうな感覚に陥る。

「…………」

「だからそいうことを考えている時点でお前はアウトだ、相棒」

確かに天野のいうとおりなのかもしれない。

願いをかなえるのは願いを抱いた奴自身の問題で神様に頼むのは他人に自分の舵を任せていることになる。

はぁ……。

考えれば考えるほどやはり、ド壺にはまってしまう。

どうしたらいいものか?

「だから考えすぎなんだよ、相棒」

天野は共有する僕の思考を読み取り、言った。

そういわれてみてもどうすればいいのか分からない。

行動のしようがない。

 もしここに俗に言う彼女と呼ばれる恋人がいれば変わるのか?

いや、待て。

その彼女の作り方さえわからないぞ。

やはり行き着くところは行動の制限か……。

「確かに考えすぎだな」

「はぁ……」

天野はため息をつくとやれやれといわんばかりの仕草をした。

僕は地面に視線を落とす。

ああ、なんて暗い青春なんだろうか……。

「何、暗い日々をおくってますって、アピールした顔してんのよ」

「そんな顔しているように……、ってあれ?」

天野に話かけられたと思い反応したが、天野の声ではない他の人物の声が聞こえた。

僕は声につられ、顔を上げる。

声の主は女性であり友達になったばかりの宮前此方がそこにいた。

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