第34話 目の前に

「あれ、なんでここにいるんだ?」

僕は多分、拍子抜けした顔をしていたと思う。

「何、ここにいて悪い?」

彼女はいつもの仏頂面をしながら言った。

「いや、別に悪くないけど……」

別にそういう意味で聞いたわけじゃないのに、何で突っかかってくるんだろう。

そこでふと気がついた。

宮前の姿を見て私服姿だと。

そんなことは当たり前で今日は世間では休日だ。

休日にまで学生服を着ている人がいるとすれば、部活で試合に行ったとか、何かしらの冠婚葬祭だろう。

まぁ、たまに私服で学生服をきる女子もいると聞いたこともあるが。

彼女は薄い黒色のジャケットに同じ色のベスト、ショートパンツという井出達。

彼女のことを知らなければモデルの人と勘違いしているところだ。

それだけ宮前此方という存在が人目に付くかということを再確認できる。

宮前はいつも髪の毛をストレートにしているのだけれど今日に限って違うらしく、肩にかかる髪がまっすぐではなく内側、顔の方にカールしていた。

確かテレビで紹介されていたレイヤーとかいうやり方だったはず。

普段と違うからか、宮前此方という人物が魅力的に見えてくる。

友人になってから知ったが彼女は女の女の子しているわけではないが女の子なのだと。

「何、ジロジロみてんのよ」

僕は何も言わずに目をそらした。

「そ、そんなに見てないよ」

僕はとっさに嘘をついてしまった。

「本当かしら?」

「ほ、本当だよ」

「ふーん……」

宮前は僕をいぶかしむような顔をする。

「い、いつも言ってるじゃないか」

「僕は正直者ですって」

先に言われた。

「まぁ、別にいいわよ」

宮前は眉間に少し皺を寄せ不機嫌な調子で言った。

なんで不機嫌な顔をしたのだろうか?

「相棒。オマエは女心という物を勉強したほうがいいと思うぞ」

天野はあきれたように横槍を入れてくる。

「余計なお世話だよ」

僕は宮前の方に向き直る。

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