第56話
家に帰る。
馬車が嫌いすぎるので学園から徒歩10分。
土地が余っていたので国から購入。
最近になってようやく家が完成した。
しばらく学生寮にいたんだけど、「王族がいられると他の学生が萎縮する」とかなりストレートに退寮を迫られ今の状況に。
裏の林にテント立てようとしたら学園長に「勘弁してください」と頭を下げられ断念。
それでバルガス家の屋敷に厄介になったんだけど、常時メイドさんに監視されてるため家を買うことにした。
大きな平屋。
階数が多いより、横に広い方が高級なんだって。
あんまり広いと掃除が面倒だからもっと狭い物件を希望したら、シャルロットとサーシャに反対された。
王族だから普通の家じゃダメなんだって。
部屋数無駄にたくさん。食堂完備。
なんかシャルロットとサーシャが常にいる状態。
個室もあるのでよく泊まってる。
親や家臣の監視がないので楽なのである。
なおアリシアさんが俺の監視のために近所に神殿を建てた。
当方の金で。
この世界の常識はそういうものらしい。
まあいいや。金あるし。
セレナとくっころちゃんとお茶を飲みながら食堂で会議。
ドローンから送られてきたショッピングセンターを確認する。
地下鉄で繋がれてないため、おそらく鬼瓦権蔵のグループではない他のコロニー。
ただし戦争した形跡がないため銀河帝国側の施設ではないかと推測される。
ツタに覆われた人工建造物。
いきなりセレナがキレた。
「ってかツタかと思ったら
「葛ってあの無制限に増えるからテラフォーミングで使うのが禁止されてるやつ?」
「そう! 出宇宙の頃、遺伝子操作で危険性をなくしたって言い張った品種がばらまかれたんよ」
「そこまで無理してばらまく必要なかったんじゃ?」
「猛烈な勢いで増えるから。出宇宙時代の少ないリソースでテラフォーミングしようとすると繁殖力の高い品種しか使えなかったんだって。で、結果はいくつもの星が環境壊されて使えなくなったと。アホすぎる」
くっころちゃんは不満げだ。
「現在の基準で言わないでくださいよ。当時はAIの予測でも安全だって言われてたんですから」
「そのAIが何度も反乱起こした時代じゃん。『人類は滅ぶべきだ!』とか言って攻撃して。メンテナンスと新規開発誰がやるんだよっての!」
「ぐぬぬぬぬ。論破できない」
とくっころちゃんが歯ぎしりする。
「と、まあ、AIも完璧じゃないのよ」
「今は?」
「人間いないと困るし保護しなきゃ」
「絶滅動物かい!」
「頭数からしたら充分絶滅危惧種じゃい!」
「おう、せいぜい甘やかしてもらおうじゃないか!」
と言いながら端末で飛行タイプのドローンを操作する。
今回は遠いのでバッテリーを考えて普通サイズのドローンだ。
だいたいラーメンの丼くらいだろうか。
ショッピングセンターを見てるとお腹がすく。
ショッピングセンターって惑星さいたまを思い出すよね。
惑星さいたまでは少しでも広い土地があると物流センターかショッピングモールができたものだ。
ファミリーや友だちと行くものなので行ったことないけど。
「どこでも同じ店、同じ食べ物屋、同じ映画……スーパーマーケットつき。なかなかのディストピアだよね」
「それでも、この惑星よりは多様性あったよ」
「それなー。ドーナツとかバーガー屋、ラーメン屋が欲しい……」
「自動販売機のラインナップやないかい! お兄ちゃん、ずうっとジャンクフードばかり食べてるじゃん!」
「食生活まで妹に監視される生活ゥ!!!」
ロリ義妹に世話されるこの背徳感よ。
最近、セレナは料理担当だ。
宇宙中のレシピを検索できるので何でも作れる。
しかも味も美味しい。
どうやら料理が趣味らしい。
「ま、最新型はなんでもできるわけよ!」
とドヤ顔しながら作ってくれる。
この屋敷もキッチンだけは最新設備である。
なおくっころちゃんは興味本位で作ったら火事になりそうになったのでステイ。
お約束どおりドジっ子である。
「でさ、話戻すけど。この頃の歴史からすると遺伝子操作された植物がいると思うんだよねえ。ホームセンターとか園芸店があったら確実に。ガンバレお兄ちゃん」
最悪である。
トマトが襲ってきたらやだなあ。
「ねえねえ、くっころちゃん。どうして昔の人はろくな事しないの? 未来に負債を残そうとするの?」
「ふえええ。って、人類滅ぼしたあんたらの世代に言われたくないわ!!!」
「ですよねー」
ときどき牙を剥くのでくっころちゃんイジリは楽しい。
しばらくドローンを飛ばすと突然ガンッと画面が跳ねた。
ああん?
カメラを切り替えるとローターがツタに絡まっていた。
いやツタが自ら絡んできた?
ツタがドローンを引っ張る。
モーターに負荷かがかかり、警報音が鳴る。
「お兄ちゃん、実弾射撃解除。本体が壊れないように散弾銃にするよ」
「発射!」
自動照準で散弾銃を発射する。
「命中! ツタがドローンを離したよ!」
「ただちに退避!」
おいおい、聞いてねえよ。
ゴブリンの巣じゃないじゃん。
植物系モンスターかよ!
「ねえねえ、くっころちゃん。怒らないから情報出して」
「ふええ。たしかあの頃、遺伝子操作の野菜を育てるのが流行ってて。言葉を話すトマトとか……」
「なんであんたら、そうやって気軽に禁忌に触れるん? それいくつかの星が滅んでるはずだよ。今だったら死刑だからね!!! お兄ちゃんからも言ってやって!!!」
「だってぇー! あの頃は合法だったんだもん!!!」
「くっころちゃんは悪くないんじゃない? 鬼瓦権蔵一味の勢力下だったし。別グループの施設なんでしょ?」
「モノレールでつながってないっていう事実からの仮定ではね。わかんないよ。もしかするとリッチに乗っ取られて来られないように線路壊したのかもしれないし」
「しかたないから行くかあ。学園に公休申請しようっと」
「そもそもまともに授業出てないしね」
やめて。留年の危機を演出するのやめて。
なんか心がざわつくからやめて。
という会議なのだが、なぜか聞いてた人がいるんだよね。
そりゃバルガス家もアルフォート家も神殿もスパイ送り込んでるのは知ってたけどさ。
公休の申請に行ったら、学校で俺がなにか調査してるってもう噂になってたのよ。
そしたら誰を連れてくかって話になってんの。
いや連れていかないよ。危ないもん。
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