第68話
というわけで探検タイム。
みんなにモールを案内する。
シャルロットたちは目を輝かせてずんずん奥に行ってしまい、俺はガキどもとまったり歩く。
兵士の詰め所で犬型軍用アンドロイドのデイジーがお出迎え。
「わふッ!!!(しゅき!!!)」
しっぽをふりながら俺の周りを回る。
「兄貴……なにこの強者感満載の子犬?」
カートマンが顔を青くした。
ちっ!
相手の強さがわかるところまで強くなりやがって!
面白くない!
「うちの子。なー、デイジーちゃん」
「わふわふわふ!!!」
ひょこひょこジャンプする。
癒しだ。
「いや待て、この子絶対俺らより強いだろ?」
「うん、軍用ゴーレムだからな」
デイジーがカートマンを見る。
しっぽふりふり。
キラキラした目で見つめる。
「お、おう、なでろってことか?」
カートマンがなでると挨拶終了。
においを登録したようだ。
「友だちリストに登録されたようだな」
偉かったのでデイジーを少尉に昇進。
アンドロイドだからスムーズに登録できた。
「カートマン、デイジーはおまえの上司な。散歩よろしくな」
「わん!!!」
「なん……だと」
「意味はあるぞ。デイジーのセンサーは監視カメラ……精霊と連動してて盗みや暴力行為、侵略を検知したらシロガネ領の全精霊に共有される。即時に戦闘態勢になるって仕組みだ」
「待て……それ人間必要か? この中勝手に巡回させりゃいいんじゃ」
「デイジーがさらわれたらかわいそうだろ!!!」
「俺より強いんだろうが!!!」
「こんなにかわいくてモフモフで小さいんだぞ!!! ねー、デイジー?」
「わん!」
「完全に兄ちゃんの主観じゃねえか!!!」
「まあでもいいこともあるんだぞ。見ろ、あそこに人類の敵。虫さんがいるだろ」
クォックゥルォーチィィィッがいやがる。Gだ。Gの系譜だ。
黒くてテカってて足があって……とにかく人類共通の敵だ。
「どんだけ虫嫌いになってるんだよ! 小さすぎて気づかなかったぞ!」
ツッコミを入れた瞬間、デイジーが黒光りするGの方を向く。
そのまま目からビーム!
黒光りするヤツは一瞬で灰になった。
そして警備ロボットの格納庫からわんこの集団が出てくる。
どうよ! 警備ロボットを子犬にしたんよ。
これで卵の一つまでも逃しはしない!!!
「や、やつらだけは、ほ、滅ぼさなきゃ……」
「怖いから! ホント怖いから! その表情やめてくれ!」
わんわん隊はニコニコしながら館内を警備。
虫を退治しまくった。
特に外の植え込みと自販機を徹底的にお願い!!!
やつらが潜んでるのはそこだ!!!
俺は笑顔でつぶやいた。
「……俺は虫を排除するためだったら悪魔に魂売るぞ」
「わかった。本当に虫が嫌いだったんだな。俺らが強くなって虫と戦ってやるから」
俺はデイジーを抱っこしてなでる。
もふもふをハグすると心が落ち着く……。
「どうした遅いぞ?」
シャルロットたち女性陣がやって来る。
「わふ!」
デイジーがシャルロットにご挨拶。
「あ、デイジー! 久しぶりだな!」
するとセレナが翻訳する。
「『ママー!』だって」
「そんなママなんて……かわいい!!!」
と言いながら、シャルロットはデイジーを抱っこする。
デイジーもしっぽをふって大喜び。
「では私は?」
今度はサーシャ。
「『ちいママ』だって」
「ま、たしかに私の方が背は小さいですね。デイジー。いい子いい子」
なでなでなで。
なでられてデイジーは目をとろーんとさせる。
「デイジー、じゃあ私は?」
『セレナちゃん!!!』
「私はママじゃないんかい!」
セレナは不満があるようである。
デイジーは『なにが悪いの?』としっぽをふる。
純粋に見た目の問題じゃね?
「じゃあ、私は?」
くっころちゃんが聞くとデイジーは首をかしげる。
『リッチに捕まってたウイルス?』
「なんで私だけ説明なんじゃい! つかウイルスじゃない!!!」
帝国のAIから見たらくっころちゃんはそういう扱いなのか……。
人間に味方したのに哀れな……。
「デイジー。くっころちゃんだよ。お友だち」
「わん!(お友だち♪)」
くっころちゃんに顔をスリスリ。
においを覚える。
「わん!(じゃあパトロールに戻るねパパ!)」
とデイジーは大喜びで行ってしまう。
「カートマンも行ってこい」
と言うとブツブツ文句を言いながらカートマンもついていった。
奥に進むと空き店舗がずらりと並ぶ。
「ここに店を入れようと思う」
「高級店ですか?」
サーシャが当たり前のように言う。
「え? 庶民の店のつもりだったけど……」
あ、でもそういやアウトレットモールも実際は高級ブランドだらけって聞くし。
「きれいすぎますので」
「どっちの方がいいと思う? 正直なところ?」
「これだけきれいなら庶民の店であってもじきに高級店になるでしょうね」
シャルロットも同意する。
「はっきり言ってアルフォート領にはこのクラスの店なんてないぞ。田舎だからな」
ずいぶんぶっちゃけたね。
「うちにもありませんわ」
うそー!
有力貴族でしょ?
「選定は王家にまかせてもいいかもな。この規模なら嫌とは言わんだろ」
「小売りと言うよりは卸業者の規模ですしね」
「勉強になります……」
まだこの惑星の常識になれない。
素直な態度を心がけよう。
数千年くらい文明の時間差があるからしかたないのだが。
さらに奥に行くとフードコート。
「旦那様……完全に市場の規模です」
「マコト殿、この施設はどのくらいの客数を見込んでるのだ?」
「セレナ、この規模のモールの年間利用者数ってどのくらい」
「うーんと、同規模の施設は年間利用者数で5000万人くらいかな」
イ○ンすげえ!
「はい?」
シャルロットとサーシャが声を失った。
「そ、そ、そんな規模の施設が存在するのか?」
正直なところ今聞いて「ねえわ」って思ったよ。
すげえぜ惑星さいたま!
「セレナさん! そういうのは先に言って!!!」
「だってもう建物が先にあったじゃん! あとは前に進むしかないじゃん! 金の心配ないし」
「あ、そうか。そこは考えなくてもいいのか。ヨシ、募集してしまおうぜ!」
現○猫案件どころか会議室猫案件だがもう止められない。
やってやるぜ!
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