第69話

 次は家臣団の受け入れ。

 と言っても俺に家臣なんかいない。

 あえて言えばガキどもとデイジーくらいだろうか?

 なのでシャルロットとサーシャに相談。

 二人とも少し人員を回してくれるそうだ。

 シャルロットは申し訳なさそうに


「ただ、うちが派遣できるのは家や家族を失った女や子どもだけだ。……すまない」


 と言った。

 いや人口が欲しいだけなので問題ないッス。

 教育すればいいだけだし。

 サーシャの方も似たようなもの。


「うちも現役の騎士は難しいようです。ですが亡くなった騎士の妻や子は確保しました」


 結局、人口は増えるが現状維持である。


「なるほど。ありがとね! まあ、そのうち慣れるでしょ」


 俺は領地の運営よりも人類の維持が重要だと思っている。

 それこそ共和国でも帝国でもかまわないくらいで優先してる。

 赤字垂れ流しでもいい。

 金銀銅も惑星規模でいくらでもあるし。

 もう巨大な実験場くらいに考えてしまおう。

 で、一つ、大きな問題がある。


「ホームセンターをどうするか……」


 再現はした。

 ペット売り場は倫理上の問題でつぶした。

 で、各種資材や工具や釘なんかをバックヤードに運び込んだ。

 コンクリートや繊維素材の園芸土なんかは用意できたのだが、種はない。

 種の提供は却下された。

 少量だったらいいけどホームセンターで売るほどはないとのことだ。

 ただし水耕栽培施設の余剰分の苗は少量売ってる。

 あとは組み立て式のベンチやらフェンスやらも扱ってる。

 ただ……問題は……。


「あれを扱える人いる?」


 出宇宙後というか、ここ100年くらいの共和国共通規格のネジに釘。

 電動ヤスリに丸ノコにドリル。

 ここの世界には動力式の旋盤すらない。

 同じ物があるわけないよな。


「お兄ちゃん、使える人材を育成するしかないでしょ」


「ですよねー」


 というわけで適当なビデオを検索。

 DIYの教則ビデオをいくつか発見。

 これを見せるようにするしかないか。


 と、いうところまで終わったので、我が家で打ち上げ。


「って、待てや、お兄ちゃん! なんか池が増えてるけど!!! あと竹がカッコンいうヤツも増えてるんですけど!!!」


「ししおどしな。作った。これぞ日本の心!!!」


「ちょっと、日本庭園まで増築されてるんですけど!!! つかメンチ切ってるたぬきの置物増えてる!」


「ああ、たぬきがあると心が落ち着くよな」


「あー! 魚まで放流してる!」


「その辺から捕まえてきた魚な。最初は川魚から試してみようかと」


 増えたら鯉に餌を撒く悪役ごっこがしたい。


「な、これは……ずいぶん芸術的な」


 シャルロットは驚いていた。

 この美しさをわかってくれてうれしい。


「私はもうちょっと退廃的な方が好きですね」


 サーシャはそう言うと思った。


「うん、美しいのはわかるけど。たぬきの置物は一つにしてね」


「ぐぬぬぬぬ!」


「はいはい、それでバーベキューやるんでしょ? どこでやるの」


「そっちの庵の前でどうかな?」


「庵まで作ったんかい!!!」


「茶道できないけどな!」


「ふわっとした雰囲気だけで好き放題作ってるよ……バカお兄ちゃん……」


 で、女性たちも誘ってバーベキュー。

 庭でバーベキュー。

 惑星さいたまのヤンキースタイルだ。

 実は憧れていた。

 肉焼きまくり!

 ぐははははは!!!

 ガキどもも女の子たちも食え食え!!!

 すると子連れのシングルマザーの一人が俺に聞く。


「あの……私たちも従軍せよってことですか?」


「え? なにそれ?」


「肉を振舞うのは戦争前ですから」


「ないない。新しい住民の歓迎会だよ。ほら、俺、まだ学生だから頻繁に不在して迷惑かけるし」


「ほ、本当ですか?」


「うん。この辺の危険生物は駆除したし」


「領主様の寛大なお心に感謝いたします」


「いいのいいの。これから同じ街の住民なんだし」


「こ、この子の命だけは……どうにか……」


 なんか思いっきり勘違いされてる。

 俺はシャルロットに視線で助けを求める。

 するとシャルロットがやって来る。


「マコト殿はそんな恐ろしい人物ではない。むしろ寛大で」


 うん?


「義理堅く」


 ううん?


「どんなに強大な敵であろうとも怯えない鉄の心を持ち」


 うううん?


「不正を許さぬ男の中の男。そんなマコト殿が非道な仕打ちをするわけがない」


 お、おう。

 なんかシャルロットの顔は真っ赤だ。

 どうしよう。

 今度はセレナとサーシャに助けを求める。


「そうですわね。マコト様はいずれ世界を統べる王になるお方」


「待て!」


 サーシャさん!

 それはなんか違う!


「うーん、大丈夫。お兄ちゃんは敵に回らなければ無害だから」


 なんだろう?

 なんかみんな違う人間の話をしてる。


「あのな。俺は普通の人間だぞ。一般枠だぞ」


「それだけはない」


 三人が同じこと言った。

 えー……。


「まあいいや。お兄ちゃん、次なにする?」


「そうだな。各地にダンジョンがあるじゃん。コロニーの跡地。それを修理して地下鉄で結ぼうかなと思ってる」


 不思議なことに、修理した遺跡はみんな惑星さいたまの地方都市になっちまうんだけどな!!!


「うん、そうだね。そうすれば人類維持の確率が跳ね上がる。この惑星の管理プログラム、くっころちゃんの仲間も見つかるだろうし」


 するとシャルロットが声をあげた。


「皆の衆! これが我が夫、マコト・シロガネだ! 世界を救う男だ!」


 割れんばかりの拍手が起きた。

 お、おう。

 なんか勘違いされまくってるが、がんばるぞー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る