第63話

 半分ぶち切れながらみんなで王都に戻る。

 虫退治なんてもう二度とやらねえぞ!!!

 宮殿の事務官に報告書を出そうとしたら王様に呼び出された。


「誉れ高き勇者たちよ! 大義であった!!!」


 今度は楽団まで用意して貴族を集めてお褒めの言葉を頂いた。

 ガキどもや女性たちも褒められまくり。

「誉れ高き」なんて今までの人生で一度も言われたことないよ。


「シロガネ公爵と勇者たちに勲章を授ける!!! またアルフォート家は伯爵とする!!!」


 おー、シャルロットちゃん出世したわ。

 するとセレナが真面目な顔になる。


「きっと嫁入り前にお兄ちゃんに家の格を合わせてあげたんだよ」


 身分制度はよくわからんが婚約自体は王家公認ということだな。

 シャルロットは焦りまくりの恐縮しまくり。


「わ、わたしが報償もらっていいのだろうか……」


 いいんやで。


「せっかくだし、ありがたくもらっちゃえ」


「そうは言っても後ろで控えてただけだからな……」


「シャルロットちゃん、我が故郷では絶対に女騎士と触手は戦わせてはならないって言われてるんだよ。君はよくやった」


「お兄ちゃん、なに口走ってるの? 怒るよマジで」


「セクハラですからね!!!」


 くっころちゃんまで敵側にまわった。

 だってー! だってー!

 触手だったんだもん!!!

 く、殺せ!!!


「あ、ああ、よくわからんが文化とか風習っていうのは難しいのだな」


 うん、理解のはやい彼女は助かる。

 触手と女騎士、オークと女騎士、ダメ絶対。

 で、直々にレポートを提出し、勲章を授与された。


「最後に、遺跡及びその周辺をシロガネ公爵家の領地とする!!!」


 割れんばかりの拍手。

 でも俺は知っている。

 あそこはすでに人類の生存圏じゃない。

 もともと一帯を治めてた貴族も全滅。

 要するにどうにかできるのは俺だけというわけだ。

 うーん、鬼。

 着替えさせられ晩餐会に臨む。

 会場でサーシャとも合流。

 パーティーメシを楽しんだのだ……。

 って違うわ!!!


「虫だらけの領地に文句言いに来たんだった!!!」


 完全に手玉に取られていた。

 するとサーシャがほほ笑む。


「あら、余計な事してしまいましたか?」


 聞いてみたらあそこを領地にしようって進言したのサーシャなんだって。

 お前か!!! 犯人はお前か!!!

 嘘やろ。


「良い領地ですわ。街に匹敵する規模の巨大な建物が残っているなんて。それを修理できる人材がいればですが……」


「だけどキメラが……」


「ゴブリンよりはマシだとうかがいましたが?」


 たしかに人肉食の人型労働生物とキメラ、どちらがマシかと言われれば……知能がない分キメラの方がマシか。

 どちらも人間食うけど。

 でもまあ騎士でも対処できるキメラの方がまだマシか。

 納得したが、だまされた気がするのはなぜだろうか?

 すると晩餐会の会場に騎士が飛び込んでくる。


「陛下、調査隊の遺体を発見したと報告がありました」


 なるほど。

 モールを調査してた隊員の遺体が見つかったのか。


「勇者たちに敬意を表し一堂黙祷で送ろう」


 黙祷。

 こういう演出なのかはわからないが、絶妙なタイミングである。

 うーん、もっと前から知ってたかも。

 かと言ってナノマシンドローンで常時監視するわけにもいかないしな。


「我々もようやく、ようやくだ。先祖代々望んできた反撃に転じることができた。そのことを忘れぬため犠牲者を弔う合同葬を行う。諸兄らも可能な限り同胞を悼んでほしい」


 たしかにシャルロットの両親の葬儀だってやってない。

 シャルロットが生き残ったこと自体がレアケースなのだろう。

 悲劇のヒロインにするつもりかもしれない。

 勝利をプロパガンダに使い倒す気だ。

 王国のしぶとさの秘訣がこの辺にあるような気がする。

 なんかしんみりして晩餐会は終了。


 数日後、モール近く。

 騎士の調査が終わってモールの修理開始。

 まずはドローンで殺虫剤を散布。

 念入りに。

 キメラは生かしておかない。

 生態系どうなのよと思うかもしれないが、この辺の生き物はすでに全滅してる。

 キメラと雑草しかない。

 なので容赦なく即効性の除草剤も撒く。

 すぐに分解するので農業やっても問題が起こらないやつだ。

 さらに寄生するなめこ対策で殺菌剤も。

 さらに念入りを入れてナパームで焼いておく。

 とにかくぶち殺す。

 ヒャッハー!!!


「兄ちゃんが踊ってる!!!」


「キメラに仕返しできてうれしいんだってさ。セレナちゃんが言ってた」


「カイル、おまえいつのまに仲良くなったの?」


「ちゃんと謝ったら仲良くなった」


「ずりー!」


 あいつモテるのな……。

 するとカートマンが水を差す。


「おまえら勘違いするなよ。セレナちゃんは巨乳眼鏡と違って女神だ。だけど兄ちゃんの女だ」


 そういう直球の言い方やめて!


「だ、誰が、権力に物言わせてツルペタを手に入れたロリコンじゃ!!!」


「そんなこと言ってねえバカ!!! だって兄ちゃん、シャルロットちゃんもあんたの女だろ!!! 年上なんだろ!!!」


「そういやそうか」


「だいたいな。ここの修復終わったら覚悟しといた方がいいぞ」


「なにをよ?」


 覚悟ってなによ。


「ここの入植だよ! 住民になるのスラムの連中くらいだろ。その大半が未亡人だろ。囲うか? 旦那見つけるか? 領主の仕事だぞ」


 うそだろ……。


「か、囲う……だと」


 拙者、まだ人妻ものに開眼してないが……これからシックスセンス的に性癖が生えてくるものなのか!?


「人数多すぎてすぐ飽きるらしいけどな。貴族は若い頃に一度はやるみたいよ。愛人囲ったら子どもの面倒も見なきゃいけないしな。捨てたりした日にゃ貴族社会で徹底的に仲間はずれにされるらしいし」


 いきなり現実で殴りつけるのやめて。

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